赤月奇瑠

くり抜いた眼球に
安堵して微笑んだ
暗褐色の虹彩に
耐え切れずに
及ぶ狂行
今際の断末魔が
耳について
離れない
大嫌いだこんなもの
鼓動が強く跳ね上がり...

お別れ　寂しいね
痛みに耐えられるよう
君に貰ったものは
全て捨てよう
手紙を燃やして
写真を破いて
残ったものは頭の中
記憶なんていつの間にか
風化していく
それでいい...

生きてる証が欲しくて
握りしめた“本音”
ただ横に引いた
「僕の姿が見えますか」
言えない叫びが木霊する
「透明になっていませんか」
赤い真実が答えをくれた
悲しいことがあっても
どこか遠い世界からの
伝言のよう...

笑いたくないのに
笑わなきゃ
いけない日がくるのなら
口を耳まで切り裂いて
中途半端に縫い合わせ
鏡にうつるその姿
ほら見てまるで
素敵な笑顔
笑顔見たいと君は言う
泣き顔嫌だと君は言う...

夢を見ていたの
幸せな夢
希望とか愛情とか
光に囲まれた
幸せな夢
私は笑い
皆も笑い
小鳥は唄い
世界は踊る
幸せ者と勘違い...

私は透けていませんか
私はちゃんとここにいますか
私が見えていますか
私がいる意味はありますか
あなたといると不安になります
私の居場所はありますか
明日私がいなくても
あなたは『私』に誰かをあてがう
欠けた部品は代用できる
本当に大事な主幹じゃないから...

渇いております
渇いております
空いた穴が塞がりません
渇いております
渇いております
嘘つきな僕の禁断症状
愛が欲しい
愛が欲しいと
嘆く相手は鏡の中で
隣で笑う君の前では...

夢を見ていたの
幸せな夢
希望とか愛情とか
光に囲まれた
幸せな夢
私は笑い
皆も笑い
小鳥は唄い
世界は踊る
幸せ者と勘違い...

頭を吹き飛ばせば
一瞬で終わる
痛いことは苦手だから
痛くないほうがいい
電車に飛び込んだ人間は
痛みを感じたのだろうか
修理不可能なほどに体が
ばらばらになる直前に
激しい痛みを頭に浮かべ
飛んでいく...

生きていれば
必ずいいことがあるさと
思えない程の
重傷ではなく
だからといって
世界には
悪意なんてないと
思える程
軽傷ではない
致命傷かと言われれば...

君の笑顔
君の言葉
君の性格
君らしさ
好きだったよ昔から
心が素直でいられた頃は
白い花のような純粋さ
年を取っても移ろわない
ひたむきさ
好きだった...

影響を受けたとか
感化されたとか
誰も彼もが
責任転嫁
それに心が響いた時点で
もう、それは
自分の中に欠片として
存在していたのだと
何故気付かない
人殺しの部屋から...

体中に亀裂のように
赤い筋を走らせていく
流れ出る液体が
初めて僕に
生の実感を与えてくれる
大丈夫
まだ　赤い
痛みすら現実への道標
夢と現と幻が
当たり前のように揺れる...

意味もなく理由もなく尊厳もなく誇りもなく希望もなく信頼もなく明日も見えないまま生きていけ
道は見えない辺りは闇
たまに落ちているのは偽善
真の光などお前に勿体ないだろう
望みは全て似つかわしくないものと知れ
甘えるな喜ぶな楽しむな
幸せという幸せを
叶えたかった夢という夢を
捨てろ
今日から進むのは...

思い出話を語るときに
君の顔が見れなかった
笑い声に紛れさせた
憎しみを
感づかれないように
懐かしさの奥には
まだ
血が噴き出しそうな
傷痕があって
痂になりきれずに...

噛み締めた唇
噴き出す血を舐めた
ぬめりを帯びた内側
やけに恋しい　涙
日傘をさした
あの子は今どこに
僕を忘れないで
ずっとそこにいるかしら
麻痺してきた脳内
やけに視界は狭い...