木徒ちゃんは入居してからと言う物よく私の所へ遊びに来てくれる。一人っ子だったから妹が出来たみたいでちょっと嬉しい。違法接種で14歳だと聞いたが、奏先生曰く、表向きは15歳の誕生日にBSになった、と言う事になっているらしい。笑顔の裏にこの子も色々背負ってるんだと思うと少し胸が痛い。案内と散歩を兼ねてテラス迄降りて来た所で木徒ちゃんがじーっと見ながら呟いた。
「良いなぁ、その髪…ふわふわでサラサラしてて綿飴みたい。ねぇねぇ、スズミさん。
やっぱり女の子って、長い髪の方が良いかな?」
「え?そんな事無いんじゃない?木徒ちゃんは今の髪型良く似合ってるよ。」
「う~ん、私の髪硬いんだもん。どうせなら私もスズミさんみたいにふわふわした
綺麗な髪のが良かったなぁ~。」
髪かぁ…小さい頃とかは三つ編みにしてて、それで何かって言うとよく男の子に引っ張られたりしたんだよね。
『…髪、綺麗だなーと思って。』
不意に頭痛が走った。頭の中に声が響く様な、不思議な感覚…何だろう…前にも…。
「スズミさん!スズミさん大丈夫?!先生!せんせー!!」
「あわわわ…木徒ちゃん、平気平気!ちょっとボーッしてただけだから。」
「本当に?」
「本当だってば…って、奏先生?!何で此処に?!」
「通りすがりに奇声が聞こえたんで…。大丈夫なのか?」
少し息が上がってる。もしかして走って来てくれたのかな?こう言う所やっぱり優しいなぁ。同じ事を思ったのか木徒ちゃんは私と奏先生を交互に見遣るとニヤッと笑った。
「奏先生走って来るなんて、そんなに心配だった?大好きなスズミさんの事。」
「ちょっ…木徒ちゃん!」
「心配に決まってんだろ!」
「え…っ?」
思いの外強い口調と真剣な表情に、私も木徒ちゃんも一瞬フリーズした。え?何?今の…どう言う意味?頭の中に言葉が出て来なくて金魚の様に口をぱくぱくさせてしまう。違う違う、医者として患者としてだよね?私がアイドルだから気を使ってくれてるんだよね?そうだよね?先生?早くフォローしてよ、違うよって言って、誤魔化して。
「スズミさん?」
「き、木徒ちゃん、行こ!」
「待っ…!大丈夫なのか?顔赤いけど…。」
「平気ですってば!!」
気付いたら負け、自覚したら負け、ドキドキなんてしてない、落ち着け!気のせい!勘違い!ずるいよ先生、何で優しいの?何で否定しないの?ダメって言われたばっかりだよ?気付いちゃダメ、絶対に気付いちゃダメ、気付いたら…気付いたりしたら…!
『好きになったら食べちゃうよ、小鳥ちゃん。』
――食べられちゃうじゃないですか!!
BeastSyndrome -13.食べられちゃうよ?-
甘酸っぱいのはお好きですか?私は嫌いじゃアリマセン。
若干むずむずはしますが、まぁ気付いたら負けって事で。
※次ページはネタバレ用の為今は見ない事をオススメします。
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