「やっぱ、アカイトって、なんか目立つんだよねー」
あたしは、歩きながら言った。
「・・・そうだね」
カイトは、淋しそうに空を見上げて「あ」と声を上げた。
「どうしたの?」
あたしは、たずねた。
「そういえば、9時から花火があるんだった」
「・・・え、花火っ!?」
「・・・・・でも、まだ時間あるから5分目前に行こっか」
「・・・そうだねっ!えーでも花火かぁ、あたし花火あんまり見たことないから、楽しみだなぁっ!」
「・・・うん、そうだね」
そう呟くカイトの表情は、なんか淋しそうだった。
それから俺とミクは、あのあといろいろな屋台を回って気づけば、9時前5分だった。
「・・・ミク、花火見に行こうぜっ」
「・・・えっ、ちょっアカイトそんなに引っぱらないでよぉ~~っ!?」
そう言うミクに構わずに俺は、ミクの手をとって駆け出した。
「・・・はあ、なんとか間に合ったみたいだな」
「・・・あれが・・・花火?」
俺とミクは夜空に映る花火を眺めながら呟いた。
「ああ。あれが、花火だ。・・・綺麗だろ?」
「・・・うん。・・・とっても」
ミクは、花火に見とれながら言った。
辺りはとても静かだった。なぜなら、人通りの多い場所は落ち着いて眺めることができないので周りに人がいない高台を選んだのだ。
「・・・・」
「・・・・」
ひゅるるるるぅぅぅ・・・どーーーーん!・・・ぱらぱらぱらぁ・・・。
「・・・今年の夏祭り楽しかったよ。すっごく。・・・誘ってくれてありがとう、アカイト」
ミクは、俺を上目遣いで見て、にこっと夜空に咲ける花のように、笑った。
「・・・・べ、別に、いいけどっ。・・・ミク」
「・・・ん?」
無邪気なミクの目を見ながら、言った。
「俺、花火を使って・・・もう一度、告白し直すからさ・・・」
一息おいて、
「・・・今度は、言葉と態度でちゃんと返事してくれ」
と言って、いろんな思いで瞳が揺れているミクから花火が打ちあがっている夜空へと、視線をうつす。
「・・・・」
「・・・・」
それから、しばらく言葉を交わさないまま、ついにその時が来た。
<さて、始まりました「花火で大切な人にメッセージや思いを伝える」この企画!今回は13240通もの応募の中から、選ばれた一組のカップルへ向けて夜空に花火を打ち上げますっ。応募されたのは彼氏さんのアカイトさんです。アカイトさんは、今回2回目のこの企画に応募され厳正な審査の結果、見事当選されました!おめでとうございます!!・・・それで、アカイトさんの世界で一番大切な人はミクさんだということで、今からアカイトさんの代わりに花火が思いを伝えますっ!!!>
という女の人の声が元気よく響いた。
「・・・うそ」
本人は驚きのあまり、表情が固まっていた。
そして、
ひゅ~~~・・・どーーん!・・・ぱらぱらぱら・・・。
最初の言葉は「す」。
「・・・」
ミクは真剣に夜空を眺めていた。1文字も見逃さないように。
「・・・・・・」
俺は、なんだか嬉しくなった。
ひゅ~~・・・どーーん!・・・ぱらぱらぱらあー。
次の言葉は「き」。
「・・・・」
何か思ったのか、俺の方を一瞬見た。
「・・・ん?」
・・・・何を思ったんだろうな・・・。
ひゅ~~・・・どーーんっ!・・・ぱらぱらぱらぁー。
赤い色の花火が形づくったのは「あ」。
「・・・え」
ミクは、声を上げた。
ひゅ~~~・・・どぉーーん!・・・ぱらぱらぱぁ・・・。
次は、ピンクの花火。「い」の形に打ち上げられる。
「・・・・」
再び、黙るミク。・・・俺のメッセージが何か相当気になるんだろうな・・・。
続いて、今度は黄緑色の花火がドーンっと打ち上げられた。
「・・・<し>・・・」
ミクは小声で呟いた。・・・だんだん、分かってきただろうか?
その次の花火の色は水色で「て」の形。
「・・・・・・・」
ミクの真剣な眼差しに俺は少しだけミクのことを見直した。
・・・・さて、次で最後の言葉が打ちあがる。
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鏡音リン・レン:ボクら自己嫌悪で作り出した
黒...アイディア
こだしぃ
6.
出来損ない。落ちこぼれ。無能。
無遠慮に向けられる失望の目。遠くから聞こえてくる嘲笑。それらに対して何の抵抗もできない自分自身の無力感。
小さい頃の思い出は、真っ暗で冷たいばかりだ。
大道芸人や手品師たちが集まる街の広場で、私は毎日歌っていた。
だけど、誰も私の歌なんて聞いてくれなかった。
「...オズと恋するミュータント(後篇)
時給310円
意味と夢と命を集めて
作られてしまって身体は
終わった命を蒸し返す機械らしい
【これは彼の昔のお話】
人一人は涙を流して
「また会いたい」と呟いた
ハリボテの街の終末実験は
昨日時点で予想通りグダグダ過ぎて
その時点でもう諦めた方が良いでしょう?
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じん
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