家から出ると、甘い匂いが鼻をくすぐる。
今にもこぼれ落ちそうなくらい咲き誇った金木犀。
季節がかわった。
冷たくなり始めた風を感じながら、僕はふとそんなことを考えていた。
甘い匂い。きっと君の髪と同じ匂い。
君が僕の前を、ゆっくり通り過ぎたときのあの匂い。
僕は胸をときめかせ、その匂いに酔った。
その頃吹いてた暖かい風も今は遙か遠くのほうに霞んで。
金木犀、その甘い匂いにさえ愛しさを感じるくらい
君の事を想っていた。
そんな僕を笑うかのように、いたずらに季節だけが過ぎていった。
僕は必死に走ったけど、追いつくことは、出来なくて・・・。
君にはもう会えないね。僕たちはもう違う季節の中にいるから。
金木犀が咲く度に、そんなことを考えるのかな。
君の家の前を通ると、甘い匂いが鼻をくすぐる。
今にもこぼれ落ちそうなくらい咲き誇った金木犀。
僕もかわった。
ゆっくり前を見て歩き出して、風に向かってそうつぶやいた・・・。
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