今日の主役は貴女だから。
今日しか言えないワガママを、存分に。
「お腹が空きました」
「弁当を用意させよう」
「冷や飯なんかいやです」
「ならば外に」
「動きたくありません」
「…おぶっても良いか」
「いいわけないでしょう!」
「抱き上げるのは」
「ど、どうして貴方はそう恥知らずな真似を平気でしようとするんですか!」
「ルカ殿を抱えられることの何が恥であるか」
「…とにかくお断りです」
「では内々にスタッフが用意したケーキをここに運ばせよう」
「…シャンパンが飲みたいです」
「ならばそれも」
「たこルカの分も」
「承知した」
「大間さんは?」
「承知した」
「……」
仕事終わりの、楽屋だった。椅子に座ったルカと、その足元に膝を付き穏やかに見上げる紫のお殿様。
姫様は、今日も変わらずワガママで。
今日はひときわワガママで。
「他に望みは」
「……」
「……」
「…私が寂しくないように」
ぐっと俯く、肩を流れる桃色の髪。
「そばに、いてください」
「承知した」
「ひとりにしないでください」
「承知した」
「…ここに」
「うむ」
「ここにいてください」
「無論」
「っず、ずっとです!今日が終わるまで、ずっと、って意味ですよ…」
「無論だ。断られてもそうするつもりであったが」
「…寒いんです」
「承知した」
即座に立ち上がり、覆いかぶさってくる。一縷の戸惑いも見せず、ふわり抱きしめる男の腕。
ルカは身を強張らせ、そのあたたかさを冷静に享受しようとがんばった。
恥ずかしくなんかない。
これはこの人を困らせるためだけに言ったワガママだから。
「まだ寒いか」
「……は、ぃ」
強く大きな胸元に押し付けるように抱え込まれて、息もできない。
頭を撫でてほしいと思った。けれど、口にする前にゆったりとした手つきで後頭部を撫でられ、何度も何度も、その優しさに、まるで愛でられているような錯覚にさえ堕ちてルカの意識は酔うようだった。
「他に望みは」
「…このまま」
「うむ」
「このまま、が、いいです」
「日付が変わるまで、か?」
ルカは窮屈な腕の中で頷いた。火照った頬を彼に胸にこすりつけて、たまらなくて強く目を瞑る。
心臓がこれ以上速くなんて動けないと、抗議の声を上げている。
「ルカ」
しばらくして、桃色の髪を梳いていた手が離れ、やんわりと肩をもって引き離された。
このままがいいと言ったのに。
見上げたルカはただ戸惑って彼を見上げる。
がくぽの手の平が白い頬を撫で、細められた瞳は雄弁に何かを語りかけながらルカを見つめ返す。
親指が、ルカのふくりと膨らんだ口唇に戯れのように触れた。
柔らかいばかりの果実のようなそれを、そっと押し、何度も撫で、下の膨らみを少し引っ張ってその内側を暴こうと。
「んっ」
ルカが嫌がって顔を振る。がくぽの指は離れ、そしてまた白い頬を名残惜しく滑った。
「…他に望みは」
それは、問うておきながらまるで何かを催促するような、ひた向きな情熱を秘めていた。
ルカは染まった頬を繕えもせずに、彼を見上げた。
悔しい、と思う気持ちはただ心の表面を上滑りに撫ぜていくだけで、この状況に抗うなんの効果ももたらさない。
だけど本当に悔しいのかどうかすら、もうルカにはよくわからなかった。
「……触れてください」
彼の指が撫でただけで熱を持ってしまった桃色の口唇が、震えながら薄く開いてそう懇願する。
「何処に」
尋ねながら、次に己が取る行動を男は知っていた。
「貴方の触れたいところ、に――…」
屈みこんできた大きな身体はほんの少しだけ強引に、最後まで言わせずにその可憐な口唇を塞いだ。
言葉はがくぽの口唇にのみこまれ、まるで価値のないもののように捨て置かれた。
あとに残ったのは、皮膚と皮膚の間だけに走る微弱な電流、そして熱。
こんなにも静かな行為なのに、暴力的なまでに2人の心をかき乱し、そして融解させる。
―――離れることが許されないような気がした。
2人の継ぎ目は溶け合っているから。
柔らかく食む合間に、心と脳までもが繋がって、ふたりとろとろと溶接されていく。
頭の片隅、おや、と2人は思う。果たしてこれが本当にハジメテであっただろうかと。
こんなにも馴染んで、もう思い出せないくらいにずっと前から、こうすることが当然であったように思えるのに。
でも、請うていた。ずっとずっと、飢えていたのだなあ、と思い知る。
だって笑えてくるほどに、離れることができないでいるからだ。
「…ふふっ」
耐え切れずにルカが破顔し、つられるようにがくぽも小さく吹き出した。
そうしてようやく離れた口唇は少し湿っているばかりで、すでに何事もなかったように澄まし顔をしている。
からだの奥に灯った熱だけは、もう当分消せないけれど。
「他に望みは」
たまらずに再び強くルカを捕えた腕の中で、がくぽは何かを噛み締めるように瞳を閉じた。
ルカの白い指ががくぽの着物の袖を掴み、それから時間をかけて背中へと回される。
「恋が、したいです」
がくぽは笑った。
その望みならとうに叶えられているであろう、と。
むずがるように首を振り、「もういちど教えてください」とねだった。
ルカの口唇が、また熱に溶けていく。
【ぽルカ】 恋成
こっそりともう一つ。
ルカさんお誕生日の短いお話。
なぜかうちのがくぽっさんとルカさん今までで最大のリア充への道がんばり物語になってしまい(こんなはずでは)。
あ、ああそうか…お前らも溜まってたんだな…なんかごめんな…?
小惑星爆発くらいはしてます。ご注意ください。
この人たちは確かにきっかけさえあればアレもコレもトントン拍子に進みそうだな…ってぼくは思いました。
…青い人と赤い人がんばれよ!(言うだけ)
ルカさんフォーク忘れてる!お誕生日おめでとう!明日からまた至高のggrksに戻ってもいいのよ!大好き!
コメント0
関連動画0
オススメ作品
ミ「ふわぁぁ(あくび)。グミちゃ〜ん、おはよぉ……。あれ?グミちゃん?おーいグミちゃん?どこ行ったん……ん?置き手紙?と家の鍵?」
ミクちゃんへ
用事があるから先にミクちゃんの家に行ってます。朝ごはんもこっちで用意してるから、起きたらこっちにきてね。
GUMIより
ミ「用事?ってなんだろ。起こしてく...記憶の歌姫のページ(16歳×16th当日)
漆黒の王子
いったいどうしたら、家に帰れるのかな…
時間は止まり、何度も同じ『夜』を繰り返してきた。
同じことを何回も繰り返した。
それこそ、気が狂いそうなほどに。
どうしたら、狂った『夜』が終わるのか。
私も、皆も考えた。
そして、この舞台を終わらせるために、沢山のことを試してみた。
だけど…必ず、時間が巻き...Twilight ∞ nighT【自己解釈】
ゆるりー
眠い夢見のホロスコープ
君の星座が覗いているよ
天を仰ぎながら眠りに消える
ゆっくり進む星々とこれから
占いながら見据えて外宇宙
眠りの先のカレイドスコープ
君が姿見 覗いてみれば
光の向こうの億年 見据えて
限りなく進む夢々とこれから
廻りながら感じて内宇宙...天体スコープ
Re:sui
A1
幼馴染みの彼女が最近綺麗になってきたから
恋してるのと聞いたら
恥ずかしそうに笑いながら
うんと答えた
その時
胸がズキンと痛んだ
心では聞きたくないと思いながらも
どんな人なのと聞いていた
その人は僕とは真反対のタイプだった...幼なじみ
けんはる
Just be friends All we gotta do
Just be friends It's time to say goodbye
Just be friends All we gotta do
Just be friends Just be friends Just be...【巡音ルカ】Just Be Friends 歌詞
DixieF
(Aメロ)
また今日も 気持ちウラハラ
帰りに 反省
その顔 前にしたなら
気持ちの逆 くちにしてる
なぜだろう? きみといるとね
素直に なれない
ホントは こんなんじゃない
ありのまんま 見せたいのに
(Bメロ)...「ありのまんまで恋したいッ」
裏方くろ子
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想