「私達は、ずっと友達でいようね」
それは、昔三人で交わした約束。
絶対に破らないでと、皆で誓い合った。
しかし時が流れ、三人の関係は変わりつつある。
“約束”も、誰かが破る状況に、なってしまった。
三人の関係が壊れたのは、花火のように、何かが燃え上がった瞬間だった。
それは互いを焦がす。
それでも、優しく。
<<【ACUTE】二人の少女と絡まる感情【二次創作】>>
*ミクside*
『私だけを見てほしい』
その言葉は、いつになったら素直に言えるのだろう。
でも、私達には“約束”がある。
私達は、ずっと“友達”でいなければならない。
誰かが同じ約束を交わした者の“恋人”になろうと、気持ちを伝える――それは、一人が約束を破ることになる。
誰かが“恋人同士”になること――それは、二人が約束を破ることになる。
だから、この感情はおさえなければいけない。
約束のためだ。
何度も、自分にそうやって言い聞かせた。
それでも、心の中の闇には、カイトを独占したいという気持ちがずっと渦巻いている。
最近、どうしても自分の中の感情を抑えられなくなりそうになる。
だからこそ、ルカも裏切るんじゃないかって、思うようになってしまう。
いつか“約束”を破ってしまうのは、私なのだろうか?
いつか、この欲望は放たれてしまうのだろうか?
「ミク、どうした。そんなに暗い顔をして」
「カイト…」
本当なら、今すぐにこの場所で、応えて欲しい。
でも、それだと約束を…
「…大丈夫。実はね、限定発売十五個限りのマドレーヌが買えなくて悔しかったの」
「食べ物の悔しさは凄いよね…」
「しかもね、私は本当なら十五番目だったんだよ?でもイキナリ横入りされて目の前で終了」
「そいつマナーってものを知ってるのかな?」
悟られたくなかったから、別の話で言い訳する。
まぁ昔から私はこうだったし、本当のことを言ってるから嘘は言っていないし、感づかれたりはしないだろう。
せめてカイトには、約束を交わした私とルカ以外の人に、幸せになってほしい。
最近のカイトには、誰か他の女の影が、少しだけ見え隠れしている。
「私マドレーヌ楽しみにしてたんだよ…だから、慰めて」
「はいはい」
怯える様に、カイトのその胸に、体を埋めた。
カイトは私を抱きしめてくれた。
幼いころから、そうしていたから。
*ルカside*
飽きもしないで、昔からカイトを信じていた。
ミクのことも信じていた。
二人のことを信じていたから、約束を破ることなんてないと思っていた。
でも、私はどうなんだろう。
私がカイトに抱いている、このなんともいえない気持ちが恋だとしたら?
もし私が、ずっとカイトの横にいたいと思ってしまったら?
私は、欲しいモノがあったら、すぐに行動してしまう。
だから、私は約束を破ってしまうのかもしれない。
――なんてね。そんなこと、あるわけないじゃん。
カイトなんて、ただの幼馴染としてしか見ていないんだから。
そう思ったとき、突然雨が降り出し、一気にバケツをひっくり返したかのような大雨になった。
今は折り畳み傘も持っていないのに、と思ったとき偶然ミクを見かけたので声をかけた。
昔からミクは優しいから、私を家の中へ入れてくれた。
「天気予報合ってなかったね」
「最近嘘つきだよね、天気予報」
最初は他愛もない話。
でも、カイトがいないときに、私達は必ずこの話をする。
「約束、覚えてる?」
「うん。大丈夫、私は好きな人なんかいないから」
「私はね、最近気になる人がいるの。隣町で会った人なんだけどね」
「へぇ、いいなぁルカは。私にも気になる人がいたらなぁ」
慣れてしまった、“約束の話”という作業を、くるくると繰り返す。
二人を信じているはずなのに、私達はこんな話をしてしまう。
本当は、信じていないんじゃない?私達。
毎回この話をして確かめあったつもりで、本当は誤魔化しているだけじゃないの?
翌日。
時刻は九時三十九分。
この日の夜、私は家にカイトを呼んでいた。
カイトいわく「ごめん、なにか食わせて」ということなので、仕方ないから夜ごはんを二人分作り、さっき食べ終わったところだ。
昔からこうだし、幼馴染なので別にミクを裏切ったわけじゃない。
ミクだって、よくそうしてる。
「ごちそうさま。相変わらずお前は料理うまいな」
「お粗末さま。食べたならさっさと帰ってね。私は他にやることがあるから」
「…なぁ、ルカ」
カイトは私の言葉に返事をせずに、話題を変えようとしていた。
しかしカイトにしては珍しく、すごく真剣な顔。
「何よ?急に真剣な顔になっちゃって」
私がそう言ったとき。
ピルルルルル…
私の携帯が、突然鳴った。
誰かから電話がかかってきたようだ。
表示されていた名前は、ミク。
「カイト、話は後にしてくれる?」
そう言って電話に出た。
「もしもし」
『もしもし、ルカ?』
今日のミクの声は、いつもより低めのトーンだった。
『ちょっと話しておきたいことがあるの…』
「え?どうしたの?」
『カイトには話さないでほしいことなの。落ち着いて聞いてくれる?』
「う、うん…」
ミクはそのまま、声を少し小さくして、私にその話をした。
私は黙ってその話を聞いていた。
『…と、いうことなの。なるべく、カイトには話さないでくれる?本当かわからないから』
「うん、わかった。あ、こっちもちょっと伝えたいことが少し…」
『うん、どうしたの?』
「実は――…ッ!?」
私はミクとの電話に夢中になっていた。
だからこそ、後ろから近づいてきたカイトに、気がつかなかった。
カイトはそのまま…私を、抱きしめた。
「ルカ、電話いつ終わるんだよ」
「ちょっと…!?」
絡み合う、私達の友情。
「人が電話中なのに…ッ、な、何するのよ!」
『ル…ルカ…!?』
私はカイトに抵抗した。
でも女の力が男に勝てるわけがない。
『ルカ!どういうこと!?』
「違う!これは違うの!カイトが勝手に――」
『うそウソ嘘!嘘よ、絶対嘘!信じてたのに!裏切るなんて!』
ミクは『嘘』という言葉を重ねる。
これじゃあ、私が約束を破ったって思われる。
私が、苦し紛れの言い訳で助かることに、すがっていると思われる。
カイトは、ただ微笑んだまま――
「ルカ、愛してる」
私の耳元で囁いた。
そして私の携帯の通話終了ボタンを押して、そのまま床に落とした。
「ちょっと…私の携帯…ッ何するのよ!放して!」
「ダメ。放さない」
カイトは、きっと私が涙目で嫌がるのを見て楽しんでる。
私の錆びてしまったココロは、今ゆっくりと麻痺していく。
こいつはきっと、本当に私を好きなのだろう。
約束――、忘れたの?
私達は、もうあの頃に戻ることはできないのだろうか――?
カイトに抱きしめられてから抱いた思い。
あぁ、私はやっと、この気持ちの名前がわかった…
「カイト。私はあなたが――」
*ミクside*
電話が切れる直前、カイトの声が紡いだ言葉。
それは、私を裏切る言葉――
私は、ルカを信じていたのに。
カイトも信じていたけど、カイトのほうがムカつく。
まさか、アナタが私達の関係を壊すなんて…
約束を破ったのも、アナタだった…
私はずっと二人のことが好きだったのに。
絶対に破らないって言ったのに。
それなのに、約束を破るなんて――
許サナイ…
許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ
ナラ、ドウスレバイイ?
壊セバイイ。
アナナタチガ先に壊シタ。ダカラ、コッチはアナタタチノスベテヲコワシテアゲル…
ソウ、コンナ事ハアッテハナラナインダ…
*
ルカの家に入ったとき、私はポケットからナイフを取り出した。
そして、その光景を見た――
冷たい部屋を、交差する感情
その答えを今、この場所で応えて欲しい
『早く壊せばいい…』
悪魔の声は、私の耳に突き刺さり、消えることはない。
さぁ、その仮面の裏を――
――引き剥がして
カイトのナイフがルカに刺さろうとした瞬間、私はカイトに体当たりをする。
そしてカイトは吹っ飛んだ。
「ルカ…残念だけど、本当だったみたいね。ケガはない?」
「ミクが助けてくれたから大丈夫…」
「くっ…ミク、邪魔をするな…そこをどけ、邪魔、するのだったら、お前も、殺してやる…」
「…ルカ、何があったの?」
「うん…あのね…」
電話が切れてからも、ルカはカイトに抵抗した。
しかし大きな声で「私は、昔からカイトが大嫌い!だから離れなさい!」と叫んだルカ。
そんなルカにブチ切れたカイトは「ほぉ…俺に逆らうとは…いいだろう。ルカ、お前はすぐに後悔する…」と呟いてナイフを取り出した。
なんとまぁ、カイトは酷く歪んでしまったものだ。
私がルカに話したのは、「カイトは街中の女性を口説き、フラれたので暴れた」という話だ。
残念ながら本当でした。
「ルカ、下がってて…」
カイトは私の体当たりで倒れたときに足をくじいたらしく、動けない状態にある。
それでもカイトは立ち上がった。
「ミクゥ…どけ」
「あなたは…絶対にッ、許さない――ッ!!」
それは、私が動こうとした瞬間だったか。
私の首に向けて、カイトがナイフを―――
「い…イヤアアアアアアアアアアアアアァァァァッ!!」
叫んだのは、ルカだった。
「はッ…これでお前は終わりだ…ルカ、お前のスベテを奪ってやるよ。ミクも、今までの俺も、スベテなぁ…っははははははは…」
カイトは狂ったような笑みを浮かべ、背中を向けた。
その瞬間、私は残った力で、自分のナイフをカイトに突き刺した。
闇が深まり、戻ることができない、全てのものへの愛情。
鋭く抉る、真っ赤に濡れたナイフの矛先。
『終わるのはあなたもよ、カイト』
私はもう喋れない。
カイトの目を見て、口だけを動かした。
全てが花火のように弾けて消えるまで。
それは互いを焦がし、全てを燃やしていった。
それでも、優しく。
揺れる意識が最後に視界に捕らえたのは、倒れたカイト。
最後に聞いたのは、ルカの私を呼ぶ声だった。
コメント4
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ご意見・ご感想
吉川ひびき
ご意見・ご感想
私も、曲自体は大好きなんですけどね・・・本家PVや小説のカイト兄やんとルカさんにはスッゴイ腹立ったんですよ。
でも、そうですね。こう考えると、少なくともルカさんも被害者だったのかなって思いますね。
続きも読んでみたいです、気長にお待ちしていますね。この催促が負担にならないといいのですが・・・(>_<)
2015/04/23 19:39:09
むっちゃん
ご意見・ご感想
私も本家のカイトが許せなかったです。
ルカも嫌いだったけど…
この解釈でルカへの嫌いがなくなりました。 カイトは前にもまして嫌いが大嫌いになりました
本気でミクに土下座しろとしか思えません。
2012/07/16 17:02:37
ゆるりー
本家PVを見て「こいつ(カイト)殴りてえ…」と思い、同時に「ルカは何も悪くない!」とも思った結果がこれでした。
後でカイトに土下座してこようと思います…
2012/07/16 21:04:30
初花
ご意見・ご感想
この解釈好き。KAITOありえない・・・。これ読むまでは、ルカ嫌いだったけど、(もちろんKAITOも)好きになった(KAITOは嫌いだけど…)。
ブクマしましたよ。
2012/03/28 18:17:52
ゆるりー
ありがとうございます。この曲のカイトは最低。
自分の小説(解釈)でルカを好きになっていただけたのは、とても嬉しいです。
ブクマありがとうございます。
2012/03/28 23:45:17
雪りんご*イン率低下
ご意見・ご感想
カイト完璧悪役w
ある意味一種の自己解釈だね!
ブクマいただきまっせ~
2012/03/28 13:07:50
ゆるりー
デスヨネ-((
自分が解釈したらこうなりました。
ブクマ感謝です!
2012/03/28 13:32:52