「海棠前奏曲」

(1A)
開け放たれた　窓辺から
見える　町の向こう
幾千の人　犇めいて
埋もれる　身体(からだ)
　
(1B)
この狭い町を抜け出して　君は
歩む道を選ぶ
その瞳(め)は　遥か先を見据えて
振り返ることなく

(1S)
さまよう荒野に風は吹く
紺青の空の下で
確かに刻まれていく足跡

(1S')
錚々と響く夢を奏で
揺るぎ立つその背中は
光を抱(いだ)く


(2A)
小さな部屋の　片隅で
君が　紡ぐ唄
輝く朝に　包まれる
その日を待って

(2B)
薄紅(うすくれない)のあたたかな花
人には知られずに
プロシア青の世界に開く
春は　訪れる

(2S)
溢れる音をつなぎ合わせ
拓かれていく未来は
他の誰にも真似できないから

(2S')
信じて　君の創る道を
止めないで　その歩みを
羽ばたける日が来るまで


(C)
春を告げる花よ　今咲き誇れ
艶麗な蕾を　旅立つその背に
新たな日々の始まりを告ぐ唄
春空(はるぞら)に手を伸ばせ


(S)
願いよ響け　歌よ届け
いつか見た夢の先に
咲き誇る思いは　彼方遠くて

(S')
まだ見えない未来を描き
動き出した胸の鼓動
色あせぬ明日(あす)を掴んで