「んっ…」

酸素が足りなくて口を開いたのに、そこから侵入してきたのは強引な舌だった。

ぐ、と腕の力で引き離そうとしてもビクともしない。
普段は非力なくせに、なんでこんな時だけ力が強いの。
どん、と肩を叩くと、名残惜しそうに唇が離れる。
一瞬だけ解放された唇から吸い込んだ空気はやけに埃っぽかった。

―― そもそも変だと気がつくべきだった。
ただ単に物置部屋に使わなくなった調理器具をしまいに行くだけだったのに。
「手伝うよ」なんてカイトの言葉を深く考えず、お願いした自分に腹が立つ。


目の前に揺れる青い髪は、いつも通りの色だというのに。
その下の表情だけがいつもと違う人みたいで、戸惑う。
「めーちゃん」
胸が跳ねる。耳元にかかる吐息。
いつもみたいな、情けない弟の声じゃない。
低くて甘い、色っぽい男の声だ。

やめなさい、と言いかけた唇はまた塞がれた。
優しく、でも拒否することを許さないようなキス。
壁に置かれた長い腕に囲まれたまま、私は逃げることも出来ずその強引なキスを受けていることしか出来ない。

「んっ…ふぁっ…」

離して、とそう言っているつもりなのに。
話そうとすると舌を絡めとられるので、言葉が吐息にしかならない。

壁に置かれていた左腕が、音もなく私の腰に回る。
冷たい手に驚いてびくんと跳ねた拍子に、今度は右腕が首に回された。
大きな手のひらが髪の毛に差し込まれる。優しくなぞられたうなじに、ひぁ、と変な声が出てしまった。くす、と耳元でカイトが笑う。

「…やらしい声だね?」
「なっ…!」

「おねえちゃーん、おにいちゃーん、どこー?」

大きな声を上げようとした瞬間、部屋のすぐ外からミクの声がした。
びくんと体が竦んだ。ミクが探してる。
こんなところ、見られたら。

慌ててカイトの体を離そうとすると、ぐいっとそれまで以上の力で引き寄せられた。
「ちょ…!」
「しぃ」
人差し指を唇に当てて、わざとらしくカイトが笑う。
押し付けられたカイトの胸元からは、彼の香り。
悔しいけど、大人しくしているしかない。なるべく音を立てないように、不本意ながらもカイトに体重を預けた。


「あれー?お買い物かなぁ」
次第に離れていくミクの声。
ほっと、詰めていた息をつく。
抱きしめられた状態のまま、私はカイトをきっと睨んだ。

「あんたねぇっ、一体何考えて…っ!」
「めーちゃんがいけないんだよ」

予想外の言葉。
なんで、私?

「めーちゃんが、俺のこと誘惑するから」
「し、してないわよ!私がいつ…!」

すっと、鼻先が柔らかくくっつく。
唇まで数センチ、というところで、とびきり甘くカイトが囁いた。

「だって、めーちゃんはそこにいるだけで俺のこと誘ってるんだ」

―― なんて言いがかり。
力が抜けた瞬間を見計らい、カイトはわざと音を立てて首筋に口付ける。
漏れてしまった声を、慌てて両手で押さえつけた。


反抗出来ない。
…逃げられない。
私はいつからこんなにカイトに囚われてしまったんだろう。


「俺から逃げたいなら、逃げてもいいよ。めーちゃん」
「…え?」
予想外の言葉に、驚いたような声が出てしまう。
見上げた先にある、不敵に微笑んだその顔。

「…逃げられるならね?」

うそつき。
逃がそうなんて、思ってもいないくせに。

でも同時に、その意思が自分にないことにも気がついていて。


―― ああ結局、この腕の中から、逃げられる術などありはしないのだ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【カイメイ】優しい檻

noma08様の美麗カイメイを見てぴぎゃぁぁぁぁぁとなったので。



これも小説というよりポエム。

甘々、というかカイメイがベタベタしているだけ。
自分の書くカイメイはキスで終わるものが多かったので、キスから始まるものを書いてみたかった。

これくらいなら健全…ですよね??汗


時期的にはカイメイが結ばれたばかりくらいをイメージ。
恋焦がれた彼女がようやく手に入って、隙あらば襲い掛かる変態兄さん。

仕方ないよね、若いもの!!


noma08様のぴぎゃああああイラストはコチラから→http://piapro.jp/content/60p4rhgqe9sg3pw8


連続うpしてるなぁ。
でもカイメイなら毎日書いても飽きません。←きっぱり

閲覧数:1,848

投稿日:2010/03/24 22:24:25

文字数:1,453文字

カテゴリ:その他

ブクマつながり

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