そうして、雅彦は朝食を食べ終えたあと、食器を流しにおき、身支度を整える。洗面所の鏡を見て身だしなみを整えたあと、部屋に戻って小ぶりのリュックの中身を確認したあと、背負って部屋を出る。
「それでは、行ってきます」
『行ってらっしゃい』
ボーカロイドに見送られて、家を出る雅彦。そうして大山北大学に向かって歩き出した。雅彦がボーカロイドともに暮らすようになってから、ずっと通い続けた、通いなれた道である。しかし、その風景は、雅彦がこの道を使い始めた時から様変わりしていた。記憶をたどれば、この道がどう変わっていったかについて、歴史をさかのぼることができるだろう。しかし、この道の雰囲気は変わっていないと感じていた。馴染みの商店街をとおり抜ける雅彦。朝のこの時間は、まだ店を閉めている店も多いが、開店のために、店を開けて準備する所もあった。それは昔から大きくは変わっていないだろう。
「安田教授、おはようございます」
そうして準備のために店を開けている店の一つである、八百屋の店主が雅彦に声をかけて来た。
「おはようございます」
返事をする雅彦。ここは代々の八百屋で、雅彦は先代はもちろん、それ以前の店主にも、同じように朝のこの時間に挨拶をされていた。
「安田教授、今日は珍しいフルーツを仕入れたよ、中々手に入らないフルーツだ。帰りに買っていくかい?」
雅彦に提案する店主。現店主は珍しいフルーツの仕入れに力を入れており、こうやって雅彦は提案されることが多かった。
「それは構いませんが、そんな珍しいフルーツなら、僕が帰りにここに来るまでに売り切れていませんか?」
「大丈夫。安田教授のために、一つ、とり置いておくよ。安田教授とボーカロイドのみなさんは、私が生まれる前からのお得意さんだからね」
笑顔でこたえる店主。
「ありがとうございます」
店主の厚意に頭を下げる雅彦だった。
そうやって、商店街をとおり抜けると、神田の目の前に大山北大学が見えて来た。大山北大学も、神田が通い始めてから、何度か姿を変えているが、やはり大学のまとう雰囲気は変わっていないと感じていた。
(…いや、街も大学の雰囲気も、変わっているけど、僕が気がつかないだけかもしれない)
心の中でそう思う雅彦。建物の外観などは、データとして残っているが、雰囲気はデータとして残っていないし、雅彦が変わっていけば、判断基準も変わっていくだろう。ひょっとすると、変わっていないというのは、雅彦の思いこみかもしれない。よく考えれば、ミクたちボーカロイドも変わっている可能性が高いが、変わったという印象は雅彦にはない。
(…いや、僕も変わっているはずだけど、そんな印象はないな。だけど、変わっていようと変わっていまいと、時間は進むことを止めない。それだけは間違いなく変わらないな)
そう思う雅彦。そんなことを考えながら、大山北大学に入る雅彦だった。
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ぷっちゃん-Red Eleven-
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