タグ:ごめんなさいdoriko様
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もう過去のこと。
そうやって私は昔の傷を忘れていく。
でも時々心が軋む。
「あのさ、俺、君のことが」
「ごめんなさい。」
こんな気持ちはいらない。
夢のようなこんな感情なんて。
時々、無意識に私は泣いている。
「どうしたの?」
なんて言ってくれる人もいない。...モノクロアクト
禀菟
10-3.
[ごめんね。本当は、電話で話すべきじゃないってわかってるんだけど――時間がなくて]
「そんな……そんなこと」
懐かしいその人の声音に、愛が隣りにいるってわかってても泣き出しそうになった。
[俺……もう、大学にはいないんだ。退学届も出して、あのアパートも引き払った。今は大分の実家で旅...ロミオとシンデレラ 42 ※2次創作
周雷文吾
10-2.
「め……メグ?」
学校帰りなんだろう。神崚高校の制服に学生鞄を持ったその友人は、いつもどおりの、よく通る元気な声で私の目の前に立っている。
「そうよ。私が偽者に見える? ほらほら、あたしに会えて嬉しいでしょ?」
正直に言って、嬉しいとかよりも、なんで愛がここにいるのかわからずにポ...ロミオとシンデレラ 41 ※2次創作
周雷文吾
Tranquillo cantabile
10-1.
あれからどれくらい経ったのか、もう時間の感覚なんて無くなってしまっていた。
でもたぶん、一週間とか、それくらいなんじゃないかと思う。けれど……もう、そんなことどうでもいい。
だって、もう私は海斗さんに会えないもの。
海斗さんの力に...ロミオとシンデレラ 40 ※2次創作
周雷文吾
Presto
9.
三人組がパトカーで連行されて、私と海斗さんも別のパトカーで警察署にやってきた。
あの三人組がどうなるのか、私は何も聞かなかった。聞きたくなかった。……聞けなかった。
しばらく事情聴取を受けて、もう用事はすんでいる。なのに、私はまだ帰れなかった。
それは、私の捜索願...ロミオとシンデレラ 39 ※2次創作
周雷文吾
8-2.
身体をベンチに抑えつけられ、口にハンカチを押し込められた。私は、逃げ出すことも悲鳴を上げることもできなかった。
「おい、暴れてんじゃねーよ。もっと抑えろ。服が脱がせねー」
金髪の手が私の身体をはい回る気持ち悪い感触がした。
「……んんっ。んっ! んー!……」
イヤだ。
止めて。...ロミオとシンデレラ 38 ※2次創作
周雷文吾
Tempo primo
8-1.
また、逃げ出してしまった。
しばらく無我夢中で何にも考えられずに走ってから、しばらくして落ち着いてみると、ひどい罪悪感にさいなまれた。自分が海斗さんにどれだけひどいことをしたか、思い出すのすらつらい。
だって、海斗さんのせいじゃないんだもの。海斗さんは...ロミオとシンデレラ 37 ※2次創作
周雷文吾
7-3.
初めてのデートは、ものすごく楽しかった。
私は乾かした制服を着て、海斗さんと駅の近くのお店を見て回った。
海斗さんに申し訳なくなってしまうくらい、何着も洋服を買ってもらった。さすがの海斗さんでも下着売場だけは「ちょっと、外で待たせて」って言ったけれど、その他はずっと海斗さんと一緒...ロミオとシンデレラ 36 ※2次創作
周雷文吾
7-2.
翌日。
寝たのが遅い時間だったせいか、海斗さんが目を覚ましたのはもう十時を過ぎた頃だった。
寝ぼけたままの海斗さんの腕の中から何とか抜け出して、海斗さんの要望通りにコーヒーをいれる。
実は私は一睡もできなかった。恥ずかしくて、緊張しすぎて眠れなかったっていうのもあるけど、寝てし...ロミオとシンデレラ 35 ※2次創作
周雷文吾
Moderato
7-1.
雨でずぶ濡れになった身体をシャワーで暖めて、私は海斗さんに貸してもらったジャージに腕を通す。
そのジャージは、海斗さんのものなんだから当たり前なんだけど、かなり大きかった。
裾と袖を何回も折り曲げて、私のサイズに合わせてみたけど、全体的にぶかぶかなのと、シャ...ロミオとシンデレラ 34 ※2次創作
周雷文吾
6-6.
海斗さんの家に着くころには、私は何があったのかをほとんど説明し終えていた。
私のケータイの通話記録とメールの内容を全部調べられていたこと。パパとママが「海斗さんに会うな」と言ったこと。ママが海斗さんにあの電話をしたこと。
まだしとしとと降り続く雨は、私の気持ちを抑える役にはたたな...ロミオとシンデレラ 33 ※2次創作
周雷文吾
6-5.
「ちぇー。未来ちゃんにカイの情けない話を教えてあげようと思ったのに」
「お前……な」
息を整えて、私を見る海斗さんの瞳は、不安で揺れていた。
怖かったのは、私だけじゃ――ないんだ。でも、私は独りじゃない。私には、海斗さんがいる。私を連れ出してくれる、ロミオがいる。
「未来ちゃん――...ロミオとシンデレラ 32 ※2次創作
周雷文吾
6-4.
コンコン。
山崎研究室、と書かれたその扉を恐る恐るたたいてみる。もうすぐ夜中の一時になるような時間。本当なら、ここに来ちゃいけないに決まってる。
でも……海斗さん。
ママの言ったこと、本当じゃないんですよ。
私、海斗さんが好きです。迷惑だなんて思ってないんです。だから――。
...ロミオとシンデレラ 31 ※2次創作
周雷文吾
6-3.
真夜中。
私は恐怖にかられて、当てもなく走った。
怖かった。
不満があったとはいえ、それでも信じていたパパとママに裏切られた。そんな思い。
一方的に、私の気持ちを聞きもしないで海斗さんを拒絶するなんて、思ってなかった。しかも、私の目の前であんなこと言うなんて。
ポツリ。
...ロミオとシンデレラ 30 ※2次創作
周雷文吾
6-2.
「未来、おかえり」
海斗さんと付き合い始めて一週間後の金曜日。家に帰っていつもどおりに「ただいま」ってつぶやいたら、今日は返事が返ってきた。
驚いてリビングに入ってみると、ダイニングテーブルにパパとママが座っていた。二人ともスーツを着たままで、険しい顔をしている。私が帰ってくるのを...ロミオとシンデレラ 29 ※2次創作
周雷文吾
Apassionato
6-1.
会える時間は短かったけれど、私はすごく幸せだった。
こんな幸せがあるなんて、私は全然知らなかった。
学校に行って、お昼を一緒に食べて、塾の行き帰りも海斗さんは一緒に来てくれた。
学会が終わって、海斗さんはかなり時間の融通がきくようになったみたいで、私...ロミオとシンデレラ 28 ※2次創作
周雷文吾
5-7.
「私、海斗さんが……好き、です」
悩んで悩んで、どうしようもないくらいにつらくて、苦しくて。それでもやっと口にしたその言葉。
私は祈るような気持ちで、目を丸くして私を見返す海斗さんの言葉を待った。
……返ってきたのは、少しショックな言葉だった。
「……まいったなぁ」
目をそらし...ロミオとシンデレラ 27 ※2次創作
周雷文吾
5-6.
不意に訪れる恐怖って、なかなか簡単には消え去ってくれない。
ママにぬいぐるみをねだったときに怒られたのは、十年近くたった今でも、ちょっとしたトラウマになっている。
「伝えなきゃいけないことがある」なんて言っておいてなかなか話さない私を、海斗さんは辛抱強く待っててくれた。でも、それは...ロミオとシンデレラ 26 ※2次創作
周雷文吾
5-5.
「好きです」
たった四文字のその言葉を伝えることがこんなにつらいだなんで、私は全然しらなかった。
だって、毒リンゴを食べて眠ったままの白雪姫に、王子様はなんの気後れもなくキスしてたし、ガラスの靴を履いたシンデレラには王子様がみんなの前で堂々とプロポーズしてた。ロミオとジュリエットだ...ロミオとシンデレラ 25 ※2次創作
周雷文吾
5-4.
実は昨日、金曜日には海斗さんに会えなかった。
学会は木曜日までで、海斗さんは帰ってきてたんだけど、海斗さんは一日中ぐっすり寝ていたらしい。
ここ数日、徹夜が続いていたみたいだから、仕方のなかったことだと思う。会えない日が一日増えたのは残念だけど、私に会うために無理まではして欲しく...ロミオとシンデレラ 24 ※2次創作
周雷文吾
5-3.
翌々日、土曜日。
パパとママが仕事に出かけてから、私は鏡の前で悪戦苦闘中だった。
洗面台の上には、愛がくれた化粧品が広げられている。ファンデーション、リップ、アイライナー、ビューラー、グロス、マスカラなどなど。
お弁当と交換条件でお願いしたのは、メイクのやり方を教えてもらうこと...ロミオとシンデレラ 23 ※2次創作
周雷文吾
5-2.
海斗さんから連絡がきたのは、木曜日の昼休みになった直後のことだった。
今日は確か学会二日目で、海斗さんの研究室の発表は終わってるはずの時間だった。
愛と一緒にお弁当を広げたところでケータイのバイブレーションが鳴り、慌てて画面を見ると、海斗さんからの電話だったのだ。
「ごめん、メグ...ロミオとシンデレラ 22 ※2次創作
周雷文吾
Espressivo
5-1.
海斗さんがいない二日間は、思ってた以上につらかった。
このたった数日のうちに、海斗さんの存在は私の中でずいぶん大きくなってしまったらしい。
――まだ、私の気持ちを伝えてもいないのに。海斗さんの気持ちを聞いてもいないのに。
いや、だからこそつらかったんだ...ロミオとシンデレラ 21 ※2次創作
周雷文吾
4-4.
翌朝。
まだ寝ぼけている愛をベッドに残してリビングに入ると、むせ返るような甘いにおいがした。
……また、ママかな。
キッチンをのぞくと案の定、ママがフライパンでなにかを作っていた。フライパンの中には透明な液体みたいなものが入っていて、それをずっとかき混ぜてるみたいだった。何を作...ロミオとシンデレラ 20 ※2次創作
周雷文吾
4-3.
結局、愛が乱入してきたせいで海斗さんに「好き」と伝えられなかった。
塾は十分遅刻してしまったし、しかも愛は塾が終わってからも一緒に帰ると言って、しっかりと家までついてきた……というか、まだいる。
「今日は未来ん家に泊まります!」
また、宣言された。
しかもまた、私のことはお構い...ロミオとシンデレラ 19 ※2次創作
周雷文吾
4-2.
「へぇ、そんなことがあったんだ?」
「わ、笑い事じゃなかったんですよ!」
「ごめんごめん。俺も軽率だったね。気をつけなきゃ」
「あ、いえ。そういうつもりで言ったんじゃ……」
放課後の図書館。塾が始まるまでの、少しだけ空いた時間に、海斗さんはなんとか時間を作って会いにきてくれた。
そ...ロミオとシンデレラ 18 ※2次創作
周雷文吾
Meno mosso
4-1.
翌日。
昨日のことをぼんやりと思い出してるうちに、いつのまにか昼休みになっていた。
今日は、海斗さんのお弁当は作ってない。海斗さんの休憩時間と高校の休み時間が合わなくて、渡せそうになかったからだ。
代わりに――といったら怒られるかもしれないけど、今日は...ロミオとシンデレラ 17 ※2次創作
周雷文吾
3-6.
「や、ごめん。待たせちゃったね」
「ひゃっ」
突然、後ろからポンと肩を叩かれた。びっくりしてふりかえると、そこにはいつの間にか海斗さんがいた。
ぜ、全然気付かなかった……。
「すごい真剣な顔して読んでたから、声かけるのためらっちゃったよ」
そう言って笑う海斗さんは、今までと違って...ロミオとシンデレラ 16 ※2次創作
周雷文吾
3-5.
ちょっと早く着きすぎたから、私は図書館で時間をつぶすことにした。
海斗さんからのメールによると、実験の最中だからあと一時間は手が離せないらしい。
長くも感じるけど、でも、昨日とか一昨日なんかにくらべたら、一時間なんてほんの少しだ。
広い図書館の中を、のんびりと歩く。
ここは高...ロミオとシンデレラ 15 ※2次創作
周雷文吾
3-4.
神崚高校までは、いつも登校するときと変わらない。でも、学校に近付く度に、心臓のドキドキは激しくなっていった。
制服じゃないからっていうのもあるかもしれない。私服で行くっていうのはなんだが慣れないけれど、だからって制服でいくのは、それはそれで恥ずかしい気がする。
高校の校門から入っ...ロミオとシンデレラ 14 ※2次創作
周雷文吾
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