(……うぅ……)
気がつくと、俺は真っ白な部屋にいた。
立方体のような形の部屋で、窓は一つもない。出入り口も見当たらない。
俺が寝かされていたベッドも、四角い台の上にクッションを敷いただけ、といった感じで、元々人が寝るためにつくられた、といった雰囲気は一切なかった。
「なんだこ……っ!?」
言いかけ、俺は思わず口を抑えた。
(俺の声じゃねぇ……っ!)
本来の俺の声よりはるかに高い。まるでアニメで女性声優が少年役を演じた時のような、まっすぐで濁りのない声だ。
(どうなってんだよ……!)
戸惑う俺を置いて更におかしな現象が起こった。俺が喉を抑えたまま固まっていると、急に天井が割れ、そこから巨大なスクリーンが降りて来たのだ。
「いやあ、無事に起動したようだな!良かった良かった!!」
「……誰だお前……」
スクリーンに映し出されたのは、白衣を纏った小太りな男だ。いかにも『ダメな男』って感じの雰囲気なのだが、瓶底みたいに分厚い眼鏡をかけているせいで目線がわからない。更に、満面に浮かべたニヤニヤ笑いが、俺の警戒を促させた。
俺の質問に、奴はもったいぶった様子で答える。
「よくぞ聞いてくれた……ふっ……私は、悪の科学者だ!」
…………。
警戒して損した。
「ちょ、なんだその目は!?私、一応命の恩人だよ!?」
「いや……ってちょっと待て。お前今驚愕のワードを放たなかったか?」
命の恩人って、こんなやつが?それだけはいやだ……!と俺は自分の記憶を探る。
「そうだ……俺は、バイクで事故って……」
橋から転落して、死んだ。
「そう、君は、死んだ筈だった。それを、私が……そうだな、蘇らせた、とでも言おうか」
「どういう、意味だよ……」
唾を飲む俺に、奴は両腕を広げ、大声で言い放った。
「そう!君は生まれ変わったのだよ!悪の科学者であるこの私のしもべ、人造人間として!」
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