ここに愛に飢えた獣が一匹
今日も孤独に生きている
幸せそうな周りを見ながら
巫山戯るな と震える声で呟く
また一つ許せないものが増えた
結局今日も満たされないだろうから
期待をせずに程々に生きるのだ

足りないものは山ほどあるけど
とりあえず壊れかけのテレビを付ける
毎朝見ている報道番組
また一つ尊い命が失われた
彼を殺したのは年端もいかない子供達だった
永遠なんて恐ろしいだけだ
終わりがあるのは当たり前なんだ
どんな結末を迎えようと
それはとても幸せなことなんだ
それに、他人の訃報が悲しいのは
それを知ってしまったという後悔からで
本当は人の痛みなんてどうでも良くて
自分や周りさえ幸福ならばそれで良くて
多分私以外も同じ考えで
私は自分にそう言い聞かせながら
ご冥福をお祈りしたのでした

今日も幼き日々を懐かしみながら
答えのない暗号を解いている
床に散らばる請求書
好きだけではどうにもならない
平日の昼間から呑む安酒は
人生で最も詰まらない味だった
自身の半生を悔いると同時に
少しずつ呼吸が乱れ
両手が震えているのを感じた
薄っぺらい綺麗事に振り回されてきた過去
多くのものを捨て、多くのものを失った過去
愛しい人から裏切られた日から
私の人生は孤立していた頃に戻った
なんて妄想をするのは
多分これで百回目くらいだ

私は私自身を誰よりも否定した
私の存在を世界に示そうとした
私を嗤う世界が愛おしかった
私は私である前に
もっと有益な何かになろうとした
私は私が何者であったのか
昨日のうちに忘れてしまったが
私が何者かなんて
今の私にとってはどうでもいい
嘗て私には愛する者がいた
それが何者なのか
なぜ私はその者に拘るのか
代償を払っても分からなかった

私は幸せだった
世界で一番幸せだった
私はとても満たされていた
私は私に感謝した
私を知る全てに感謝した
薄汚れた木箱に触れると涙が溢れてきた
きっと私たちは
この木箱のように汚れながら
少しずつ大人になっていくのでしょう

それが嬉しくて、嬉しくて
私はずっと泣きながら笑い続けていた
否定されてきた日々を思い返しながら
嗤われた日々を懐かしみながら
情けない日々を慈しみながら
償えなかった罪を悔やみながら
死にゆく己を想像しながら
日が暮れるまで笑い続けた
そして、月華に想いをはせながら
またゆっくりと目を閉じた

あぁ、報われたかったな

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

月夜の魔女

閲覧数:35

投稿日:2024/09/28 09:17:28

文字数:1,014文字

カテゴリ:歌詞

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