Espressivo

  5-1.

 海斗さんがいない二日間は、思ってた以上につらかった。
 このたった数日のうちに、海斗さんの存在は私の中でずいぶん大きくなってしまったらしい。
 ――まだ、私の気持ちを伝えてもいないのに。海斗さんの気持ちを聞いてもいないのに。
 いや、だからこそつらかったんだと思う。
 付き合ってるわけでもない微妙な関係のままだから、余計に不安になってしまう。どうしても信じることができない。……そうじゃないかな。私のことが好きなんだと思っちゃっていいのかどうかがはっきりしないから、かな。
 それならもう、メールや電話でもいいからすぐに告白してしまおうか、そんなことも何度となく考えた。その方がきっと、面と向かって言うよりも恥ずかしくはないだろうから。
 でも……、やっぱり言うのなら直接伝えたい。そして、海斗さんに「俺も好きだよ」って言って欲しい。
 私は海斗さんに好かれてる。きっと……ううん、好かれてないわけがない。
 だから。
 だから――怖い。
 そんなことないって思うから、もしも、断られてしまったときのことを思うと怖くてたまらない。
 愛だったらなんて言うだろう?
 私の悩みも、私の苦しみも、はたから見ればただの恋わずらいにしか過ぎないのかな。
 ……たぶん、そうなんだろうな。否定なんてできない。これは、確かにただの恋わずらい。
 でも、ロミオとジュリエットは出会ってからたったの五日間のうちに、結婚して、離れ離れになって、恋人の死に耐え切れず自殺してしまうほどに愛し合っていた。
 その「たかが恋わずらい」は、時としてそれほど人を狂わせる。
 私の恋は、間違っているのかな?
 でも、それじゃあ正しい恋ってどんなものなの?
 ……そんなの、私には分からない。
 私に分かるのは、たった一つ。そう、一つだけだ。
 私は海斗さんが好き。私に分かるのは、私が分かってるのはそれだけ。
 好き過ぎて気が変になってしまいそうなくらい。
 海斗さん。私、海斗さんが好きです。
 海斗さんは、私のことどう思ってますか?
 ただの友達……じゃないですよね?
 自分勝手かもしれないけれど、信じていいですか?
 私のこと、好きでいてくれますか?

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

ロミオとシンデレラ 21 ※2次創作

第二十一話。


信じてるからこそ、不安になることってあると思うんです。
人は一人では生きていけませんから。
未だ「相互理解」ができない人にとって、信じることは、リスクが高すぎる行為なんだろうと思います。

閲覧数:320

投稿日:2013/12/07 12:58:38

文字数:939文字

カテゴリ:小説

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