ホッと安堵の息を吐いて抱きついてきた大切な存在は俺のことを信じていて、そんなこの子をまた傷つけようとしている自分にどうしようもなく怒りがわいた。
けどさ、この子を手放す未来、その方が後悔は少ない。
そうだろう?
思った俺は臆病者なんだろうか…。
【小説】堕ちた天使と悪魔の囁き7
表向きはいつも通り二人で優しい風に吹かれながら散歩して。
その間彼女は離れていた間の事をぽつりぽつりと話してくれた。
姉たちの事を話しているときは辛そうだったけどそれでも俺と居たい、そう締めくくり幸せそうに笑んだ彼女に心がグラつく。
もう一度離れるんだと決めたはずなのに優柔不断過ぎる。
「レン君?」
軽く思考に沈んでいたのに気づいたんだろう。
軽く手を引かれ顔を上げる。
「ん、どうしたの?ミクちゃん」
「何考えてたの?私と居るのに」
頬に触れ首に回りかけた腕を取り不自然にならないように離させてその指先に唇を寄せる。
「何って君のことに決まってるでしょ?」
ああ失敗した。
ベタすぎる言い訳だったか。
小首を傾げた彼女は不満そうな顔をする。
やっぱり今が離れ時かもしれない。
これ以上はマズい。
リミットが近づいてきている。
別れる以前よりも天使らしくなくなっている彼女にそう確信する。
「そんな顔しないでよ。君と話したら安心したのかな?気が抜けちゃったみたい。今日はもう戻るよ。ミクちゃんも今日の所はうちに戻った方がいいんじゃない?みんな心配してるだろうし」
ほら早く戻って。
そしたら俺は消えるから。
君の居ない遠い場所消えれば俺も君も諦めつくんでしょ?
「…や」
「え…?」
「嫌…戻りたくないわ」
「ミクちゃん、ワガママは…」
「だって!今のレン君と離れたら…もう会えなくなりそうなんだもの!そんなの嫌!」
離れないのだと言うように俺の服を握りしめて見つめるその目には様々な感情が入り交じっている。
「私は決めたのよ。貴方と生きていきたい。何を手放しても貴方とは離れたくない!…何回言えば信じてくれるの…」
『悪魔を愛すると決めたらある程度は覚悟を決めているはずだ。たぶん彼女もね』
そんな兄さんの言葉が思い出される。
いつもふわふわしてて心配だった彼女なのにいつの間にか覚悟を決めた目でこちらを見ている。
俺は…。
伸ばしたくなる手を力の限り握りしめる。
けれどその努力をふいにするように
「私は貴方を愛しているの…レン君」
「ミクちゃん…」
覚悟が足りなかったのは…彼女を未来ごと背負う自信がなかったのは俺の方。
これはもう腹をくくれという事か。
俺ただ一人を求める彼女とならどんな未来でも進んでいけるんだろうか…?
不安も何も考えられたのは一瞬で彼女の腕が今度こそ俺の首に絡む。
ああもう…悔しいな、君が居ればもう何もかもどうでもいいなんて。
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