罪穢　冬子

「私めの最後のお願いをきいてはいただけないでしょうか」
「なんだい」
「私の首をはずして、あの棚の上において断線していただきたいのです」
「いくら君が機械だからって、そんなことをしたら死んでしまうよ」
「愛し合ったもの同士だったのですから、最後のお願いくらい聞いてよ」
　＊
棚の上には金色の髪がたな...

むかし むかし
とある街角
男は仮面を被っていた
男は歌い街を歩くと
町人の胸に花が咲く
それは心の傷に巣食う
美しく刺のある花
花が咲いた町人たちは
男の痛みに泣いて朽ちる
ある日 男は...

少しずつ抜かれてゆく正気
何ミリとれました？
僕の僅かな正気は抜かれてゆく
少しずつ注がれてゆく狂気
何本目ですか？
僕は恐怖から逃れるために飲み干した
シリンジ何本使いましたか
僕はいつ治りますか
口内に少しずつ垂らす血液は桃の味
鼻の奥が甘い香りで満ち...

ねぇ、パパ。
私は不器用だけど怒らないで。
これでも精一杯なの。
やる気が無いわけじゃないの。
私が包丁で指を深く切った時、
可哀相と言いながらも、
私を責める辛辣な言葉をたくさん並べたわ。
私は精一杯なの。
精一杯頑張っているの。
ねぇ、パパ。...

切れないで　wired
求めるよ　コネクトを
真実は　webに在り
気づかない僕は…なんて愚か。
ある日　出会いはキミん家だったね
「はじめまして！」とお決まりの挨拶
喜んでくれたよね　最初
だけどそれが悲恋の始まり
ああ、よかったのかな？
ある日　悩んでいる素振り見せるから...

愛し君 蝶々結びの 糸の先
細い絆を 強く握って
糸の先 何も見えない 鏡張り
糸を伝うは 想いと痛み
想えども 箱と箱との 闇電話
滴る涙 叫ぶは恋歌
細い糸 二人でそっと 結いなおす
傷つく指は 触れることなく...

暗い街を彷徨って
一晩重ねた心の傷
そのあたたかさ　つめたさに
タナトス同士は恋をした
一人は燃えるような憎悪のタナトス
一人は水のような優しいタナトス
互いの体を傷付けあって
生の行為と錯覚した
傷跡にうずめる指には
とても暖かく感じていて...