そして小人たちの家ではすっかり小人たちとなじんだ姫が一人で留守番をしていました。
「んー!! やっぱみんなといるのも楽しいけど、一人になりたいときもあるのよねー」
 上半身を伸ばしながら、姫はベッドに寝転がりました。
「ふあー。ねむい。でも今寝たら夜寝れなくな・・・・・・zzz」
 それからしばらく気持ちよーくぐっすり寝ていた姫は、来客に気がつきませんでした。
「・・・・・・ちゃん! お姉ちゃん!!」
「・・・・・・ほあ?」
 黄色の女の子にそっくりな男の子に起こされた姫は目をこすりながら体を起こしました。
「あー私寝ちゃってたんだね。今日はもう寝れないなぁ」
 今日は誰で遊ぼうか考えていると、緑の髪をしたショートの子と、朱色のロングヘアの子が、
「お姉ちゃんにお客様だよ」
「赤い女の子だったよ」
と、それぞれ姫の手を引いて入り口に連れていきました。
(赤い女・・・もしかして女王様かも。用心しなきゃ)
 姫は警戒しながらドアを開けると、そこには朱色の子が言ってた赤い女の子がいました。
「どちら様ですか?」
 姫は記憶にない女の子をじろじろと観察しながら尋ねました。女の子は笑顔で答えました。
「あたしは森のはずれにある村の娘で、りんごを売り歩いているんです。最近森の奥の小さな家にとてもきれいな方がいると噂で聞いて、合ってみたくなったんです! 噂通りとてもきれいですね!」
 最後の方は興奮していたのか、大声になっていました。女の子は唖然とした表情でこちらを見ている姫の視線を感じて我に返り、顔を赤くしてうつむいてしまいました。
 そんな女の子を見て姫は、女王様を若くしたらこんな感じになるんだろうな、と考えていました。それほどまでにその女の子は女王にそっくりだったのです。
 しかし、あの女王様がいくら若作りしたところで、ここまで子供にはならないだろうと思いました。なのでつい気を許してしまいました。
 しかし実はこの女の子こそがあの服を着た女王なのでした。
「ふふっ。ありがと。そのりんごおいしそうね」
「お近づきの印です。お一つどーぞ」
「あらーでも悪いし・・・・・・」
「いえいえ。一つぐらい構いませんよ」
「・・・じゃあ、いただくね」
 姫は手渡されたりんごを持って、台所へ行き、りんごを丁寧に洗って、包丁で9等分にしました。家の中に案内された女の子、もとい女王は、目の前に皮のむかれたりんごを差し出されて気付きました。
(洗ったら毒とれるじゃん・・・!)
 姫は以外としっかりした性格のようでした。包丁さばきも慣れているようで、りんごの皮むきもお手のもの。女王がりんごの皮をぐるぐると巻き合っている小人たちを呆然と眺めていると、
「どうしたの? りんごは皮付きの方がよかった?」
と、姫が顔をのぞき込んでいました。
「え、いえ・・・・・・手慣れているなぁ、と」
「ああ、そうね。兄さんがりんご好きでね。いつも庭にあった果物を向いてあげてたの」
「・・・・・・」
 女王はこれほど王が恨めしいと思ったことがありませんでした。そして間接的に姫を殺すことは無理だ、と悟りました。
「・・・・・・お姉さん。お願いがあるんですが」
「なに?」
 女の子のただならぬ雰囲気に姫は思わず表情が堅くなってしまいました。深刻な悩みでもあるのだろうか。自分に解決できることならばいいのだけれど。
「一度、手合わせをしてくれませんか?」
「・・・・・・手合わせ?」
 姫はあまりにも意外なことだったので、動揺してしまいました。そしてなぜそんなことがこの女の子に必要なのかを知りたいと思いました。けれど今日初めて出会った自分が問いただすのはずうずうしいだろう。姫は理由を聞かずにおきました。
 いっぽう、もはや自分自身の手で姫を殺すしかないと決断した女王は、ただの練習と見せかけて息の根を止めるという方法を考えていました。姫の方が強いというならば、真っ正面から立ち向かっても返り討ちに合うだけだろうと思っていたからです。

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桃桜姫と薔薇の女王4

閲覧数:139

投稿日:2010/05/03 13:30:45

文字数:1,662文字

カテゴリ:小説

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