「海斗先生…」
愛が、真っ直ぐに海斗先生を見つめる。
「………愛さん。」
長い沈黙の後、海斗先生が口を開いた。
「僕は、生徒を恋愛対象にはしない。」
真面目な顔で、海斗先生はそう言った。
愛が、その返答を予想していたかは分からないが、少し傷ついた顔をした。
「ありがとうございました。」
そう言って、彼女は走り去った。
『…』
告白の一部始終を見ていた2人は、しばらく言葉が出なかった。
凛としては、まるで未来の自分を見ている気分でいた。
自分も海斗先生に告白したら、こうなると思うと、自分が振られた訳でも無いのに、泣きたくなるのだった。
未来は、告白現場を見てしまった罪悪感と、凛の反応を見て、心配になった。
「…未来姉ちゃん。」
最初に口を開いたのは凛だった。
「私、今日は帰る…」
「…そっか。」
「…私も、ああなるのかな…」
凛がボソッと呟いた。
「先生と生徒じゃあ…そうなるかもね。」
未来は、そう言うしか無かった。
あの現場を見ていなければ、励ますことは簡単だったかもしれない。
しかし、海斗先生の『僕は、生徒を恋愛対象にはしない。』と言う発言を聞いてしまった以上、生徒である凛のチャンスは、確実に0に近いことが分かってしまった。
こうなっては、励ました所で、むしろ傷口に塩状態。
だから未来は、現実を言うしか無いのだ。
*****
「…ただいま。」
「凛、おかえり。」
玄関では、蓮が出迎えてくれた。
「…」
「…どうした凛?元気無いぞ?」
リビングに移動しながら、蓮が聞いた。
「ねぇ、蓮。高等部の愛先輩って、知ってる?」
凛が愛の名前を出した瞬間、蓮の態度がおかしくなった。
「えっ!?め、愛先輩!?」
「知ってるの?」
「あ、いや、えっと、その…」
「…ははーん。蓮、愛先輩が好きなんだぁ?」
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「えーっ!?ウソ?ホントなの?」
「べ、別に!?ただ、いい人だなって…」
「いい人の名前で、こんなに顔赤くなるのかなぁ?」
「うっ…」
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「いやだ!!」
「あっそ。じゃあ、明日学校で、蓮の恥ずかしい秘密バラしちゃおうかなぁ~」
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「じゃあ話して。」
「…あれは、1週間前の朝…」
☆★☆★☆
「ヤベぇ、遅刻寸前!」
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「えっ?」
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彼女は、蓮の腕を掴んで走りだした。
「えっ、あ、ちょっと…!」
「私に任せて!」
しばらく走っていると、いつの間にか正門前だった。
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「じゃあ、私はこれで!」
「あっ、あの…!」
「?」
「アナタは一体…?」
「私?私は、高等部の愛。君の先輩だよ!じゃあね!」
☆★☆★☆
「…っていう…」
「へぇ…それで?」
「それでって…その後は何も…っていうか、何で凛が愛先輩の事知ってるんだよ。」
「…今日ね、未来姉ちゃんと一緒に見ちゃったんだ。その愛先輩が、海斗先生に告白する所…」
ゆっくりと、凛が蓮の失恋の真実を告げる。
「えっ………」
「しかも、愛先輩、振られちゃったんだ。」
「…」
蓮は、失恋の事実と、愛の告白が失敗した事に対する安堵で、脳内パニックを起こしていた。
「え…愛先輩が、海斗先生に告白…でも失敗…」
「ちょっ、蓮!魂抜けてる!」
「…」
蓮は、放心状態に陥った。
「そんなにショックか…」
「凛だって、海斗先生に振られたら悲しいだろう!?しかも、他に好きな人が居たら尚更!!」
「そうだけど…!」
「今まさに俺はそれなの!…しばらく1人にしてくれ…」
そう言って、蓮は自分の部屋に入っていった。
凛は、もしも海斗先生に振られて、しかもその海斗先生に、他に好きな人が居たら、と想像した。
〈相手だったら…明衣子先生かなぁ…綺麗な先生だし、海斗先生と並んだら絵になるっていうか…ん?明衣子先生?〉
凛は、ふとある事が引っ掛かった。
「そういえば、最近海斗先生と明衣子先生のツーショット、たまに見るけど…もしかしたら…」
凛は、その疑問を振り払おうとした。
しかし。
〈でも気になるし…〉
「ウジウジ悩んでもしょうがない!未来姉ちゃんと一緒に、明日調べてみようっと!」
凛は、決意を固めた。
【鏡音リン】恋しちゃダメ! 第4話『蓮の秘密』
第4話です。
今回は、初登場はいません。
蓮の片想い、1週間で破れたり(笑)
凛は、2人の関係を疑い、調査を始める事に。
どうなる凛の恋!
そして2人の関係はいかに!
次回をお楽しみに。
後、これからは不定期更新になります。
私、学生だから色々忙しくなるので、不定期になります。
楽しみにしてくださる方が居たら、誠に申し訳ございません。
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