メモリエラ 二次創作


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#include <memory.h>

int remember (year a,day b)
{
   int x= 0;
   int y= 0;

   contact{
      hippocampus("%year %day",a,b);
      memory access("hippocampus %year %day / cerebral cortex",a,b);
   }

   circuit construction("cerebral cortex %year %day",a,b)

   extract(view,sound){
   cerebral cortex("visual cortex %view , auditory area %sound",&x,&y)
   }

   recollection("memory %view %sound",x,y)

   return x,y;
}



int timeslip (event a)
{
   int x= 0;
   int y= 0;

   contact{
      hippocampus("%event",a);
      memory access("hippocampus %event / cerebral cortex",a);
   }

   circuit construction("cerebral cortex %event",a)

   extract(view,sound){
      cerebral cortex("visual cortex %view , auditory area %sound",&x,&y)
   }

   recollection("memory %view %sound",x,y)

   return x,y;
}



int main(void){


   remember(before 0 year,before 182 days);

「そんな事言ったってさ、トワは私との約束、よく忘れるじゃない。記憶がこぼれ落ちてばっかり」
 呆れて言った私の言葉に、彼は苦笑いして手を合わせる。
「ごめんってば。それは謝るからさ」
 そんなトワに、私は嘆息するしかない。
 私の態度を見ているのかいないのか、トワは「でもさ」と言葉を続ける。
「もしも記憶がこぼれ落ちても、過ごした時間はきっと……」

   close "remember" function();



   present();

 朝、目が覚めると、目の前に彼の、トワの心地よさそうな寝顔があった。
 彼の顔はこんな風だっただろうか、なんて思うけれど、そんなのはいつもの事だ。大体、目の前で寝ているのがトワ以外の人であるわけがない。
 彼が私よりも早く起きる事など、ほとんどない。だけど、それでも、彼がまだ目を覚まさないでいてくれた事に、私は心底ほっとした。
 手を伸ばして、指先で自分の目元をなぞる。
 やっぱり、濡れている。
 なんで私が泣いてしまっているのか、自分自身でもよく分かっていない。ただ、何か悲しい事があったというあいまいな感情だけが、私の頭の中を支配していた。
 普段忘れる事など無いだけに、夢の事を思い出せないのが凄くもどかしい。
 トワを起こすべきだろうか。そして、悲しい夢か何かを見て泣きたくなった、と伝えるべきだろうか。などと、そんな事を考えてみる。
 トワはきっと、無理に起こされた所で、嫌な顔一つせずに私の話を聞いてくれるだろう。
「……」
 そこまで考えてはみたけれど、私には彼を起こすつもりなんてなかった。
 私は小さなため息を一つついて、目元をぬぐうと静かにベッドから出る。
 寝息を立てる彼が目を覚ますのは、一時間は経ってからだろう。私はたとえトワでも、同じベッドで寝起きするのは嫌だ、と主張したのだが、彼はどうしても、お願い、と言って折れてくれなかった。
 結局、勝手に私に触れたりしない事、と約束をして私が妥協したのだが、この半年で、彼はすでに八回もその約束を破っている。その度に彼は、ごめん、もうしないから、絶対、などと言って謝る。トワは、絶対という言葉の意味を理解出来ていないとしか思えない。私はただ、いつ訪れるか分からないその嫌悪感に、必死に耐えなければならなかった。
 時折、なぜ彼と同棲なんて事をしているのか分からなくなる。
 やはりあの時、私は首を縦に振るべきではなかったのだと、そう思わずにはいられない。
 そんな約体もない事を考えながら、私は習慣的に二人分の朝食を作る。
 ご飯と味噌汁と焼鮭。
 この半年間、ずっと変わらない朝食メニュー。私の事をある程度は理解してくれているトワは、これに文句を言ったりはしない。
 2LDKの賃貸マンションの、一応はリビングダイニングに分類される小さな部屋の丸テーブルに朝食を並べて、まだ起きてこないトワを見に行く。
 寝室には、シーツをくしゃくしゃにして寝続けているトワがいた。
「……トワ、遅刻するよ」
「ん、んー……」
 半覚醒、とでも言えばいいのか、まあ、とにかく起きようとしないトワの身体をゆする。
「うー」
 もう二十代も終わろうとしている年齢の男が、駄々っ子みたいにいやいやしている姿は、正直に言ってみっともない。けれど、彼のそんな姿は実は嫌いじゃない。
「あー……グミ、おはよ」
「おはよう」
 大口を開けて欠伸をするトワの顔を、両手で挟んでうりうりといじめてやる。
「グミ、ちょっと。もう起きたから、起きたってば」
「トワ、変な顔」
「そりゃ、あんだけこねくり回されたら」
 私が手を離すと、トワは子供っぽく愚痴る。触れられるのは苦手だが、こうやって自分から触れるのは割と平気だ。たぶん、何かに触れる事に対して、自分の意識の中で覚悟というか、準備が出来ているからだ。予想外に、不意打ちで触られたりするのは耐えられない。あとは、手首や腕、首をつかもうとするような行為もだ。そういう行為は、その仕草だけでも過敏に反応してしまう。
 なんでトワが私なんかの事を好きになったのか、なんで未だに好きでい続けてくれているのか、正直分からない。
 客観的に見て、私は凄く面倒臭い女だ。自分でも、相手が私みたいな人だったら嫌だろうなって思う。それなのに、トワはなぜ……。
 そう思いはしても、それを彼に問いはしない。
「ご飯出来てるよ。早く食べないと遅刻」
「分かった。グミ、ありがとう」
「……」
 私はちょっとびっくりして、彼をぽかんと見つめる。けれど、トワは私のそんな態度に気付いているのかいないのか、ベッドから出て洗面所へと顔を洗いに行ってしまう。
 ありがとう、か。
 トワは時折、そうやってとても真っすぐに言葉を告げる。
 私は言葉の裏を読むのが苦手だ。冗談とかも、それが理解出来ずに額面通りの言葉に受け取ってしまったりする。
 だから、そうやって変な言い回しをしたりしないでちゃんと言葉にしてくれるのは嬉しいし、助かる。
 ……だけど。
「……どう、致しまして」
 寝室から出ていってしまったトワに聞こえるわけないと分かっていながら、私は小さく、社交辞令みたいな返事をする。
 彼の感謝の言葉に、自分がどんな態度をとればいいのか分からなくて。

   close "present" function();

}

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

メモリエラ 1 ※2次創作

お久しぶりです。
そんな訳で、2次創作第9弾、yuukiss様の「GUMitive」収録曲、「メモリエラ」をお送り致します。

楽曲を決めて、ストーリーの大まかな流れを決めたところで、またもやニコニコ動画のチェックをしていないことに気づきました。
で、向こうには上がっていない楽曲だった訳ですが、案の定予想外の事態が。

この曲、どう考えても「Prayer Will Live」のアンサーソングじゃん!!

そう思ったものの、エピソードを差し挟む余地がなかったので「メモリエラ」のみで構成しました。yuukiss様、本当に申し訳ございません。




今回は、2次創作にあたり下記の本を参考にしました。

参考文献
星野あゆみ著「発達障害のわたしのこころの声」学研教育出版 2015年
池谷裕二監修「【大人のための図鑑】脳と心のしくみ」新星出版社 2016年
岡嶋裕史著「スラスラわかるC言語」翔泳社 2012年

閲覧数:86

投稿日:2016/06/23 23:20:12

文字数:3,113文字

カテゴリ:小説

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