ここはとある部屋。部屋にあるベッドに一人の少女が寝ていた。年齢は恐らく10代半ば位だろう。髪の毛は長く、その色は緑とも青ともとれる。
しばらくすると、目覚ましがなる。その目覚ましに反応したのか、少女の目が覚め、手が伸びて目覚ましを止める。そうして少女は少し眠そうな表情だったが、時間を確認した後、素早く起きて、ブラシを手に部屋に置いてある姿見を見ながら、髪をとかし始めた。そうしてしばらく髪をとかした後、今度は髪留めを持ってきて髪型をツインテールにする。そうした後、手早く着替えて部屋を出て、台所に向かう。
台所には、すでに三人の男女がいた。
「あら、ミク、おはよう」
「ミク、おはよう。寝られた?」
「おはよう、MEIKO姉さん、KAITO兄さん」
ミクと呼ばれた少女が返事をする。
「ミク、おはよう。朝食はもうちょっと待ってね」
台所で調理をしていた桃色の髪の女性がミクに話しかける。
「分かった、ルカ姉。…コーヒーある?」
「はい」
そういってルカのかわりにコーヒーの入ったサーバーを渡すMEIKO。そうして自分の分のコーヒーを注ぎ、牛乳も足してレンジで温め始める少女。
彼女の名は初音ミク。ボーカロイドの一人である。そして、ミクがMEIKO姉さん、KAITO兄さん、ルカ姉と読んだのは、同じくボーカロイドのMEIKO、KAITO、巡音ルカである。
「…ミク、昨日の疲れは残ってないわよね?」
MEIKOが尋ねる。
「うん、MEIKO姉さん、大丈夫よ」
「…めーちゃん、ミクだってその辺りは心得てるよ」
「…そうだけどね」
(…本当は、もう少し寝ていたいな)
心の中ではそう思っているミク。しかし、バースデーライブを成功させるためには相応の練習が必要であり、その結果として今は睡眠時間を削る必要がある。そのことはこの場にいる全員が心得ていた。MEIKOが尋ねたのは、練習を含めた仕事に関しては万全な体調で取り組むべきというMEIKOの信念から反射的に出た言葉である。しかし、常に万全であることは難しいことはMEIKOも含めて心得ていた、そのため、万全を期すようにはしているが、無理な場合は臨機応変に次善策、三善策をとっている。
そう話していると、レンジに入れたカフェオレが温まったらしく、レンジから出して飲み始めるミク。
『おはよー』
すると、ミクより若い、黄色い髪の毛をした男女二人が台所にやってきた。
「リン、レン、おはよう」
カフェオレを飲みながらこたえるミク。二人はやはりボーカロイドの鏡音リンと鏡音レンである。二人はミクが机に戻したコーヒーの入ったサーバーから、コーヒーをマイカップに注ぎ、やはり牛乳を足して二つ一緒に暖め始めた。
「…マサ兄起きてないね」
コーヒーが温まるのを待ちながらつぶやくレン。
「…そういえばそうね。どうしたのかしら?」
「…おはようございます」
そうしていると、ミクよりやや年上の男性が入ってきた。体型は中肉中背、どこにでもいる感じの男性である。
「雅彦さん、おはようございます」
「ミク、おはよう」
ミクの言葉に笑顔でこたえる男性。彼の名は安田雅彦。ミクの恋人であり、現在はミクたち六人と一緒に住んでいる。
「雅彦君、今日はどうしたの?」
「今日は朝食当番ではなかったですし、早起きする必要もないですから、たまにはゆっくり寝ようと思ったんですよ」
「雅彦君は前まで大学の授業の成績の関係で忙しかったわよね?」
ルカが話しかける。
「そうですね。成績に関してはもう提出も終わっています。ですから気が緩んだのもありますね。後期の授業の計画を立て初めるのはもう少し先でも良いですから、今は比較的ゆっくりできる時期ですし」
そういいながら同じくコーヒーをマイカップに入れ、牛乳を入れた後、リンとレンのカフェオレが温まるのを待つ。二人がレンジからマイカップを出したのと入れ替わりに自分のカップを入れ、暖め始める雅彦。そうしていると、どうやら朝食ができたらしく、配膳を始めるルカ。手伝う他のボーカロイドと雅彦。そうしている間にコーヒーが暖まったらしく、朝食の準備が一段落した後でレンジから出して飲み始める雅彦。
「雅彦さん、ごはんはこれ位で良いですか?」
ミクが雅彦の分のごはんを雅彦のお茶碗に盛っていう。
「…うん、それでいいよ」
コーヒーを飲みながらミクがよそってくれたごはんの盛りを確認する雅彦。そうして自分の席に着いた。他の六人も定位置の席に着いた。
『いただきます』
そういって朝食を食べ始める七人だった。
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