5-6.
不意に訪れる恐怖って、なかなか簡単には消え去ってくれない。
ママにぬいぐるみをねだったときに怒られたのは、十年近くたった今でも、ちょっとしたトラウマになっている。
「伝えなきゃいけないことがある」なんて言っておいてなかなか話さない私を、海斗さんは辛抱強く待っててくれた。でも、それは私だからそうしてくれるのか、他の誰にでも同じようにしているのか、私にはわからない。
私は、私は――海斗さんの特別になりたい。
だから、伝えたい。言わなきゃいけない。だけど。
「おちついた?」
おびえていた私を心配して、海斗さんが尋ねてくる。私はうなずいて「ごめんなさい」とつぶやく。
海斗さんは私をせかしたりはしなかった。私の隣りに座ったまま、ゆっくりと私の言葉を待っている。
――本当に、いい人だ。それに、すごい人。
私だったら「伝えたいことってなに?」とか言って、言おうとしてる人を余計に言いにくくさせていたかもしれない。
なのに海斗さんは穏やかにほほ笑んだまま、私の準備ができるのを待っている。初めて会ったとき、襲われそうになったところを助けてくれたときにも思ったけれど、海斗さんって話し相手にものすごく気を遣ってくれるし、相手の意見をとても尊重してくれる。それでいて、他者との距離をナイーブに保つこともできる。聞いて欲しくないことや追及して欲しくないことはそれ以上踏み込んでこないし、逆に助けて欲しいときはとことん頼りになる。
まるで私の気持ちがバレちゃってるんじゃないかって思っちゃうくらいに、海斗さんは優しい。
そんな海斗さんの方に私は体ごと向き直って、まっすぐに海斗さんを見る。
「海斗さん。私――」
一瞬ためらってしまって、言葉がつまる。一度だけ目を閉じて、改めて海斗さんを見つめながら、今度こそその言葉を私は口にした。
「私、海斗さんが……好き、です」
ロミオとシンデレラ 26 ※2次創作
第二十六話。
ここまでくるのに、二十六話も費やしてしまいました。
長かった・・・・・・。
読んでくださった皆様が共感できるようになっていたらいいなぁ、と思います。
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