過去巡り 外伝   『花の祝福』 その8



合唱部が舞台に上がって、みんなの真ん中に立ってる流香と同じように

ガク君は…どこだ?

ガク君を探したがすぐに見つけることができなかったので

「流香…始まる…」

隣でキョロキョロしてる流香に小声で言うと

「あっ、うん」

流香が返事をして歌が始まった



そして歌ってる最中にようやくガク君を見つけることができた

いた!やっと見つけた!

やっと見つけたガク君は一番後ろの列の端の席に、腕を組んで座っていた

もっと分かりやすい所にいなさいよ!!

なかなか見つけられなかったことに、私は怒ったけど

隣にいる流香がガク君とした約束を…

ガク君を見つけたら胸の前で手を組むとゆう約束を…

2年前にして今までずっと叶えてない約束をようやく…

スッ、と…

胸の前で手を合わせて、ようやく叶えたので

良かったね…流香…

心の中だけで流香に言った

そして…



合唱部の歌は終わった…





そして歌が終わり舞台袖に戻ると流香がメールを打っていた

たぶん、ガク君にだろうな…

そしてメールを打ち終わり、ガク君から返事をもらうと流香が

「さ!部室に戻りましょ!」

と私達に明るく言った。

2年前とは違って本当の明るさで言った。



そして部室に着くなり、みんなに言った通り

「じゃ!ウチ等は帰るわ!」

私がそう言うと流香は少し驚いて

「え?なんで?少しぐらい話しようよ?だって今日が私達最後なんだよ?」

私に言うとサキが

「そうね…帰りましょうか?クラスの片付けもあるし、後で集まりましょう…」

と鞄を持って扉に向かった。そのサキを見てヒロが

「そうだね~行こっか優希?」

「うん…また後で集まればいいよ…流香」

優希に声をかけてくれて、2人とも扉の所に行った。

「え?ちょっ?後でって…何でよ?ちょ、ちょっとみんな!?」

流香が驚くのも無理ないな…

でもみんな…ありがとね…

私が昨日お願いした通りに、みんなが部室を出て行こうとするのを

「ちょ、ちょっとハナっ!?どーしたの?え?何で?」

困惑して私に聞いてくるが、私は流香の言葉を無視して

「後で集まって話せばいいじゃん?じゃあね~」

と手を振りながら扉の所に向かった

「ちょっとハナ?え?後で集まるの?それでいいの?本当?」

流香は扉の前に立つ私達にそう聞くので

「うん。それでいいの~後で流香がメールして?それでここに集まろ?」

「わ、分かった…後でみんなにメールするね…」

私の言葉で何かを察したのか、引いてくれた。

「先輩達っ!お疲れ様でーす!」

しかし、何にも知らないミクが私達を流香と一緒に見送ろうとするので

「お前もだよ!!来いミク!!」

そう言ってミクの襟首を掴んでズルズルと引きずると

「何でですかー!?離してくださいよー!?やめてぇー!!

私は流香先輩と話したいんです!!私はクラスに戻らなくていいんです!!」

「うるっせぇ!!いいから来い!!」

この後、流香とガク君がここで会うんだよ!!

「離してー!!鬼ー!!うわぁーん!流香せんぱーい!!助けてー!!」

バタバタと手を振って抵抗するミクに

「そういやお前のクラス、たこ焼き屋だったな?よし!行くか!!」

笑顔でそう言い

「先輩達に食わせるたこ焼きなんて無いです!!やめt…」

バタンッ!

私達は部室を出た





部室を出て、廊下を歩いてる時に後ろのミクが

「なんで私まで部室を出なくちゃいけなかったんですか~?

理由があるんなら教えてくださいよ~?ねぇ~?ハナせんぱ~い…

しかも何でうちのクラスのたこ焼きを先輩達に奢らなきゃいけないんですか?

まったくイミフなんですけど…少しぐらい…ブツブツ…」

ブツブツと文句を言ってるのを

「…………」

私が無視していると

「…だんまりかよ…」

生意気にもツッコミを入れてきたので

「あぁーん!?何だって!?」

振り向いてガンを飛ばすと

「ひぃぃー!!ごめんなさい!!すみませんでしたー!!

謝りますからそんな般若みたいな顔でこっち見ないでくださいよー!!

マジで怖いっす!!ヤンキーみたいな顔になってますよ!?

いや、ヤンキーも怖がるような顔になってますよ!?

鬼です!!鬼ババアです!!いや、鬼畜ババアの顔ですよ!?

ひいぃぃいいーー!!!

な、な、何でどんどん顔が怖くなっていくんですかー!?

私なんか変なこと言いましたかー!?ごめんなさいごめんなさい!!!」

ミクがペコペコと私に謝るので

「はぁ~まぁいいや…それより…」

そう言って立ち止まり、ミクも含めて全員を見ながら

「みんな…ありがとね……私のワガママを聞いてくれてありがと…」

流香とガク君を部室で2人っきりにするというお願いを

みんなが受け入れてくれたことに改めて感謝した。

「へ?な、なに言ってるんですかハナ先輩?」

事情を知らないミクは、私の突然の感謝に目をパチクリさせて驚いたが、

「まっ、あの2人のためだし…」

サキは大人の様に笑いながら

「今さら…気にしないで…いいよ…」

優希は相変わらず無表情に無愛想で

「サキと優希に台詞を取られた……え~っと、ここでなんか言わないと…

え~っと、おっ!長い付き合いじゃん!気にすんなよ!

違う違う違う!!これじゃ優希と一緒じゃん!?え~っと…

はっ!これだー!!……お前の頼みを…断るわけないだろ?

ってどこのイケメンだよ!!待って待って!違うから!!え~っと…

っ!!もうこれっきゃない!!だってその為に合唱b…」

「本当にありがとう…みんな…」

色々と忙しいヒロの言葉の途中で再び感謝すると

「最後まで言わせろやぁぁー!!!」

ヒロが半泣きで切れた。



そんな怒っているヒロにみんなで笑って…


笑い声の中で私だけが部室の方を見ながら…


部室にいて、恋人と話している流香に向かって…



流香…流香…言いたいことがあるんだけどさ…

ずっと言おうと思ってて…でも言えてないことがあるんだけどさ…

3年前から言おうと思ってて…でもなかなか言う機会がなかったことが…

全然言う機会がなくて…結局は言えなかったことが…

流香に内緒にしてることがあるんだけどさ…

聞こえないだろうけど…聞いてくれる?



まず謝るよ…ごめんね……



流香が私に内緒にしてね?と少し恥ずかしそうにお願いをして私とした約束を、

ガク君にお願いされたから合唱部を作るってことを言わないで…と

3年目のあの日、駅のホームで電車を待っている時に私とした約束を

私が破ってみんなに話してしまったとしたら何て言うかな?

やっぱり怒るのかな?

なんで言ったの?と私を叱る?

それとも仕方ないなぁと笑って許してくれるかな?

少し困った顔をした後に許してくれるのかな?



流香はきっと許してくれるだろう…

だって長い付き合いだから分かるよ…

私が流香の事を分かってるように、流香も私の事を分かってるから

きっと許してくれる…



でもどうして私が約束を破ったかは分かる?

どうして流香の内緒事をみんなに話してしまったか分かる?

きっと聡明な流香でも分からないだろうね…

その理由はとっても簡単なことなんだよ?



その理由はたった1つの理由…

流香の……いや、流香達の恋を応援するため……ただそれだけなんだ…

でもごめんね…流香の内緒をみんなに話してごめんね…

私は流香と違って頭がよくないから他の方法が思い浮かばなかったんだ…

流香は嫌がると分かっていたけど、正直に全部を…

流香が合唱部を作る本当の理由を、正直に打ち明ける…

正直にみんなに話せば上手くいくんじゃないか?と思ったんだ…



でもどうして私が流香達の恋を応援したいと思ってるか分かる?

どうして流香とガク君の恋を応援したいと思ってるか…



それも簡単な理由なんだよ?



それはね……



それはね……流香とガク君、2人が『2人』でいるのが…

2人が仲良く…想いあって…好きあって…いつまでも…

流香はずっとガク君を想って…

ガク君はいつまでも流香を想う…



そんな2人の姿を…


私は…そんな恋人でいる2人の姿を見るのが好きなんだ…


中学の時からずっと…そんな2人の姿を見てるのが好きだった…


流香はみんなに内緒にしてガク君と付き合ってたつもりだろうけど、

夏祭りを2人で回ってる姿を私は偶然見ちゃって、

2人の雰囲気から私は2人が付き合ってると知っていたんだ…


だから学校の廊下や、誰もいなくなった教室…

学校帰りに2人がこっそりと恋人として会っているのを見て…

とてもとても嬉しそうにしてるのを見て…


私はすごく羨ましかった…

すごく羨ましく…そしてすごく憧れた…

あんな風になりたいと…

あんな2人になりたいと…

あんな風に…私も誰かと好きあって、想い合うことができたらなぁ…


そう憧れたんだ…


でも私は流香と違って全然大人じゃないから…

流香と違って落ち着いた、大人っぽい女の人になることができないから…

だから…

だから私には…

私には流香とガク君のような恋愛はできないと思った…

同い年だけど、あんな大人っぽい恋愛はできないと思ったんだ…


でも…

それでも…私は2人に憧れてたから…

だから…

だから…2人の恋を応援しようと…ずっと思ってるんだ…

憧れてる2人を…ずっと見ていたい…


そう思ってるんだ…



ねぇ流香…


ううん、流香とガク君…


2人を…


あなた達を…


憧れのあなた達を…


私の大好きなあなた達を…


1人の友達として…


小さな…小さな花のように…










           『 祝福しています 』


             

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

初恋メロディー 過去巡り 外伝 花の祝福その8

過去巡りの花の祝福のその8です。

その0の文をこうゆう風に使ってみたかった…

そのために外伝を書いてみた…と言っても過言では無い。

閲覧数:59

投稿日:2011/11/25 14:59:44

文字数:4,166文字

カテゴリ:小説

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