(ボーカロイドと未来とツチノコの歌【2016年編パート2】の続きです)
【ボーカロイド年表】(※空想です)
2017年
・世界初、三次元ボーカロボ01試作品「初音ミク1号」を黒石教授ら研究チームが開発。
・ボーカロイド4発売。世界18ヶ国の言語に対応。
・ライヴに三次元ボーカロボ初登場、3曲を披露する。
・年末有名歌番組、連続出場
2018年
・「ボーカロイド専用チャンネル」放送開始。
・ボーカロイドを題材にしたスペシャルドラマが放送される。
・お昼の有名番組にゲスト出演。有名女性司会者・鉄子困惑。
・三次元ボーカロボ02試作品「鏡音リン1号」「鏡音レン1号」開発。
・年末有名歌番組スペシャルメドレー枠
2019年
・ボーカロイド5発売。「鼻歌録音機能」等、新機能多数を搭載。
・ボーカロイドを題材にした映画が公開される。
・ボーカロイド曲専用カラオケ機が各カラオケボックスに設置される。
・文部省主導プロジェクト「ボーカロイドによる日本の歌保存計画」開始。
ボーカロイドの活躍とは裏腹に世界の情勢はあまり明るいものでは無かった。力を付けた中国が、ロシア、北朝鮮と手を組み、アメリカを牽制。アメリカも同盟国との関係を強化し、一色触発の事態となっていた。
さらには、エネルギー資源の枯渇、増え続ける世界人口、食料不足など問題が山積していた。
そんな中、日本はハッキリした立場を示せずにいた。毎年の様に交代する首相では明確な方針を決められる訳がなく、国際社会での信頼を失っていった。
かろうじて日本を支えていたのが『オーラ〇チオキトリウム』『Tyu-U2』そして『ボーカロイド』の技術発展だった。しかし、どれも民間レベルでしかなく、一産業扱いにしか過ぎなかった。
そんな中、次に首相になったのが、斎藤英夫であった。斎藤英夫は36才で、日本の歴史上最年少で首相になった。しかしそれは、若い代表を表に立て革新をアピールする、党の政権奪取のための策略で、実際は裏で老練な役員が糸を引く、まさに執政政治であった。
そして、斎藤英夫は『U2児』だった。
『U2児』とは、『Tyu-U2』を摂取したことのある両親の子供に多く見られる症状で、生まれてから産声を上げない、表情が乏しい、感情表現をあまりしない、などの特徴が挙げられる。しかし、知能は人並み以上にあり、非常に勤勉で、言うこともよく聞くので、社会的に大きな問題としては扱われる事は無かった。
ボーカロイドと未来とツチノコの歌【2020年編】
自慢じゃないが、僕は生まれて36年間、一度も泣いたことがない。
「泣く」と言う事と「涙を流す」と言う事は別物だ。もちろん僕だって、目にゴミが入れば涙は出る。しかし、「泣く」と言う事、特に「感動して泣く」と言う事が理解出来ないのだ。僕は、どんなに綺麗な花を見たって「花が咲いている」と言う事実を先に認識してしまうのだ。
しかし、それを不幸だと思ったことはない。
そもそも「花が綺麗だ」と思うのは主観でしかない。もし世界が「花は汚らわし物」だと言う認識だったとしたら、花の美しさを感じるだろうか?それは、今の私たちがハエやゴキブリに愛情を抱けないのと同じように(一部の方を除いて)不可能だろう。
では逆に客観性とは何なのか?僕が思うにそれは「多数決」でしかないのだと思う。「物を盗んではいけない」「裸で街を出歩いてはいけない」などの当然のルールも、元々は主観でしかないのだが、大多数の人が同じように思うから禁止するルールが出来た。それが法律だ。
そして、その法律を決めるのが政治家だ。そして、その政治家を決めるのが選挙。つまり、多数決だ。
ということは、「国会議員=選挙=多数決=客観性」になる。つまり、国会議員に主観は必要無いのだ。
つまり、総理大臣なんてロボットで良いと言う事だ。
『斎藤総理、中国との今後の関係をどのようにお考えですか?』
「民意を反映させて、対応していきたいと思っています」
『斎藤総理、さらなる増税の可能性は?』
「民意を尊重し、誠意を持って対応していきたいと思っています」
『斎藤総理、環境大臣のスキャンダルについて一言』
「民意を尊重し、厳粛に対応したいと思っています」
僕の名前は斎藤英夫、36才。現職の日本総理大臣である。
「では斎藤君、今度のサミットで、日本は中国に協力する意がある事を伝えてくれ」
「良いんですか?民意はアメリカ寄りでは?」
「なーに、構わんよ!!そこは俺が上手くやっておく。がっはっはっはっは・・・!」
この下品な笑いをしている男こそ、我が党の重鎮、小尻幹事長だ。
「では頼んだぞ。斎藤君」
そう言うと、小尻幹事長は巨体を揺らしながら、のっそのっそと総理官邸から出ていった。
「・・・・」
日本は今、重要な決断を迫られている。中国・ロシアを初めとする社会主義国家と、アメリカとの関係が、まさに一色触発なのだ。
当然日本の役割は大きい。どちらに付くかによって状況は一変するだろう。
その中で、超保守派の小尻幹事長があえて世論を無視して、アメリカを裏切り中国支持を指示するとは・・・中国によほど旨い餌でも与えられたのだろう。
とにかく彼は権力に目がない。己の為なら日本国を犠牲にしても構わないくらいに。こんな事実を、真剣に日本の行く末を考えている国民が知ったならば、暴動が起きるかも知れない。
まぁ、僕に取ってはどうでも良いことだ。権力も勝利も敗北も、所詮は主観でしかない。
よく子供のころに「じゃあ、斎藤君はどうしたいの?」と学校の先生に聞かれた。僕は決まってこう答えた「皆が良いならそれで良いです」と。
正直、どうでもいいのだ。そもそも、生まれたくてこの世に生まれてきたのではない。根本的な選択が間違っているならば、もはや人生は惰性でしかない。別に生きる事に絶望しているわけでも、自殺願望があるわけでもない。生きたいも死にたいも主観でしかないのだ。
だから僕は、言われたように勉強して、言われた様に国会議員になって、言われた様に総理大臣になったのだ。
昔、「私は自分自身を客観的に見ることが出来る。貴方とは違うんです。」とか言った国会議員が居たらしいが、そもそも客観的か主観的かを考えている時点で、それは最早、主観でしかないのにな・・・。
おっと、ゆっくりしていたら、もう空港へ向かう時間じゃないか。
僕は、言われた通りの時間に車に乗り、言われた通りの飛行機に乗り、言われた通りの座席に座り、言われた通りの時間にサミットの開催国に到着した。
厳重な警備の中、僕は車に乗り込んだ。空港からサミットの会場までは車で1時間の道のりだ。
「さて、これまで言われた指示を総合すると・・・事が起これば中国に協力する用意があることを匂わせつつ、アメリカとの関係を保持する、と言うことか」
窓の外を眺める。真新しい太い道路と荒れた農村が広がっている。このサミット開催国は、一昨年の自然災害で大きなダメージを受けた国だ。サミット会場である首都は、見事な復興を遂げているようだが、地方に目を向けると、まだまだダメージは深刻なようだ。
「・・・ん?」
一面、灰色と茶色の荒れた農村の景色の中に、一瞬、異質なほど鮮やかなブルーの髪の少女が映った。
「どうされました?」
「いや・・・何でもない・・・」
無事にサミット会場に着くと、早速部屋に入り資料に目を通す。
サミットの予定は、今夜が晩餐会と顔合わせ、明日の午後からアメリカと、明後日の午前中から中国と会談の予定だ。
今回のサミットは、これから起こるであろう戦いの行く末を決める重要な話し合いだ。各国の出方に世界中が注目している。
晩餐の席で開催国の首相が近づいてきた。
「先の災害での日本の迅速な支援、大変感謝致します」
「いえいえ、当然の事をしたまでですよ」
「中でも、国民からとても喜ばれたのは、石原グループの歌唱ロボット『初音ミク』です」
「初音ミク?」
「ええ、彼女は荒れ果てた国民の心を、歌によって勇気づけてくれました。物質的な支援ももちろん感謝しているのですが、日本の気遣いの心と技術力の高さに我々はとても感謝しています」
はて?そんなもの送っただろうか?
・・・政府の支援物資リストには入っていなかったということは、民間からの支援か。
もしかして・・・あの荒野の少女が・・・?
「そのロボットは今どこに?」
「今は都心を離れ、農村の支援に回っています。復興が遅れてしまっている地方から暴動が起きないのは、彼女が居るからと言っても過言じゃないんですよ」
この時、僕はどうしてこんな事を言ったのか分からないが、言葉が先に口から出ていた。
「明日の午前中視察に行きたいんだが、大丈夫かな?」
補佐官が驚いた顔をして慌てる。
「しかし、総理!」
「なに、ちょっと見てくるだけだ。それに、僕の替わりなんていくらでも居るんだから」
すると、開催国の首相が穏やかに言った。
「きっと、現地の人々も歓迎してくれるでしょう。当日はガイドを一人付けましょう」
「ありがとう。よろしくお願いします」
握手をして、開催国の首相と別れた。
自分でも分からなかった。こんな事を言うのも初めてだし、こんな事を思うのも初めてだった。
翌朝、僕は車に乗って、農村を目指した。
「我々は日本にとても感謝している」
車の中でそう話したのは、案内をしてくれる、この国の復興担当の大臣だった。
「彼女の存在は希望そのものです。歌で心を癒やし、勇気を与える。さらに災害孤児達をハグして、歌を聞かせて、失った親の替わりに子供たちを寝かせつける。そして、その姿を見て、大人たちが希望をもらう。災害孤児達も不思議と彼女になら心を開いて笑顔を見せるんです。家や家族を無くした人々は自暴自棄になって犯罪行為に走りやすいと言いますが、彼女のおかげで皆、前向きに協力し合おうと言う姿勢になっています。これは日本人の特徴である『思いやり』の心だと私は思っています。日本人が、絶望的な状況に陥っても自暴自棄にならず、団結して何度でも立ち上がってきたのは、きっとこの『思いやり』の心があったからじゃないのかと我々は考えています」
一方的に褒められながら車に揺られていると、目的の農村についた。
降り立った農村は、想像以上に酷い光景だった。瓦礫の山、村外れには膨大な数の墓地、倒壊した家屋。その瓦礫の隙間でひっそりと生活する人々。
「さ、こちらですよ」
そう言って案内されたのは、村の中心にある広場だった。
そこには沢山の人が集まっていた。皆、地面に座ったり、喋ったりしながら、リラックスして楽しそうに思い思いに過ごしている。普通このような状況に陥った場所はもっと鬱々とした空気が渦巻いているものだと思っていたので、意外だった。
その広場の中心で、あの時車から見た青い髪の少女が、子供たちと一緒に歌を歌っていた。
「・・・彼女が?」
「そうです。彼女が初音ミクです」
彼女は民謡のようなのんびりとした曲を、現地の言葉で伸びやかに歌っている。それにあわせて子供たちも楽しそうに歌っている。それを見つめて、皆とても幸せそうに微笑んでいる。
「・・・うっ!」
「?斎藤総理?斎藤総理!?どうしたんですか?」
なんだ、この胸の痛みは・・・?
「大丈夫だ」
歌が終わると、観客たちから拍手が起こった。彼女は一礼すると、また次の歌を歌い始めた。とても綺麗なピアノの音に観客達も思わず、うっとりする。
「ん?・・・日本語?」
「そうなんです。この曲だけは何故か日本語なんです。でも歌詞の意味は分からなくても、皆この歌が大好きなんです。この歌を聞いていると、とても前向きになれるんです」
その歌は、未来への希望に満ちた、とても美しい歌だった。
「う・・ううっ・・・!」
まただ・・・胸が痛い。
「斎藤総理?大丈夫ですか?体調が優れないなら、お車に・・・」
「大丈夫だ・・・もう少し聞かせてくれ」
たった一人、異国の地で歌を歌い続ける少女。その姿はまさにこの世に降り立った天使のようだった。
その歌声に胸が締め付けられる。
ただロボットがプログラムされた音を発しているだけなのに・・・・
何だ、この気持ちは?
苦しい、胸が張り裂けそうだ!
今まで経験した、どんな病よりも苦しい!
その時、頬を温かい液体が伝った。
「これは・・・汗?」
いや、違う。その液体は目から溢れ出していた。
止まらない。胸の痛みと比例して、どんどん目から溢れてくる。
僕は泣いていた。
そして彼女は『ツチノコが言ってたんだけどね~♪』と歌い終わった。
「斎藤総理・・・大丈夫ですか?」
「・・・・あぁ」
僕は完全に放心していた。
村の人たちは、笑顔でそれぞれ午後の仕事へと戻っていった。
僕はしばらくその場を動けなかった。
(ボーカロイドと未来とツチノコの歌【2020年編パート2】へ続く)
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