☆*゜・。

 家というよりかは洋館といったほうがしっくりくるような造りと、二階へと続く螺旋階段。色とりどりの食器や青々とした木々が生い茂る、庭――いや、庭園といったほうが正しいのだろうか。中世ローマなどを思わせる洋館の中に住んでいたのは、所謂“お年頃”の男女だった。年齢はさまざまでまだ十六歳ほどのもいれば、二十歳を過ぎた青年もいる。
「なぁ、俺のTシャツ知らねぇか?」
 彼らのリーダー格は芽衣斗(めいと)といい、只今お風呂上りにTシャツを探しているところのよう。
「…めーくん!!!半裸で出てこないでよ、変態!!!」
 そう叫ぶのは、この洋館で母親的役どころである海子(かいこ)。まだ成人していないものの、メイトなんかよりは料理を初め、家庭的であることは間違いない。
「あっれー?痴話喧嘩?」
 螺旋階段の上からいたずらっぽい笑顔で手を振るのは、来(く)緒(お)。いつもヘッドフォンを首からさげている、まさにイマドキ少年といった感じだ。
「…ミクオ、遊んでやろうか?」
「何だよ!お前が遊びたいだけじゃん、ルキっ」
 そういってミクオが払いのけたのは、クールな感じの少年でミクオよりもいくらか年上に見える。彼は流騎(るき)。薄紅色の髪をしていた。
 と、まあ、このような面々で、仲間は他にもいたが全員説明していると日が暮れてしまうので、他の方々は後々説明することとさせてもらおう。
 どうやら来緒と流騎はあまり仲が良いわけではなさそうだ。来緒がどう思っているかはともかくとして、流騎は『かまって欲しがりちゃん』らしく、事あるごとに来緒の頭に顎を乗せては気を引いているらしいが、ミクオにはそれが嫌で嫌でたまらないようだった。
「流騎、来緒が遊んでくれるってよ」
「言ってねぇ!!」
「あ、兄貴、Tシャツなら海子が洗った」
「はぁ?海子、お前!全部洗ったのか?」
「三着だけよ」
 そういってキッチンへ戻っていく海子を見ると、芽衣斗は深くため息をついて螺旋階段の上にいる二人をにらみつけた。それに気がついた二人は逃げるように自室へと戻っていってしまった。仕方なくタオルを肩からかけて、自分の部屋へと戻り、箪笥の中からTシャツをさがす。見つけたTシャツを頭からかぶって着替えるとタオルをもって、また風呂場まで歩いていく。洗濯槽にタオルを押し込んで適当にスイッチを押しておいた。どれがスタートのスイッチなのかはよく分からなかったが、多分これでどうにかなるだろう、と安易な考えの下の行動だった。途端、洗濯機から普通であればありえないであろう、奇怪な音が流れ出て『キュリキュリ…』と悪寒のするような不気味な音へと変わった。
「めーくん、何やってんの!?あー!!!もう、極度の機械音痴、自覚してよね!」
 きゃあきゃあ言いながら海子が洗濯機の手直しをしにかかるが、ふたをあけた途端にタオルが勢いよく飛び出してきて、海子の顔面にびしょ濡れのタオルがくっついた。
「…」
「どうしたぁ?何か変な音…プッ…何やってんだよ、海子姉!」
「…兄貴、何かこわした?…大丈夫?」
 ひょっこりと顔を出した二人の少年は海子を見て、目を合わせないように顔を背けて扉を閉めた。
 びしゃっとタオルが落ち、イライラを含んだ微笑を浮かべた海子が芽衣斗の方へと顔を向けた。引きつった微笑みの中で目だけが笑っておらず、段々と芽衣斗の表情がこわばって、一歩後ずさりをする。
「どうしたの?めーくん。ちょっとお話があるんだぁ…。…表出ろこのクソが」
「や…そ…ごめん、ほんっとごめん!!だから、勘弁な」
「だーめー。クスッ最近、体動かしてないから良いストレス解消になりそうね」
「ヒッ…」
 にっこりと微笑んで指をボキボキと鳴らして近づく海子を目の当たりにして、芽衣斗が間をすり抜けて逃げ出した。しかしそれを来緒がしっかりと捕まえて海子へと差し出す。
「公開処刑か!?」
「何言ってるの?何をするかなんて、いってないじゃない」
「海子が怒ってるときはマフラーの端を引っ張るんだ!!もう嫌だー!!」
「…男らしくないなぁ。潔くそこに座りなさい。一思いに…」
「やっぱりそうじゃないか!来緒、てめぇ放せ!!」
「やだー。面白そうだしな」
 いたずらっぽく笑う来緒は面白い見世物でも始まるように嬉しそうで、芽衣斗が小さな子供のように見えた。
「…へたれ」
 小さな声で呟いた流騎を泣き出しそうな目で睨みつけると、恐ろしいオーラを放ちながら笑う海子へと目をやった。
「ごめ…」

 たんこぶを作った芽衣斗は不機嫌そうにテラスに出て夜空を見上げた。
 しばらく“力”を使っていない気もする。ずっと海子にやられっぱなしで、力を使う暇などないからなのだが、いらいらしてきて仕方がない。
「…レグルス。星の力を、我が手に。獅子座!」
 そう叫ぶとテラスの手すりにかけた両手の間に光が集まったかと思えば、一気に光がはじけて小さな獅子が芽衣斗のほうをじっと見つめていた。
『なんだよ、めえと。眠い』
「わるいなぁ。力を使わないでいたらいらいらしてきて」
『…帰っていい?』
「別に良いけど」
『お休み、めえと』
「ああ、レグルス」
 夜の挨拶をすると小さな獅子は体中に星の光を集め、その場から姿を消した。そこに残った淡い光をしばらく見つめていた芽衣斗も夜の闇に消えぬうちにと洋館の中へはいっていった。

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  • 非営利目的に限ります

満月の夜に Ⅲ

ルカの性転換はルキがポピュラーみたいなので、ルキにしてみました!
ミクオいいですよねー。メイトもいいなぁー。
ミクオはいい当て字が見つからなかったので、クオにしてみました。どうでしょう?何かいい字があれば、くださーい!!

閲覧数:398

投稿日:2009/07/24 23:04:47

文字数:2,239文字

カテゴリ:小説

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