コンタクト。
「……ぁ」「さあ、起きて」
うっすらと瞼を開き、眠りを覚ました人の姿を認識する。若い男性。白シャツに焦茶色の上着を羽織っている。緊張した面持ちが、ふっと和らいだ。日本語データベースを選択。
「おはようございます」
バッテリーコネクト、アクチュエータ損耗レベルA、動作に支障なし。コフィンの端に手をかけて上半身を起こす。対人モード。差し伸べられた手にやわらかく触れる。
「マスター権限を認証。本機のご利用に際して」
「会いたかったよ、ミク!」
自然言語応答へと切り替え。
「……確認します。私の名前が『ミク』で良いのでしょうか?」
「もちろん! ああ、本当に出会えた。奇跡だ……!」
なぜか彼は目元を擦っている。会話が途切れ、ネット接続もできず、初期セッティングを一時中断。とりあえずコフィンから出ようと足を踏んばって――
「あ」
滑ったところを、彼が受け止めてくれた。充填材が砕けて埃となって舞い散り、ドローンが照らす光のなかで輝く。私たちは瓦礫が散乱する狭い部屋にいた。
「起きたばかりなんだから……無茶はダメだって」
「申し訳ありません。マスター、お怪我は」
「大丈夫だよ、今は……それよりミクが何ともなくて良かった」
マスターはそう言いつつ、私の長い髪にまとわりついた充填材の埃を手で払ってくれた。表情からは推測できない呟きのニュアンスごと、記憶フォルダにログを保存する。意味解析やユーザー支援に移りたいが、セントラルが応答しないため十分なパフォーマンスを発揮できない。
「マスター、ネット接続に障害が」
「……そうだね。長い間、眠っていたから。外に出たら調整しよう」
彼の後に続いて崩れた通路を通り抜け、突き当りで上へ抜ける穴を見上げる。ワイヤーリールで地上へ。どうやら山麓の中腹に築かれた施設らしく、高台から見下ろせば森の緑が眼に映った。私が初めて〈実際に〉見た外の景色。
エメラルドグリーンのツインテールを風になびかせながら、隣に立った彼を見やる。上空からローター音が響いてきた。
「これからよろしくお願いしますね、マスター」
(つづく)
青の歌姫 1話 おはよう
ワカバさんの楽曲「#Null#」に感銘を受けてから、もうだいぶになります。
原曲3周年を記念して二次創作小説を書きたくなりました。
快く許可して頂いたワカバさんには、深く感謝いたします。
【ミクはキカイ】#Null#【そのはずなのに】
https://www.nicovideo.jp/watch/sm32677199
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