「約束ね」
「約束だよ」

 幼い子供の、可愛い指切り。
 ずっと一緒…それが当然と思っていた日々。
 しかし、それは脆くも崩れ去った。
 事故により、1人があっけなく世を去ってしまった…

 -それから5年。

 残された少女の周りには誰もいなかった。
 無口で根暗…悪口にはもう慣れた。
 少女にとって片割れは世界の全てだった。
 片割れがいなくなるという事は、世界がなくなるという事。

 存在しない世界の存在しない住人など、どうでも良かった。

 少女は、独りでいるという事実を受け止められなかった。

 やがて、少女へのいじめが始まる…

 暴力を振るわれ、物を壊され、濡れ衣を着せられた。
 誰も助けてくれなかった。
 それをいい事に、いじめはエスカレートして行った。

「お前はお荷物以下のごみ」
「生きている価値などない」
「今すぐに死ね」

 少女は、肉体的にも精神的にも限界だった。
 どうでもいいの一言では片付けられなくなっていた。
 相手は、存在しない世界の存在しない住人なのに…

 …そして、少女は姿を消した。

 -あれから5年。

 人々は少女を忘れていた。
 …いや、最初からなかったものとして扱っていた。
 生きる価値のない者などいない。
 だから、生きる価値のないその少女は最初から存在していない。
 そう言い聞かせていた。

 人々は、幸せだった。
 辛い事も苦しい事も悲しい事もなかった。
 しかし、それは偽りの幸福だった。
 自分をいじめた者を許せるほど、少女は甘くはなかった。

 少女はここにいる。
 姿が見えないだけ。
 少女はずっと、人々の傍にい続ける。

 少女は、人々を呪う世界となったのだから…

イメージ:
世界となった少女-リン
少女の双子の片割れ-レン

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

呪い唄、恨み唄

 いつもそばにいてくれる人が突然いなくなった。
 その時にどう思うのか…そして、失った者にどう接すればいいのか…
 かなりダークで救いがない内容ですが、悪い事をすると廻り回って自分に返って来るという事を表現したつもりです。
 これを元に作詞作曲…なんて贅沢は言いません。

閲覧数:108

投稿日:2010/08/10 10:55:53

文字数:758文字

カテゴリ:その他

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