教室に入ると、すでにLHRが始まっていた。
入学してからまだ3日しかたっていないので新入生クラスには決めなければいけない事が山ほどあるからだ。
「初音、鏡音。今回のところは見逃すから、早く座りなさい」
「は~い☆」
「はい」
返事を返し、私は自分の席についた。
ミクも近くの席の人と言葉をかわし、席についた。
「では、クラス委員についてだが・・・」
担任が淡々と話し始めた。
クラス委員・・・面倒なのは嫌いだ。パスしよう。
クラス全体に漂う倦怠感に身を任せ、私は机に伏せた。
*
放課後。私は結局、ミクと同じ緑化委員を選んだ。
委員会を仲の良くない人とやるほど苦痛なことはないし。
「ところでミク、探偵部って、どこで活動してるの?」
私は先ほどから抱いていた疑問をミクにぶつけてみた。
しかしミクは、あっさりとこう言い放った。
「それをこれから決めるのさ~」
・・・は?(^ω^)
「でも活動場所候補はあるのよ・・・多分HR棟の4階のはじ・・・あそこの教室なら多分大丈夫!」
「・・・本当にノープランなんだね」
やれやれ。
「よし!そうと決まれば、さっそくその教室に行くよ~!!」
ミクは私の手をとり、走り出した。
私は、口が自然と綻ぶのを感じた。
*
放課後の校舎の廊下は、昼間とはうってかわってとても静かだ。
まだ仮入部期間ではないため、1年生のほとんどは帰宅しており、余計に校舎に残っている人が少ない。
廊下には、グラウンドからの運動部の掛け声、校舎から聞える吹奏楽部、軽音楽部の音が混ざり合い、不協和音が響き渡っていた。
そんな中を、私とミクは歩いていた。
「ところでリン、本当に探偵部に入ってくれるの?」
歩きながら、ミクが私に聞いてきた。
「もちろん」
ミクがぱあっと明るい表情を浮かべた。
「でも、具体的にどんなことするの?」
私はミクに再び質問した。
ミクはちょっと待って、というと鞄の中をまさぐり始めた。
そして、鞄の中から水色のクリアファイルを取り出すと、中から一枚の紙を取り出した。
「え~・・・探偵部活動内容・・・」
この紙によると、内容はこうだ。
・依頼を解決する。(事件、なくし物、ペット探しなど)
・その他いろいろ
(これ、探偵部じゃなくて便利屋じゃ・・・?)
「いいんじゃない?これでいいよ」
「わぁーい!!」
多分探偵部なんて大それた名前にしたのは、ミクがお姉さんに劣等感を少なからず感じてるからに違いない。
そこは汲んであげないと。
「あっ、あの教室だよ!」
ミクが指差したのは、HR棟の一角にある空き教室だった。
ミクが職員室から借りてきたマスターキーをドアを施錠している南京錠に差しこみ、くるりと回した。
ガチャっという音と共に、カギが外れた。
「さあ、中に入るわyうわっ埃っぽ!」
ミクが咳き込みながらも中に入っていく。
私もハンカチを口にあて、中に入る。
教室は確かに埃っぽかった。
教室のあちこちに本が山積みになっており、この空き教室が物置部屋ということを物語っている。
「すごい汚いね・・・これ一回掃除しないと・・・ん?」
そこまで言って私はおかしな事に気づいた。
手近にあった本の山に手を触れる。
厚く埃が積もっていたので、当然手に埃がついた。
今度は奥にある本の山に手を触れる。
しかし、この本はつい最近まで頻繁に読まれていたのか、まるで埃がついていない。
先ほど、マスターキーを借りる際に、事務の先生はあんな教室に用があるなんて珍しい、と言った。
つまり、この教室の鍵はほとんど借りられていないことになる。
かといって窓は完全に施錠されていたし、ドアも私達が入ってくるまでは鍵がかかっていた。
この教室は密室だったわけだ。
「ねえ・・・リン・・・これって・・・」
ミクが顔面蒼白になり、私に擦り寄ってきた。
ミクもこの部屋の矛盾に気づいたらしい。
「あの・・・」
「イギャアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
私でもミクでもない声が聞こえ、ミクは叫び声をあげその場に座り込んだ。
私は驚きつつも、声がした方を振り返る。
そこには、精巧に作られた人形のようにかわいらしい女の子がいた。
歳は多分私達と同じぐらいだ。黒を貴重としたゴスロリを身に着けており、スカートが開いた薔薇のように優雅に膨らんでいる。
髪の毛はさらりとした銀髪で、カーテンのように太もも辺りまで垂れ下がっている。
そしてどこか悲しげな光を纏う赤い瞳が輝いていた。
その子はたいそう驚いた様子で私達を見つめた。動揺したいのはこっちの方だけど。
私が名前を聞こうとしたそのとき、彼女が先に口を開いた。
「あの、何で私が"視える"んですか・・・?」
続
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