＊Rin side


翌朝。
私を待っていたのは来なくてもいい朝だった。

昨夜居たはずのレンはもう居なかった。

少し気分が悪い。
それでもレンの様子が知りたくてリビングに足を進めた。



「おはようリン」

レンはいつも通りの笑顔で普通に言った。

「おは・・・よ」

「顔色が悪いわよ、リン。どうしたの」

お母さんが私を不思議そうに見る。

駄目。ばれたら絶対に駄目。
私の中で危険信号が鳴る。

「ちょっときもちわるい。あ、大丈夫。たいしたことないからお医者様は呼ばなくても大丈夫だよ。部屋、戻るね」

ねぇ、レン。

レンはこれからどうするの？

昨日のことは・・・嘘？

ずっと私を・・・・・



＊Len side


あえて普通を装った。

リンが不思議そうな顔をしてたけど、当然だと思う。
親の前で何をしでかすんだってね。

誤解を解くためにリンの部屋に向かう。

「リン？大丈夫？」

リンは泣いていた。
僕に背中を向けてただ泣きじゃくる。

「わかってるくせに」

そうだよ、分かってる。
リンは寂しいんだろう？

でもリンは僕のこと分かってる？

「親の目の前でこれからどうするなんかなんて相談できないだろ」






「僕は限界までリンを愛すからって昨日言ったじゃん」






「え・・・・本当に？」

そうだよ。もう双子はやめたしね。

騎士と姫になることができたんだから。

「親に見つかったら大変だし、部屋は分けよう？」

リンは頷いた。

「じゃあ、〝また〟ね」

僕はリンに意味深な言葉を残して自室に戻った。



僕らがどんなに悪い子かは分かってる。


こんな関係が続くはずないってことも分かってる。


幸せにはなれないことも。


回りに迷惑をかけることも。


この感情が異常だということも。


それでも僕らは選んだ。


引き裂かれるそのときまで。







時計の針ように回り続けると。













「リン、すきだよ」





「・・・わ、たしもっ」



今夜もまた、12時を告げる鐘が鳴る。