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8.
「……」
ゆっくりとまぶたを開ける。
視界はまだ、漆黒の空と無数の星々のきらめきにおおわれていた。
おそらくは三十分か一時間くらいしか経過していないんだろう。……すごく長い時間がたったような気がするけれど、校舎の屋上でかすかにまどろんだだけだった、というわけらしい。
まだ夜は明けていな...ローリンガール 8 ※二次創作
周雷文吾
7.
「……」
ようやくたどり着いた高校の校舎を見上げる。
時間がわかるものをなにも身に付けてこなかったけれど、道路で転んでから、一時間は経過しているんじゃないだろうか。
僕は深呼吸をして、上がった息を整えながら考える。
どこに向かうべきだろう。
美紅にとっての特別な場所なんて知るわけがな...ローリンガール 7 ※二次創作
周雷文吾
6.
何年前と言っていたのかは……忘れてしまったが、美紅は、一度自殺しようとしたのだという。
過干渉でやることなすこと縛りつけ、少しのことでヒステリックに怒り出す母親。なによりも仕事優先で、無関心を貫き通した父親。そんな両親のせいか、学校でも皆とうまく馴染むことができなかったという。
やがてパ...ローリンガール 6 ※二次創作
周雷文吾
5.
ひたいになにかが当たっている。
柔らかくて……あたたかい。
それはほんの少し――せいぜい二、三秒――の時間のことで、すぐにひたいから離れていってしまう。
それにどこか名残惜しさを感じながら……目を覚ます。
「ん……」
まぶたをこすり、芝生から身を起こす。
この前、彼女が激突していた...ローリンガール 5 ※二次創作
周雷文吾
4.
僕が美紅と出会ったのは、高校に上がってからのことだ。
学校に行く意味なんて見いだせなかったけれど、だからといって母さんのいる家に居座りたくはない。とはいえ就職だなんてろくなもんじゃない。
中高一貫校だったから、進学に苦労はしなかった。真面目に勉強してる奴らを内心ではバカにしてはいたけれど...ローリンガール 4 ※二次創作
周雷文吾
3.
僕は本当の両親を知らない。
偽物の両親ならいるけれど。
五歳のとき、僕は孤児院からいまの家に養子として招かれた。
義理の父さんも母さんもいい人だ。
けれど、やっぱり……本物ではない。
別に本物の両親に会いたいわけじゃない。だって見たこともない彼らは、僕を捨てた人なのだ。会いに行った...ローリンガール 3 ※二次創作
周雷文吾
2.
小学校の高学年になった頃だ。
急に勉強というものに価値を見いだせなくなった。
……いや、理屈としては理解できていた。勉強ができれば、成績がよければレベルの高い高校に行けて、さらに勉強していい大学に行ける。そうすれば大企業にでも就職できて安定した高収入を得られる。
全ては、将来いい生活を...ローリンガール 2 ※二次創作
周雷文吾
The Rolling Girl
1.
「私は今日も転がります!」
少女は威勢よくそう叫ぶと、駆け出して勢いをつけて前転していた。
緑茂る丘の上から、彼女は泥だらけになることも怪我をすることもいとわずに、お世辞にも美しいとは言えないみっともなさで不器用に坂を転がっていく。長い緑色のツインテールが...ローリンガール 1 ※二次創作
周雷文吾