ゆっくりと、まるで時間の動きそのものが遅くなってしまったように見えた。
マスターはフェンスに身体を預けたまま、呆けた顔をしていた。
六道は目を瞠って、走り始める。でも、それはあまりに手遅れだとしか言えない行動だった。
落ちようとするマスターも、決して届かない手を伸ばす六道も、雨のひと雫さえ。
全ての動きが見えていたのに、僕は動けなかった。
「――――――――っ」
ただ一言でも叫ぼうとしたのか、大きく息を呑んだのは覚えている。それだけでも遅すぎる咆哮をしようとした。その瞬間、
ふわり、と黄色い風が傍らを通り抜けていった。
優しく、そして懐かしい匂いをまとって、黄色い風は踊るように駆けていく。
それは風なんて儚いものじゃなくて、黄色い影だった。
真横を通り過ぎていった黄色い影は六道も追い抜いて、しなやかに走り続ける。
それは影なんてうす暗いものじゃなくて、黄色い少女だった。
黄色い少女は、ゆっくりと過ぎる時の中で唯一正しい速度を保って、こちらに振り返る。
それは、姉さんだった。
「・・・・・・ね、え・・・さん?」
姉さんはいつもの穏やかで暖かい笑顔を見せ、唇を開く。
「ばいばい。れん」
僕が何か言葉を返す前に、姉さんは前を向いて、
既に見えなくなったマスターの後を追うように、雨の中へ飛び込んだ。
雨の日の話 Ⅵ
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mothy_悪ノP
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ご意見・ご感想
秋徒
その他
ふぉお?!まだ更新して一日しか経ってないのに…本当にありがとうございます!
時給さんへ
おひさです!まさか、一身上の都合で御蔵入りしようと考えたこの小説が、ここまで反響を呼べるとは思っていませんでした。これも応援してくださった皆さんのお陰。つまり愛ですね…!(違う 時給さんの愛で、作者の顔が見れたものじゃないほどにやけて止まりませんw
佐久間さんの話は、個人的に気に入っているシーンの1つですwもう出てこないし、最後くらい二人には仲良くなってもらいたいと考えた結果こう落ち着きました。…こんなカッコいい別れ方して、ある日何処かでばったり会ったら面白いかな~なんて思ったりww
暫くはちょこちょこ短編を書いて生きていきたいと考えてます。また見てやってください!
きゃらめる☆アイスさんへ
こんばんは!ちょ、お姉さんwwなんと言うべきか…ドンマイ☆ですw
リンってば見事に錯乱してましたからね…でも、いや本当に私が言う事じゃないですが、もっといい方法があったんじゃないかって考えちゃうんですよね。姉リンが姉リンの記憶を持ったままマオ家でレンと一緒にのほほん平和に暮らすことも可能だったはずなんですよ。もしその話があったら読んでみたいです。
次回は多分、多分…短編です!(なんの間 でも、作者の予定は大概ずれるのであてにしないでください(何
読んでいただき、ありがとうございました!
2009/07/01 22:01:11
時給310円
ご意見・ご感想
GJ! 秋徒さん超GJ! オラ感動しただ!(何
こんにちは、時給です。読ませて頂きました。
いやホントにGJです、すごい力作ですね。なんか秋徒さん、どんどん上手くなってませんか?
何が上手いって、セリフがです。特に佐久間と話した時のマオのセリフは素晴らしい。芝居がかったキザなセリフと、まさに「芝居だ」と心の中で自嘲する心理描写とのバランスが絶妙で、この六道マオというキャラが実に人間味あふれる生き生きとした存在となっています。(要するにキャラにリアリティがあると言いたいのですが、それだと味気ないので……)
秀逸なセリフに絶妙な心理描写。とても丁寧に書かれているため感情移入もしやすく、終わりまで一気に読めました。現在と過去が交互にオーバーラップする場面の書き分けも自然でしたし、「……しまった、最高傑作だ……!」などの小ネタも散りばめられていてw 佐久間も何だかんだ言って根っからの悪人ではありませんでしたし、デジカメにまつわる話は切なさ満載で泣かせてくれますし、喜怒哀楽すべて入り交じった果ての読後感は清々しいですし……ああっ、ホントにもう! もう一度言いますけど、すごい力作ですね。面白かったです。
なんか、読後の興奮に任せてコメ長すぎたかも……(汗
ともかく「雨の日の話」、完結おめでとうございます! まだまだマオ小説w が読みたい所ですが、次は再び優希とカイトのターンなのかな? それとも、それもフェイントで全く別の話? 何はともあれお疲れ様でした、そして新作待ってます!
2009/06/30 19:44:41