「返事はゆっくりでいいから」
メイトは私の体をゆっくりと離した。
「じゃ」
「え、あ・・・」
私が呼び止める前に、メイトは教室から出て行ってしまった。
（メイト、私をからかって・・・）
前にもメイトは同じように私をからかった時があった。
でも、あの表情はからかっているとは思えない、真剣な表情だった。
じゃあ、やっぱり私はメイトから・・・
（告白された!?）
そう考えると、異常に恥ずかしくなって一人で赤くなった。
前は好きだったけど今は、恋愛対象としては考えられない。
でも、いざ告白されてしまうと・・・
「うぁぁぁぁぁぁー!!!」
「ルカ!?」
「はぃぃ!?」
誰かからいきなり名前を呼ばれ、変な返事をしてしまった。
「クオ!?」
「ルカ、あのメイトってやつからさらわれてたから・・・何かあったんじゃないかと思って」
「いや、別に何も・・・」
『好きだよ』
さっきのシーンが脳裏に描かれて、顔が真っ赤になったのが自分でも分かった。
クオはそんな私を見て心配そうに
「大丈夫!?あいつ見た目的にチャラそうだし、エロ魔人っぽかったから・・・ってそんな赤くなってるってことは何かされたんじゃ!?」
と言って私の顔を覗き込んだ。
「だ、大丈夫。ほんとに何もされてないから・・・」
「ホントにぃ?」
クオは首を傾げる。
っていうかクオ・・・やっぱカッコイイなぁ。
さすが芸能人。って、そう考えると私は世の女の子が憧れる『クオ』とこんなに近い距離にいるんだな。
よく考えるとすごいな・・・!
「ん?俺の顔になんかついてる??」
知らないうちに私はクオの顔をガン見してたらしく、ますます不思議そうに首を傾げられた。
「だってクオが私の顔ずっと見てくるし・・・!しかもすごい近距離だし・・・!!」
「あ、そっか。ごめん」
クオは私から離れた。
「で、何もされてないんだよな?」
クオが確認するように聞いた。
「うん、何も。・・・・あのさ」
「?」
一つ聞きたいことがあった。
「どうして私のこと、そんなに心配するの?」
歌い終わってすぐ駆けつけてくるなんて、そんなに心配してくれなくても・・・と、逆にこっちが申し訳ない気持ちになってしまう。
「どうしてって・・・鈍いなぁ」
クオは呆れたように言った。
「いたっ!?」
額をぱちん、と弾かれる。
「君に惚れてるからサ☆」
なっ・・・
「馬鹿ぁ!!」
「はは、じゃあな!」
クオはウィンクして教室から出て行った。
一瞬カッコイイと思ってしまった自分に腹が立った。




文化祭は無事終了し、後夜祭。
結局私は最後までサボったままだった。
後夜祭は、校庭で行われた。
学年ごとにまとまっているため、他の一年生の組の人も交ざっている。
その中で、私は否応なしにメイトを目で追ってしまう。こ・・・告白されてしまったから。
クオは仕事で後夜祭には出ないと聞いた。
後夜祭ではジュースやスナック菓子、菓子パンなどが振舞われた。
「ちょっとぉ～やめてよ～」
「いいじゃんかぁ～ちょっとくらい～」
・・・・誰かが酒を売っているらしく、酔っ払っている男女も見られる。先生、気がついて・・・
ジュースを飲みながら酔っている男女を観察していると、肩がずしっと重くなった。
「ル～カ～ぁ～今日なんでサボったままらったのぉ???」
酒臭いにおいもした。
この高い声は・・・
「レ、レン・・・?」
「ぴんぽぉ～んえへへへへ」
レンはずるずると私の肩からずり落ち、私にもたれかかった。
「サボるなんて、らめな子れすね～」
「・・・酒呑んでるあんたの方がダメな子なんじゃない?」
「え～それは言っちゃらめれしょぉ～?」
だいぶできあがってしまってるらしい。
「ルカが来なくておれ、さみしかったのにぃ～」
「レン、動画撮るよ。通報しちゃうわよ」
「それはらめらよ～ぅ」
酒の力って怖いな。
私が動画を撮ったら、この出来事は彼の黒歴史として永遠と語り継がれることだろう。
「ルカも呑んでぇ?」
レンは持っていた缶ビールを私に勧めてきた。
「私は遠慮しとくわ」
「なんでぇ?」
「酒呑んだら馬鹿になるから」
「なんないよぉ～ほら、早くぅ」
「いらないってば!」
しつこくなって、レンの腕を押し退けた途端、ビールが零れてレンのシャツにかかった。
「あ～あぁ」
「ご、ごめんね!今拭くから・・・」
私はポケットからハンカチを取り出し、レンのシャツを拭こうとした。
「え!?」
「サボるし、ノリも悪いし、零しちゃうしルカちゃんは悪い子れすねぇ?」
「ちょ・・・」
レンは私の両腕を掴んだ。
意外に力があって驚く。
「おしおき」
「え、ん!」
・・・唇が塞がれ、苦い物が注ぎ込まれた。