【人柱アリス Ⅱ】

二番目アリスは大人しく
歌を歌って 不思議の国

***

 あるところに、カイトという青年が居りました。

「僕の歌を聞いて!」

 彼はとても大人しい性格でしたが、唯一、歌うことに関しては人一倍情熱を持っていました。
 彼の歌声は村で一番の人気でしたが、毎日歌っていたため、村人達は聞き飽きてしまい、彼の歌を聞くことをしなくなりました。

「もっと聞いてほしいのに…」

 そう思いながら、彼は生きがいとも言える歌うことをしなくなりました。


 そんな、ある日のことです。


 星の瞬く夜に、彼を訪ねて来る者がありました。

「こんばんは」

 黒い外套をまとったその人物は、広場まで行きたいのだが疲れてしまったので、少し休ませてくれないか。と言いました。
 久しぶりのお客だと喜んだ彼は、その人物にひとつ条件を出しました。

「明日、僕の歌を聞いてくれるなら良いですよ。この村じゃ、僕の歌を聞いてくれる者はいなくて。」

 彼が言うと、その人物は小さく笑い

「ならば、好きなだけ歌を聞かせられる場所へ連れて行きましょう。」

 そう言って、彼の頬を一撫でしました。
 すると、辺りの景色が一変し、彼は広場の中心に佇んでいました。何が起きたのか分からないでいると、黒い外套を羽織ったその人物が再び現れ言いました。


ようこそ、二番目のアリス。
さあ、好きなだけ歌って!


 彼は瞳を輝かせ、美しい旋律を紡ぎだしました。
 すると、それまで人の居なかった広場に人が溢れ出し、彼を取り囲んでいきました。
 彼が旋律を奏でる度に、それは人の心を掻き乱していきます。
 彼の奏でる旋律は、彼自身をも狂わせていくのです。

「こんなにたくさんの人に聞いてもらえるなんて、夢のようだ!」

その日、一発の銃声が響き、
一輪の薔薇が咲きました。
歌は止むことなく、
真っ赤な薔薇は人々を狂わせながら咲き続けます。





君も、アリスじゃなかった。


つづく

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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人柱アリス Ⅱ

歪P様の「人柱アリス」を小説にしてみました。
世界観を崩さぬようにと頑張りました!

Ⅱ:歌詞の2番をイメージ

閲覧数:179

投稿日:2011/04/28 00:48:05

文字数:843文字

カテゴリ:小説

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