やっと、着いたんだ。
 ここに。
 ヘッドフォンから声はうんともすんとも聞こえないけど、きっとここに間違いない。
 そして――私は目を疑った。













「素晴らしい、貴音! 今はエネと呼ぶべきかな?」

 一番会いたくない、目を見たくもない人間の姿がそこにはあった。
 白衣を着たそいつはニヒルな笑いを浮かべ、目の前の透明な壁を軽く叩いた。

「実験は成功と見てよろしいですかね。Mr.楯山?」
「……だな」
「では、これを」

 隣にいた部下と思しき人間が何かを取り出した。
 それは――おもちゃみたいな爆弾だった。

「見たまえ、エネ。これが――きみが生まれ、暮らし続けた街の姿だ」

 その言葉を聞き、私は振り返った。










 そこにあったのは、透明な壁に包まれた立方体だった。
 しかも、今までいた人間は人形みたく、動いてはいなかった。
 ここは……箱の中の世界?
 箱庭?
 燃え尽きていく街だったものをただ、呆然と見る耳元で――ヘッドフォンの向こうから、小さくすすり泣いているような声が聞こえた。





「ごめんね…… ごめんね……」



ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

カゲロウプロジェクト The animation 第二話③

a headphone actorⅢ

閲覧数:251

投稿日:2012/08/23 00:03:31

文字数:499文字

カテゴリ:小説

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