＃１２「君たちは、実に口下手だなぁ」



テイの部屋に、しるるとテイの2人だけが残った


「テイ…昨日、河原にいたよね…」

「！！？」


しるるの一言にテイが驚いてこちらを向いた





「な…なんでそれを………」

「だって…見てたもの」


しるるは小さな声でそう言った





テイの拳に力が入る


「だったら！どうして…どうして私を！私を……」


その後の言葉が複雑な感情によって出てこない


「私にその気がなかったとはいえ、傷つけたのは私……その私が「帰ってきて」なんて都合のいいこと言っても無駄…………その時はそう思った……」




テイが下を向いたまま歯を食いしばっているのがわかった


「いつも……そうやって…自分で勝手に他人の気持ちを決め付けて…顔色うかがって…」


テイが震えた小さな声でそういった


「うん…ごめん…」

「やめて！！」


テイが叫ぶ


「テイ……」

「私は！私は…ただ……」


テイはそこまで言って言葉につまる


テイのプライドがその先の言葉を許さない






『……寂しかったよね……ごめんね』



！！……




しるるの一言にテイが下を向く





けれど、テイは何も言わなかった


ただ……しるるはテイが何を思って、何を言いたいのか、全てわかっていた


テイの足下に光るものが次々と落ちていく











しるるがテイを包み込む


テイもしるるの服をつかむ








「ほんとにごめん…私が馬鹿だった…もう冗談でもあんなこといわないから」

「あたりまえよ！馬鹿っ！」


テイがそういうと、しばらくの間、しるるにしがみついていた
















一方のテトとルコ

しるるとテイはどうなっただろうか……

あれから二時間経過しているのに、テイの部屋から出てこない


「しるるたち、大丈夫かな……」

「マスターに任せておけば大丈夫ですよ」


テトは心配で仕方がないようだ


「でも！もう二時間もたったんだよ！なのに一切、音沙汰なしってどういうこと！？」

「僕に聞かれてもわかりませんよ……なんなら、のぞきに行きます？」

「ええ！！」


ルコがとんでもない提案をしたので、驚いたテト




「いやいや？！なんで驚くんですか！？テト先輩、さっきから行く気満々じゃないですか！？」


テトは迷彩服を着て、背中に冷蔵庫を担ぎ、手には聴診器とぬいぐるみを持っている


「えええ！！あれ？いつの間に！！？」

「ええ？それ天然ですか？！ま、まぁ…混乱しているようで、変なものも持ってますけどね……」


ルコは苦笑いした


「でも……そんなことしなくても部屋の中で何を話してるかだったら、わかりますよ」

「え？どうして？」

「え？さっき盗聴器を仕掛けてきたので…」


ルコがさらっと、平然と、普通に、何事もないように危ないことを言った


「えええ！！そ、そんなことしていいの？！」

「まぁ、テイ先輩の弱みを握れるかなと思いまして」


ルコがさらっと、平然と、普通に、何事もないように、あたりまえのように怖いことをいった


「じゃ！じゃぁ！もしかして、最初から聞いてたの？」

「あ、いえ…最初はそうしようと思ったんですけど、マスターの表情が妙に真面目だったので、今までは聞いてません」

「そうか……」


テトは一安心したように、胸をなでおろす


「で？聞きますか？」

「ええ！！そ、そんな！き、きいちゃっていいのかな……」

「あ、乗り気じゃないなら、やめましょうか？」


ルコも今回ばかりは悪用するつもりはなかった




「あ、ねぇねぇ、どれで聞けるの？これ？」

「って、ええ！聞く気満々じゃないですか！！」


ルコはテトの意外な一面を垣間見た気がした




次回最終回！…つづく！