3-3.
翌朝、私はあくびを噛み殺しながら、お弁当を作っていた。
学園祭の翌日ということもあり、学校は休みだ。しかも、学園祭は日曜日だったから今日は月曜日。平日だから、塾も夕方からしかない。作ってるお弁当はパパとママの分。それと、パパとママには内緒だけど、実は海斗さんの分もある。
昨日……というか、ついさっきまでしてたメールで、海斗さんにお弁当を持っていくと約束してしまった。嬉しいけど、けど、すごく恥ずかしい。
パパはギリギリの時間に起きてくると、朝御飯も食べずにお弁当と鞄だけ持ってすぐに出かけてしまった。ママはパパよりは少し余裕があるから、バターをぬったトーストとスクランブルエッグを食べている。
ママは、私が昨日のクッキーを作った後の片付けをしたことにはなんにも言わなかった。ママにとっては私が後片付けすることなんて当たり前のことだから、別に気にもしていないんだと思う。
「未来は、今日は休み?」
「うん。昨日は学園祭だったから、今日は振替休日」
あまり気のない様子で、ママは「ふぅん」と相づちをうつ。さすがに昨日が学園祭だったってことは覚えてるだろうけど、……でも、もしかしたら忘れててもおかしくないかもしれない。パパもママもそういう行事には全然興味がないから。
「塾は?」
「月曜だから、夕方からよ」
ママの顔が、かすかに険しくなったのを私は見逃さなかった。だから、私はあまり間をおかずに言葉を続ける。
「宿題がたまってるから、学校の図書館で片付けちゃう」
「そう。ならいいわ。……じゃ、私もそろそろ行くわね」
ママはスクランブルエッグをかき込むと、立ち上がってスーツの上着を羽織る。
「はい、お弁当。いってらっしゃい」
玄関でお弁当をわたすと、ママは「ん、ありがと」とつぶやいた。すこしだけ手を振ると、ママはそのまま出て行ってしまう。
……本当は、宿題なんてとっくに片付いてる。あれはママに色々と聞かれないための嘘だ。あとでケータイのGPSなんかをチェックされても、神崚大学の図書館は高校と共通だから、「学校の図書館で勉強していた」って言えばいい。そうすれば、私が大学で海斗さんに会ってたなんて、パパとママにはわからない。
嘘、ついちゃったな……。
家に独りきりになってから、そのことに少しだけ後ろめたい気持ちになる。
よくないって分かってるけど、でも……。でも、本当のことを言ったら、パパとママはきっと許してくれないと思う。ううん、……絶対に、許してくれるわけがない。
つい最近までは、それも仕方ないと思っていた。卒業して、大学に行って、就職して。そうやって独り立ちするまでの辛抱なんだって、私は自分に言い聞かせてきた。独り立ちすれば、私は自分のやりたいことをしたり、欲しいものを買ったりできるようになるから、それまでは我慢しないといけないんだって。
でも、海斗さんに会ってから数日、私はなんとなく嫌な予感がしてる。
もしかしたら、私が何歳になっても、パパとママは自分達の考えを、自分達のわがままを私に押しつけてくるんじゃないかって。私の人生は全部、私のものじゃなくてパパとママのものにされちゃうんじゃないかって。
そしてその予感は、ものすごくあたりそうな気がして、すごく怖い。
ロミオとシンデレラ 13 ※2次創作
第十三話。
今回はようやくママの登場です。
パパはまたあとでってことで。
長々と書かないようにと、意識してキャラクターを減らしているはずなのに、全然短くならないなぁ。
なので、ママとパパも、必要最低限くらいしか出てこない予定です。
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完璧なものなどこの世にないと
理想論 愛したって 儚いだけで
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綾取り
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