磨瀬の投稿作品一覧
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茉莉花 芳る部屋の片隅で秘が
熾る音が聴こえて手許を折った
だって芝生に咲く華は要らない
特別は無かった 遅すぎた相談
奪われた愛は 私の所有なんだ
情け発して丁度頭に朱が昇った
火遊の始末は早めに済まそうか
無雑の貴方は騙されていたんだ
ただ陥れる為だけに気を衒った
要らないのなら亡くなればいい...饗応
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照らされた瀝青に 吸い込まれる目が
夜風が頬を裂けば ラベンダーの匂い
忘れられたいから 返事はあげないの
割れた花瓶が失くなる夢を視た
懸想はもう止めだ あゝ
駄目 白昼夢の鋒のその先なら
私が消したよ
丁寧に編んだ辞
「辛いの」って片付けて
剰え貴方の世界...ソブオブリーク
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溶け切ったフロート
喉も逃げ出す異常気象
図抜けた才能は貴方のため 引く汀
大丈夫と手を取るよ
隙を見せたら有象無象
腑抜けた奴らを出し抜くはミステリア
鮮やかの棲んだ口元
逸らした視線の向こうに
光る指輪は小指 左利き 笑み
決まって見下ろす筈なのに...ミステリア
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熟れた空 影落とす二人
擬かしい距離感で
まだ素気ない態度の割に
頼んでた氷菓が二つ
再評価したのは束の間
匙はないらしくて
「手で食べれば」
また綽々で 不敵な笑み
あんたはどうすんだよ
溶ける扶桑に似た微熱...バニラージュ
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君が見た風景は 中心の無重力は
春夏秋冬の中で憶えた
確かな澱みと識ったの
ふと 気付けば谷を抜けて
今心の内側は溶けてしまった
聴こえの良い正解を求めてたの?
知る由もないけど
ねえ 光途切れた街は冷えて
悠く形も見ない程に埋もれていく
誰が為の詩を謳っていたの...沈澱
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推論では この街は沈み往くから
どうしようか 一人 二人 十人
消した方が早いだろうか
数多の徒労が 異論が
泥を急かすようになって
貴方の苦悩や異象が虚しく
色を増していくんだとしたら
私情が 願いがって抜かす前に
生き先を教えてよ
飛べない翼をなんで遺したの...泥濘むレシピ
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疚しい 侘しい 至って平常心
笑顔一枚 向こうには闇
愛しい 慈しい 謳って啓蒙し
全てを奪うから
何事も上辺ばっか
粘質な迷彩を剝せば”黒”
失敬な 精神は存在すると
声高に貴方は言う
然れども所詮は人
存外な本能を堰く宛も無い...未必
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夜 音を片手に独り
歩くのがシックとか
流行りが好きだとか
気にせず生きるには
もう冷たい視線が頬を染めている
お前なんかじゃないと
思わせぶりな歌詞に頭打ちの神風
髪を引かれど僕は僕で叫ぶ
先は見えぬなんて空を仰ぐ
橋の上でまた手紙を書いて...薫り咲いて水面
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設えた鏡の反射と逆光で透く顔色
赤い密告を塗った唇が吐く口癖に
仕草で謀り拒めば歩幅寄せ剥く牙
酷く些細な熱情に浮いた瞼裏が今
呪文の様に纏った彩り振り撒いて
見る者を遠く彼方へ誘うその結晶
疾うに魔法は貴方に掛けられてる
心の臓から小指の先まで御伽噺へ
光る樹液と胡桃の殻に連れられて
目の前には咲...呪文
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肩で風を切って 雲を追い駆けて
思い出したんだ 口を噤んだのは
扉の閉まった地下鉄の中 水飛沫
忘れられないのは夏の所為かもね
なんてね。
甘い曹達 飲み干してさあお終い
届きはしないんだと まだ後ろを
向いていたままの散った淡い想だ
夜空に咲いた花はもう見えないな
ほら過去なんて遠く瀬の向こうへ...Bubbles
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森閑と部屋に差すシャドー
アーティチョークとレモンの匂い
窓の外に視える街灯も
綺麗だね 瀟洒だねって
どうか 忘れないで水をあげてね
待ってる。気が向いたら連絡して。
丸いテラリウム 照らす斜陽
イーハトーヴォ 透き通る風
屋根の下で君と そうずっと
居られたら良かったな。...ソークアティア
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忘れるまで忘れないから
嫌いになるまで嫌いにならないよ
それを幸せと呼んでいた
横を通り過ぎた風は
僕など気にしちゃいなかった
嗚呼言えばこう言う
それは不仕合わせでしょうか
好きの反対は嫌いと縛って
無気力 倦怠感 期待は仕舞って
大丈夫じゃない でも...Selfied
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大切な想いは何時だって
あの日が始まりで
終わりなんて無くて
液晶の正面に映る
あなたは何を考えてるの
今も
昔は
何をしていたって嫌われ者
晴れの日は最悪で
でも世界は眩しくて...スターライトツリー
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砂に雨の降る街で 些か渇いた
咽喉を潤した 拾肆の夏
もう明日には忘れてる?
全て融けて月は黒くなっていく
鞄の中詰めた僕の直向きな声が
ハロー、と木霊した余韻が未だ
ずっとゆらゆらりと搖れている
永久の果てにさえ 気付かずに
何千回 繰り返したって
正解なんて何処にもない...エヴェリ
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俯き観た映画を付けては
あなたがただ蟠るだけだ
溜まり始めた 空の缶を
捨てて終わりにしようか
退屈な不幸せよ 日々よ
あなたと過ごした時間は
白昼夢で 昨驟雨の様で
淡く霞んで見えるネオン
脆く儚く堕ていくメロウ
グラス一杯を呑み干して...ブルームーン
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歩き疲れた 何処に居たんだろう
意味は枯れた花の中
明日を見捨てた 底に翳る火花
賽を投げた 頬は赤
まだ足りない 咲かなかった
もういいよ
緑と青を待ち続けて ただ
乾いてもっと渇いた喉裏
麗 それだけでもう右往
泣いた昨日に蒔いた眼は...Thirsty
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何時かのように近づいている
増えるほどの情緒が
何時かの前世とか 来世とか
何方でもないと言い切ろう
まだいいよと言って想願って
次に降りるのは交差点
目を逸らす 溶ける時計
袂を分かつとは
喰うを切る 千年に一つ
交々知らずとも 莫迦が...569と和韻
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灰色の空に零して失くした
あの日の面影にそっと
消えないよう手を伸ばした
片道二時間半 記憶の中へ
緑色の風に靡いていつしか
鼻先を掠めた朝顔の表情と
シンクロした君の笑顔には
敵わないな
変わらないね 山際の風景
二度とないこの季節をふと...splashes
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この街には、あなたと見た雪が今日も降っている。
12月15日、私は大切な人を失った。亡くなる前日に彼と喧嘩をし、折角の記念日に渡すつもりだった手紙は、部屋の隅にある窓際に置かれたまま。死を受け入れられないまま、時間だけが過ぎて往く。私の心に雪は積もり、大事なはずの気持ちを紛らせている。
12月17日...小説「icicles」
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またねって言って 窓越しの別れ
反芻は追い付かず夢の後
あっという間のバイバイ 記憶は
取り憑かれたよう 寂しさがまた
私語ね 眠い目擦って (ささめごと)
単純が頬を濡らす終夜 (よもすがら)
何回目の感傷に僕らは
脚を竦ませて
回想 毎夜毎晩の懐古
巻き戻したいの でも...Pale in Vain
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毎回だって思うんだ 「今に見てろ」
そこに行くよこれから
そう言いながら朽ち果てて逝くの
藍 吐いたって憂いだ 変わる日々の
中にいっつも 'これから'を呻いたから
結局置いてかれんだ
廻って 下がって 嗤っておくれよ
延々と永遠と篠突く雨 もういいか
なんて茹って 罪人面しよう
明けるまで僕ら踊...デイズ
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派手な服 上辺を着飾る肌寒さと
見え透いている 頭の中の空っぽさに
薄ら笑う僕 優れも劣りもせずに思う
温かい部屋で 忽々の音量で
右耳に流れ込む 負の映画は
「きっと死ぬ」
そんな展開で感動していた
誰かを映している
風が吹く 路地が揺れる
消える火を何かで誤魔化して...リビングコア
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呼んでる 街の灯りがほら
一つ二つ降り積もる雪の中
眺めながら秘めた心一つ
ぼんやり紛れていく
すぐ定まらないピントには
冷たく凍てつくような愛を
霙だって威張ってた今日も
募りずっと抱いてた想いも
明日は部屋の隅っこへと
乾いた息と色たちは...icicles