ヂッと苦しげな悲鳴をあげて死んでゆくマウス。
また、失敗か。
顔を顰めつつそう呟いた男は、一応その哀れなマウスを弔い、その後ため息を吐いた。
今日は、折角の人間の検体が手に入るというのに。
少しずり下がった眼鏡を指で押し上げながら、インスタントコーヒーを啜る。
不味い。また顔を顰めた。
彼の名は神威がくぽ。
不老不死の薬を作り出す為、日々動物実験、時には人体実験に勤しんでいる。
まぁ、アレだ。
ぶっちゃけよく推理漫画とかに出てくる頭逝っちゃってる奴みたいなものだ。
……それはさて置き、そろそろ検体が来る時間だ。
コンコン、とドアをノックする音が聞こえたと思った瞬間、
「やっほー兄貴、生きてる?生きてるか。とっとと毒薬飲んで氏ねばいいのに。検体連れてきたよ。じゃーね。氏ね」
男の返事を聞かずにドアをガチャリと開け、暴言を吐き捨てて帰っていった女。
一応、彼の妹である。
なんやかんや紆余曲折を経て、兄の手伝いをしているようだ。そうなった経緯は面倒臭……長くなるので割愛しよう。
そんな訳で可哀想に、人体実験の犠牲になる予定の人物が実験室に放り込まれた。
最期にコーヒーを出してやる主義の部屋の主は、取り敢えず実験結果に記録する為、お湯を準備しつつ年齢を聞き出そうとした。
「巡音ルカ、17歳です!……ごめんなさい、私、コーヒー飲めなくて……。なので、紅茶にしてくださると嬉しい、です」
パリン。
何故か彼の眼鏡が割れた。
神威がくぽ、18歳。若きマッドサイエンティストは、検体に一目惚れをした。
【大遅刻】マッドサイエンティストと検体ちゃん【ゆるりー誕】
「あの、大丈夫ですか?眼鏡割れてますよ?」
ルカと名乗った少女は心配そうに白衣の男の方を見る。
「大丈夫だ。……紅茶だったな。セイロンしか無いが」
「ありがとうございます。ああ、前にセイロンティーを飲んだときはまだお父さんもお母さんも生きてて……。ふふ、懐かしいです。ってあれ、どうしました?研究者さーん?」
いきなり始まった重い話に、思わず涙腺が決壊する男。
「い、いや問題ない。それより紅茶、淹れたぞ」
必死に白衣の袖で涙を拭いている男。
そんな彼に彼女は満面の笑みを浮かべ、
「ありがとうございます」
と言った。
パリン。
男の眼鏡は、犠牲になったのだった……。
〜完〜
とはいかない。
コレは眼鏡は次のコマには復活している系小説である。
気を取り直して続きをご覧頂きたい。
「あのー、研究者さん?私は何をすればいいのでしょうか?」
少女の声でハッと我に返る男。
「え?ああ、あの小瓶の中身を……」
此処で彼は気付いた。
あの小瓶の中に入った液体は十中八九劇薬であると。
そして、既に彼は少女にベタ惚れである。
つまり、アレだ。
彼女が命を落とすくらいなら、
「俺が飲む!!!!!!!」
ぐい、と一気に飲み干した。
「え、ちょ、研究者さーん!?!?!?!?」
慌てる少女。
ぐらり、と傾く男の身体。
研究者さん!と必死に叫ぶ少女の腕の中で、幸せそうに男は呟いた。
「きみが生きていて、よかっ……た、」
すぅ、と雫が頬を伝って、床に落ちた。
〜完〜
なんて終わらせてたまるか。
茶猫はハピエン主義である。
「ってあれ、俺生きてる!?」
どうやら薬は完成していたらしい。
実験と称して、ルカと名乗った少女にも薬を飲ませた。
ふたりは、悠久の時を共に過ごしてゆくであろう。
〜完〜
……終われ。
コメント0
関連動画0
オススメ作品
それは、月の綺麗な夜。
深い森の奥。
それは、暗闇に包まれている。
その森は、道が入り組んでいる。
道に迷いやすいのだ。
その森に入った者は、どういうことか帰ってくることはない。
その理由は、さだかではない。
その森の奥に、ある村の娘が迷い込んだ。
「どうすれば、いいんだろう」
その娘の手には、色あ...Bad ∞ End ∞ Night 1【自己解釈】
ゆるりー
A1
幼馴染みの彼女が最近綺麗になってきたから
恋してるのと聞いたら
恥ずかしそうに笑いながら
うんと答えた
その時
胸がズキンと痛んだ
心では聞きたくないと思いながらも
どんな人なのと聞いていた
その人は僕とは真反対のタイプだった...幼なじみ
けんはる
誰かを祝うそんな気になれず
でもそれじゃダメだと自分に言い聞かせる
寒いだけなら この季節はきっと好きじゃない
「好きな人の手を繋げるから好きなんだ」
如何してあの時言ったのか分かってなかったけど
「「クリスマスだから」って? 分かってない! 君となら毎日がそうだろ」
そんな少女漫画のような妄想も...PEARL
Messenger-メッセンジャー-
「君へ続く軌跡」作詞作曲/駒木優
心のなかは空っぽで 何してても
頑張れずに
一つのことも成し遂げれない
自分が嫌になるよ 今も
当たり前も できない
僕を責めた いつだって
必死で 生きてるのに伝わらない
居場所が 奪われてゆく
声や視線が 雨のように...君へ続く軌跡_歌詞
駒木優
円尾坂の仕立屋
詞/曲 mothy
円尾坂の片隅にある 仕立屋の若き女主人
気立てのよさと確かな腕で 近所でも評判の娘
そんな彼女の悩みごとは 愛するあの人の浮気症
「私というものがありながら 家に帰ってきやしない」
だけど仕事は頑張らなきゃ 鋏を片手に一生懸命
母の形見の裁縫鋏 研げば研ぐほどよく...円尾坂の仕立屋
mothy_悪ノP
たまたま、巡り会っただけ
それだけなのに胸が苦しい。
寂しかったの?私の心 Oh
肩身が狭い、路上誘ってる
大人の獲物を見るめ
私は草食のお姫様
そんな生き方よ恥ずかしいでしょ
Ah そんな気持ちに水をさす
少し優しいようね、安心ね
今日は首を閉められないかな...逃避行「夢」線
SAURADAR_zip
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想