タグ「黒猫と少年」のついた投稿作品一覧(5)
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【 黒猫と少年 】5
ごめんなさい‥
麦の後姿が切なくて黒猫は大きな褐色の瞳を潤ませた。
ふとした神様の悪戯だったのか。
一時、人の姿になれた黒猫は、人間の子として麦の孤独を埋めてあげられたらと思っていた。
だけど返って寂しい思いをさせてしまうことになるなんて。
そこまで考えの至らなかった黒猫は自分...黒猫と少年5
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【 黒猫と少年 】4
「何故、狐のお面をいつも頭に被っているの?」
クロが麦に尋ねた。麦は答える。
「僕の髪は皆のと違って黒くないでしょ。だから、恥ずかしくて隠してるんだ」
クロはそれを聞いて首を強く横に振った。
「麦の綺麗な色の髪、とっても好きだよ。黄金色の麦畑を見る度に、君を思い出せるじゃない」...黒猫少年4
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【 黒猫と少年 】3
「クロだよ‥皆そう呼ぶんだ」
麦が黒髪の子に、名を聞いた。
「クロ?猫みたいな名だね。髪が黒いからかい」
からかうように尋ねるとクロは頷く。
麦は衣紋掛けに吊るした藍染めの着物に着替え始める。
これも祖母の着物を仕立て直したものだ。
「それは酷い呼び名だなあ‥だって黒猫は災いを...黒猫と少年3
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【 黒猫と少年 】2
夜が明け朝陽が射し込み、眩しくて目を擦る。
古い一軒家に麦は暮らしていた。どうやら窓を開けて眠ってしまったらしい。
起き上がり何気なく外を見ると、庭先に誰かが立っている。
遠くからでよくわからないが、大人ではない事はわかった。
麦は気になり、すぐに顔を洗い、羽織を肩に掛けて表へ...黒猫と少年2
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【 黒猫と少年 】1
紺色の浴衣を着た少年の髪の色は、麦畑に陽があたる時と、同じ色をしていた。
近所の子供達に馬鹿にされるのが嫌で、いつも狐の面を被っている。
少年が歩くと下駄の音が寂しげにカラコロと響くのだった。
「今日もまた、独りぼっちなのかい」塀の上で毛繕いをする黒猫が言った。少年は横目で睨み...黒猫と少年