「踊ろうよ、このハーレムで」


屋敷に訪れた女性に手を差し伸べ、決まり文句のように告げる。
そんなことを言っていた時期が、俺にもありました。


幼い頃の俺を、周りの奴らはあざ笑った。
俺は何もしていないのに、奴らは暴行を加える。
奴らの口から出るのは暴言の嵐。
誰も、俺を助けてくれなかった。
そう、俺がひそかに想いを寄せていた、幼馴染のグミナでさえも…。

誰も助けてくれないことに酷く傷ついた俺は、復讐を決意した。
勉強を頑張り、運動を頑張り…周りよりも、ずっとずっと努力した。
そのおかげか、大人達は俺に接してくれた。
だが、グミナたちは…。

やがて公爵になった俺は、アスモディンの富国強兵政策を推し進めた。
そして「五公」の一人となりました。やったね。
俺が努力して頑張ったからなのか、地元での評価も高かった。
俺を嗤った奴らは、すげえ悔しそうにしてた。ざまあ。



それからいろいろあったけど、俺達は神様からやり直すチャンスをもらった。
そして今、二度と過ちを犯さない為に、俺はいい世の中を作る手伝いをしている。
かつて大罪を犯した俺達の、せめてもの罪滅ぼしだ。
今では愉快な仲間に囲まれて、忙しくも楽しい日々を送っている。
この二度目の人生を与えてくれた神様に、感謝。








<<【七つの大罪】ヴェノさんと悪戯の内容【二次創作】>>








「トリック・オア・トリート！」


扉を開けた瞬間、俺の素晴らしき仲間達はクラッカーを鳴らした。
これは「ハロウィン」という行事らしい。
でも、クラッカーはハロウィンに必要ないと思うんだがどうでしょうかね。


「お前ら…とりあえず、土足で入ってくるな」


靴のまま廊下に向かっていた六人に声をかける。
靴を脱いでもらわないと、廊下が泥塗れになってしまう。
どこをどう歩いたら靴が泥まみれになるんだ。


「すみません、サテリアジスさん。うちのアレンが…」


一人だけ玄関に立っていたリリアンヌが苦笑する。
多分、この七人の中で一番まともな人だ。
一番まともじゃない奴？……ヘタレアンじゃね？


「お詫びと言ってはアレですが、これ」
「何？これ」
「かぼちゃプリン第三十七号です。アレンに作り方を教えてもらいました」
「第三十七号って何!?あとなんでそんなにあるの!?」
「一号は水蒸気爆発、二号は宅配便で送られ、三号はバイオ兵器に、四号は冥界の主にプレゼント」
「残りは？」
「荒ぶるボーちゃんの餌になりました」


なんでかぼちゃプリンが水蒸気爆発するんだ。
バイオ兵器って…どんなかぼちゃプリンだよ。
あと、前から気になっていたけど、荒ぶるボーちゃんって何だよ。
どんだけかぼちゃプリンを餌にするんだよ。


「リリアンヌ、荒ぶるボーちゃんって何？」
「さあ、私はさっぱり…。
　アレンは知ってるみたいですが」
「この間マスターに訊いてみたら、適当に書いたとか言ったな。
　マスター後で覚えてろ」


っていうか、本当にあらぶるボーちゃんって何だろう？


「ねえねえサテリアジス。これあげる」


唐突に、マルガリータが何かを渡してきた。
ふと視線を落とすと、そこには。


「……gift？」
「ハロウィンver。かぼちゃ風味に仕上げました」
「飲んだら『おやすみ、現実！』って感じになっちゃうよな」
「ちなみに誰かが飲んだら、ガレリアンの頭にまんじゅうと焼け石が落ちてきます」
「食べ物を大切に!!」


飲んだ時点でいろいろと地獄絵図ですね、わかります。
ちなみに、ガレリアンはどうでもいいというのは秘密。


「トリック・オア・ボウイナイフ！」
「カヨ、それは『ボウイナイフをくれなきゃ悪戯するぞ』ってことか？」
「説明しよう！
　ボウイナイフとは、刃長20-30cmのクリップポイント、しっかりしたダブルヒルトを持った大型のシースナイフ（鞘付きナイフ）です！
　切味を兼ね備えたナイフになっています」
「お前、無駄に詳しいな」


なんか説明キャラになってないか？
安定しないキャラで生きるんじゃなかったのかよ。


「ボウイナイフをくれないと鋏でアナタをウフフフフーな感じにデコります」
「何をされるのかな!?大体わかるけど!!」
「アナタに赤い衣装を着せることになりますがいいですか？」
「よくないから！あと赤い衣装って何かな!?
　トメェィトウジュースがこぼれただけだよな!?」


間違っても『さくっ☆』な感じじゃないよな!?
ジュースか絵の具がこぼれた方がいいな！
でも俺がされるのはごめんだから、できれば悪徳裁判官にやってもらえませんかね？
ほら、なんかキャラ的に。


「サテリアジス、トリック・オア・トリート」
「バニカ、お前クッキー頬張るなよ」
「お菓子くれなきゃ食べちゃうゾ☆」
「可愛く言っても、手に持ったスタンガンが怖いんだけど!!」


しかもそのスタンガン、何ヶ月か前に俺がアレンに貸したやつじゃねえか。
返ってこないと思ったらお前が持ってたんかい。
とりあえず、冥界十大戦術『豆腐』でいろいろやって、返してもらいました。
説明しよう！冥界十大戦術『豆腐』とは(ry


「サテリアジスさん、これ作ったのでどうぞー」
「アレン、さんきゅ」


アレンは手作りのマカロンを皆に配っていた。
相変わらず、なんでも作るヤツだ。


「トリック・オア・トリート！お菓子くれなきゃイタズラするぞ♪」
「グミナ、きゃっきゃうふふな顔してるところ悪いんだけど、その手は何を握ってるのかな？」
「ＡＫカラシニコフ(※銃です)だけど？」
「お菓子くれなきゃ撃ちぬくぞ♪って感じだな!?」
「またはキャリコＭ９５０でもいいわよ？」
「全然よくねえよ」


普通に怖いよ。


「……で、ガレリアン。何故お前はお菓子が欲しい子供の目をしている？」
「だって『トリック・オア・トリート』って一回言ってみたいじゃないか！」
「なんかコイツめんどくさいな」
「カヨ、出撃命令よ」
「了解しました☆」


☆をつける意味があるのか。
そしてガレリアンはgiftとリボルバーとペーパーナイフとしゃもじとゴムべらによって眠らされました。
っていうか、しゃもじとゴムべらって意識を失うほど凄いものなのか？
ペーパーナイフって、手紙を開封したり、折り畳んだ紙を切り分けるために利用される道具だろ。
なんでそんなので眠らされるんだよ。
やっぱりいろいろ凄いわ、ヘタレアン。


「あとで大根ぶっかけてあげるね」
「お菓子が一人分足りなかったから、ガレリアンは無しでいいわよね」
「悪徳裁判官よ、永遠に」
「あとで『飲みのコール集』の本とカップラーメン供えてあげるわね」
「よし、三十二秒間、黙祷！」


俺とリリアンヌはツッコミ放棄。
めんどくさいので、黙祷してました。
そして気絶してる人を玄関に放置。
皆を客間に案内し、俺は一人キッチンへ。

あ、そういや、ハロウィン用のお菓子も用意しとかないとな。
そんなことを考えながら、紅茶を淹れた。