今日もまた開戦の鐘が 夜明けの空遠くで響いてる
終わらない時代の海の上已(や)まない風はどこへ行くの
そのとき祝福の代わりに天から稲妻が降り注いだ
求めることさえも許されず置いて行かれたのはなぜ?
膨大な時間に渦を巻く一人きりのモノクロの無限ループ
憎しみが“僕”を固定する醜いポートレイト
狂って叫んで喚き散らして やがてその表現法(レトリック)を忘れ
常人ならとっくに醒めて飽きるはずの勇者ごっこ
砲火は一瞬だけ闇を照らす 気づけば引き金は血に塗れて
静まり返った空にかかる赤月(アカツキ)の肖像
畏怖畏敬恐れ賞賛 “災厄の鬼子”“奇跡の軍神”
違うように見えるだろ でも同じことなんだ
普通の色も止まれる枝も失くした
これ以上失うものなんてない
硝煙はたなびく雲となり 悲しみの黒い雨を降らす
白抜きの羽はやがて汚れそれでも海には染まれない
限りないと分かった瞬間命には価値がなくなって
“何のために生きる?”が一瞬の迷いで済まないんだよ
“傷つかない身体なんて 永遠の輝きなんて羨ましい”
傷がないのは身体だけさ 心はもう とうに――――
“私が居なくなっても あなたはもっとたくさんの人を見送るのね”
普通の人間じゃないんだ だから耐えられます
羽ばたける羽も歌う声も失くした
これ以上失うものなんて・・・
世界を焼く火の紅(あか)は 脆い命の色を瞳に映す
折れかけたマストを飛び越えて已まない風はどこへ行くの
どんなに走ってももう届かないよ
箒星が血を噴いてきらり堕ちてゆく
どこまで行けば楽になれるの?
飛ぶことを捨てても地獄へは逝けなかった
“大丈夫 ひとつの終わりはもうひとつの始まりなの あなただけじゃない”
寄り添う声を聞いて ループに光が差した
本当の名前も犯した罪も忘れた それでも
“愛してる(Я тебя люблю )”それだけ言いたかった
忘れてたはずの歌を聴いて 失くした夢を探し出して
繕った翼で飛んできたけどそれももういらないな
いつか聞いた終戦の鐘が 夜明けの空遠くで響いてる
新しい世界へと船を見送って 今、風が已んだ
暁のストレーリニコフ
――――時代は海、国民は風。通常の人の命が一瞬の海風だとするならば、已まない風はどこへ行けばいいのか?
昔考えたプロットのみの小説を詩にしたものです。
ストレーリニコフとは確か、「銃殺刑に処す者」という意味だったと思います。
“永遠の命”を持ち、帝国と共産主義と新政府と、移り変わる三つの時代を生き抜いたある少年兵の物語――――でした。壮大すぎて挫折しましたが。
永遠の命は素晴らしいように見えますが、もし本当にそうなったら、人は逆に普通に生きて死ぬことにあこがれ始めるのではないかと思うのです。
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