腕を一振りすると、目の前の黒い敵が真っ二つに切り裂かれる。
 切れ目から透明な液体を撒き散らして爆発する。
 弱い。こんなやつら、どうせ何匹いたって同じ。
 それなのに、基地のみんなはてこずってる。
 無線を聞く限り、もう何人も死んでる。馬鹿なやつ。
 まったく、めんどくさいことになった。
 あのミクオとか言うやつ・・・・・・。
 せっかくミクが帰ってしまうまで一緒に居たかったのにこんなことしやがって・・・・・・。
 それとも、アイツもクリプトンの命令で動いてるわけ?
 あたし達と戦わせて、そのデータを採ってる?
 どうでもいいや・・・・・・もう・・・・・・。
 「ワラ。基地の防衛に行って!」
 ・・・・・・。
 「ワラ聞こえてる?!」
 「分かったよ・・・・・・うるさいなぁ・・・・・・。」
 さっとウィングを翻し、あたしは基地の方へ向かった。


 ミクの働きで黒い量産型アンドロイドは大多数を破壊され、敵は基地への攻撃へ行動をシフトした。
 だが、俺の後ろから前へと無数の弾丸が突き抜けていく。
 秒速の反射神経で、それを数センチ単位で回避していく。
 流石、なかなかの照準精度だ。
 俺達に牙を向く敵が、二機。 
 ゲノムパイロットの機体だ!
 「ミク。こいつらは俺達がやる。基地の防衛に言ってくれ。」
 それでもなお冷静に俺は言った。
 「いいのか?隊長!」
 「気にするな。任せてくれ。それよりも、基地を。」
 「・・・・・・分かった!」
 ミクは基地へ向かった。
 「隊長ぉ!!俺がブチ落としてやる!!!」 
 「駄目だソード2!あの距離では隊長にも危険が及ぶ。」
 「じゃあどうしたらいいの?!」
 確かに、この二機は過剰ともいえる接近で機銃のみで攻撃をしている。
 執拗に、隊長である俺だけを果てしなく追い回している。
 どう機動を変えても引き離すことができない。
 さて、どうするか・・・・・・。
 「ソード2、ソード3、ソード4。お前たちはゴッドアイの護衛に向かえ。」 
 「なッ、マジかよ?!」 
 「いいのかソード1!」 
 「ひとりでどうするのさ!!!」
 「大丈夫だ。俺には作戦がある・・・・・・行くんだ。」
 「おい!てめぇ死ぬ気か!!!」
 麻田が怒鳴り声を上げる。
 「大丈夫だと言っているだろう。さあ、ゴッドアイを、博士を無事にお送りするんだ。」
 「でも・・・・・・。」
 今度は朝美が泣きそうな声を上げた。
 「いいんだ。こっちには味方もいる。心強い味方が。」
 「そっか・・・・・・そうだよね!分かった。」
 「よし。行こう!」
 「隊長、死ぬなよ!!」
 麻田達もゴッドアイの護衛に向かった。
 これで、心置きなく戦える。
 「GP-1!聞こえるか!!」
 「う、ん・・・!」
 視界にGP-1の機体の姿が映った。
 「一気にカタをつける。少し待っていろ。」
 俺は多目的パネルの上に指を走らせると、ある電波を発した。
 もしかしたら駄目かもしれないが、やらないよりはいい。
 「GP-1、感じるか?」
 「う・・・ん。」
 「俺も、お前の感覚が分かる。
 看護室で朝美がGP-1の記憶を読み取ったのと原理は同じだ。
 それからヒントを得た。
 朝美はこんなことにも気付いていたとは。
 「俺の意志を送る。お前は感じた通り動いてくれ!」
 「わかっ、た・・・・・・!」
 お互いの思考と五感を共有できる、最高のコンビネーションプレイ。
 これなら、こいつらと戦える。
 「準備はいいな?よし、今だ!!!」 
 
 
 敵が多すぎる。
 その上、弾がまったく当たらない。
 一発外す度に、再装填に時間をかける。
 そうしている内に、あの量産型アンドロイドによって振りまかれた「死」によって周りの人間が無残な死を遂げる。周囲には死屍累々が転がる。
 そして、私にもその「死」が襲い掛かろうとしている。
 「退避!!!」
 無数の小型ミサイルが頭上より降り注いだ。
 私はスティンガーを投げ捨てると、もはや人の形を失くした赤黒い肉塊の上を走り出した。
 その瞬間、耳を劈く爆音が後方で巻き起こり、背中を熱風が押した。
 「うわぁぁあああ!!!」
 コンクリートの床に転倒した私の目の前に、なにやら赤黒い物体が転がっていた。
 「ッ・・・・・・!」
 それは血塗れの人の顔だった。ただ、それだけなのだ。
 ほぼ肉が焼けただれ半分ほど頭蓋骨が露出している。もはや誰かも分からない。
 ただ、私の部下だということは確かだ。
 私は起き上がると千切れた誰かの腕が握っていたスティンガーを拾い上げ、手を振りほどき、構えた。
 何故、このような事に。
 何故なんですか。ミクオ君。 


 「ウラァァァァアアアアッッッ!!!」
 鎖を思いっきり振る。敵が真っ二つになる。
 何度これを繰り返しただろうか。
 それでもまだ敵はやってくる。 
 基地の近くとなると敵がハエみたいにたかってくる。
 それにチェーンはもう飽きた。
 「これでも・・・・・・くらいな!!」
 両肩にある、20ミリガトリングガンを展開すると、敵に向かって一気に発射した。
 敵がぼろきれのようにばらばらになって吹き飛んでいく。
 それでもあとからあとから沸いて出てくる。
 「ウォオオオオオ・・・・・・!!!」
 かまわず弾を発射する。
 そのとき、ヘッドセットで「ピーッピーッ」という音が鳴った。
 ガンの発射がとまり、バイザーにある文字が写る。
 [ガン加熱 冷却中]
 「ちくしょう!!!」
 敵の一匹がカッターのような武器をあたしに向かって振り下ろした。
 さっとかわし、切る。
 すると突然、周りの敵が離れていった。 
 「何・・・・・・?何のなの・・・・・・?」
 「やあ。意外といるんですね。僕のお仲間って。」
 耳に、聞き覚えのある声が聞こえた。
 「あんた・・・・・・!!!」
 目の前に現れたのは、灰色に翠の翼。アーマーGスーツも。
 手には長い銃か槍のようなものを持っている。
 「はじめまして、かな?僕はミクオって言います。」
 こいつが・・・・・・・!!!
 「どうしたの?そんなこわい顔して。」
 こいつなんかのために・・・・・・!!!!
 「よくも・・・・・・あんた・・・・・・あんた・・・・・・死ねェええええええええ!!!!!!」
 考えることなくあたしはヤツに切りかかった。
 その瞬間、ヤツの姿がフッと消えた。
 「なッ!どこ?」
 「ここだよ。」
 真後ろでヤツの声がした。
 「キェェェエッ!!!」
 その方向に向かってチェーンを振りまくった。
 なんで?何で当たらないの?
 またヤツの姿が消える。
 「動きはいいけど、感情的になってて回りが見えてないし、掛け声が下品だよなー。」
 また後ろで声がする。
 「くっそぉぉおおお!!!」
 「どうしたの。僕はここにいるよ?ホラ。量産型やっつけたみたいにやれば?」  
 「うるさいっ!!」
 強がって、何回振っても、当たらない。
 速い。何で?なんであたしより速いの?
 こいつのほうが強いって言うの?
 あたしは、もうぼうぜんとした。
 目の前にはヤツがあたしを見下ろして笑っている。
 そのとき、ヤツに何かが突っ込んだ。
 「おっと、キミ、速いねぇ。」
 キクだ。
 キクが物凄いスピードでヤツに切りつけている。
 あたしはヤツの後ろの回りこみ挟み撃ちにしようとした。
 だけど、やっぱり当たらない。ヤツの姿が消えて、別の場所に移る。
 「どうも嫌いなんだよなー刃物って。」
 その声が聞こえたとき、空が光った。
 いや、あたしの目の前を光る何かが通った。
 「レーザー・・・・・・?」
 「そうそう。時代は光学兵器だよね。」
 「キャァァああああ!!!」
 キクの叫び声が聞こえた。
 そこを向くと、レーザーで翼ごと体を撃ち抜かれたキクが空から基地のコンクリートに落ちていった。
 「キクーーーーッ!!!」
 あたしはすぐに追いかけようとした。
 そのとき、
 「他人の心配をしている場合?」
 「あっ・・・・・・!」
 振り向こうとしたとき、腹に恐ろしい痛みが走った。
 「ぅがぁッ!」
 ゆっくり胸を見ると、光の線が腹を突き破って飛び出していた。
 そして後ろから頭をつかまれて、バイザーをもぎ取られた。
 体の自由がきかない・・・・・・!翼も動かない・・・・・・!
 「あーあー。キミ、殺すにはもったいないのに。」
 ヤツが耳元で囁いた。
 恐ろしさで、顔が引きつった。
 やつはあたしの正面へ、レーザーを突き刺したまま回り込んだ。
 腹が引き裂かれて、ますます痛みが走る。焦げ臭い。
 「あっはは・・・カワイイなぁその顔・・・・・・。」
 「あ・・・・・ぁあんた・・・・・・!!!」
 「抵抗するからだよ。残念だけど・・・・・・。」
 ヤツがレーザーをひねった。
 「死んで。」
 「・・・・・・!!!!!!」
 ブチッという音と共に、胴体がふたつに分かれた。
 あたしはコンクリートに真っ逆さまに落ちていった。
 「バイバーイ♪

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

Sky of Black Angel 第四十四話「翠の銃槍」

ワラが惨いことになってしまった。
原作者さん。本当にすみません。

閲覧数:166

投稿日:2009/12/24 21:36:42

文字数:3,773文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました