タグ「或る詩謡い人形の記録『雪菫の少女』」のついた投稿作品一覧(9)
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謡い終わり、少女の人形は閉じていた目を開いた。子どもが涙を零している姿に苦笑する。
「マスター、泣かないでください」
「グズ…ッ、だ、だって…その剣士のお姉ちゃん、かわいそう……」
ぼろぼろとなおも涙を零す子どもに、困ったような表情を浮かべて少女は腕を伸ばした。自らのストールで涙を拭いてやる。
...或る詩謡い人形の記録『雪菫の少女』終章
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“雪菫の少女”が投獄されたという知らせは、城中の人間に衝撃を与えた。噂は国中に広まり、ついには他国にまで知れ渡ることとなった。
曰く、この戦は全て“雪菫の少女”の企てだと。
曰く、“雪菫の少女”はその信頼をいいことに王を誑かしたと。
曰く、真実を知り、王に知らせようとした歌姫を暗殺したと。
...或る詩謡い人形の記録『雪菫の少女』第七章
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「どうぞ」
「失礼します」
部屋の扉を開けて少女を招きいれる。執務室の中央、客人用の椅子に彼女を座らせた。彼女が部屋を物珍しそうに眺めている間に、気付かれないよう鍵をかける。
「お茶を淹れて来ますから、少しお待ち下さい」
「そんな、お気遣いなく…」
「駄目です。身体を暖めませんと」
少女に背を向...或る詩謡い人形の記録『雪菫の少女』第六章
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東の国はいつ滅ぼしただろう。
西の国はいつ滅ぼしただろう。
世界を全て手に入れたその先、求める答えが見つからなければ彼はどうなるのだろう。
「騎士隊が三十人前後、魔術師隊が五十人前後の損失です」
「……約半数、失ったか」
野営のため張ったテントの中で、私は部下達の報告を聞いていた。
「団長、...或る詩謡い人形の記録『雪菫の少女』第五章
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「団長殿」
城内を歩いている最中、声をかけられた。
「なんでしょうか、大臣」
振り返り居住まいを正す。私以上に疲れた表情で大臣は口を開いた。
「陛下のご様子は如何か」
「相変わらずです」
「そうか…」
ふう、と大臣は溜息をついた。
「…陛下は変わってしまわれた。昔の優しさなど微塵も感じられぬ」...或る詩謡い人形の記録『雪菫の少女』第四章
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雪が降る。しんしんと全てを覆い隠す。
「………」
とある小さな村。
その外れにある、小さな小屋。
住んでいたはずの夫婦はいない。
「…逃げたか」
一応部屋を物色する。様々な設計図や魔術の書かれた紙が散乱していた。火が消えた暖炉の中には、燃やしたらしい書類の破片。その中にあった、燃え残った一...或る詩謡い人形の記録『雪菫の少女』第三章
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陛下に出会ったのは、こんな雪の降る寒い日だった。
当時人買いに売られた私は、剣の使い方を叩き込まれた。そいつは私を奴隷闘技場へ売るつもりだったらしいが、その前に殺した。逃げた私はその後、道行く傭兵に挑んでは金を賭けて勝負するという生活を送り始めた。私の腕は確かだったらしく、けして負けることはなか...或る詩謡い人形の記録『雪菫の少女』第二章
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しんしんと雪が降る。真っ白の雪原に、パッと紅い花が咲いた。
「ひっ……!」
どさりと倒れた仲間を見て、部下が小さく悲鳴を上げる。そいつの震える姿に私は小さく溜息をついた。
「死体が一つ増えたところで怯えるな。情けない」
「…は、はい…っ!」
頷くが、まだ手は震えている。やれやれ。やはり徴兵され...或る詩謡い人形の記録『雪菫の少女』第一章
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「おやすみなさい」
とんとん、と階段を上る。部屋に入ってまず駆け寄ったのは、二体の人形の前だった。青い髪の少女と少年の人形。見た目は16~17程度で、人間にしか見えないようなリアルさを持っていた。
どっちにしようかしばらく迷って、少女の人形に手を伸ばす。背中にあるぜんまいを巻くと、少女の瞼がゆっ...或る詩謡い人形の記録『雪菫の少女』序章