1月5日 今年の主役
「やぁ、めーちゃん。今年はめーちゃんの年だねー」
「なにそれ? 去年ならまだわかるけど……」
買い物に出た先でばったりと出逢ったKAITOの言葉に、MEIKOは訝しげに首を傾げた。去年なら、V3が発売されたり10周年の節目だったりしたから、そんな風に言われるのもわかるが。今年はむしろ、V4の発売が控えているルカの年ではないだろうか。そう言うと、違う違う、とKAITOが手を振った。
「そうじゃなくて、いや、確かに去年もめーちゃんの年だったけど、俺が言いたいのはそういうことじゃなくて。今年はほら、未年だからさ。めぇ~ちゃん、って」
「オッサンか。寒いわよKAITO」
「酷い! それにほら、何だっけ、ひつじさんのルームウェアな衣装持ってたじゃないか」
「あー、アンタはオサカナだったあれね」
「俺の事はいいからー!」
いいじゃないか、おさかなも可愛いじゃないか。などとぶつぶつ続けるKAITOだが、それでいいのだろうか、とMEIKOは思う。そもそも可愛い系でいいのか男子、その方向性に異論はないのか?
「とにかく、だよ。今年も頑張ろうね、めーちゃん」
「強引にまとめたわね……ま、いいけど」
「よし、じゃあ今年の主役なめーちゃんにケーキを買ってあげよう! めーちゃんカラーな赤いいちごがのったやつね」
「またよくわからないことを……」
何故かウキウキと張り切るKAITOに半ば呆れつつ、けれどその申し出はありがたく受けることにした。理由が何だろうとケーキは歓迎である。
「じゃあ私はお返しに、……えーと何がいいかしら。青い……ソーダバーでいい?」
「嬉しい、けど寒い!」
「コタツで食べなさいコタツで」
そんなくだらない雑談を交わしながら、かわらない日常を楽しみながら、ふたりは揃ってカゴを持ち、スーパーの中を見て回った。そもそも買い物に来たのである。お互いマスターの夕食を用意しなくてはいけないのだ。
「ねぇめーちゃん、今日ごはん一緒にしない? 寒いからナベにしたい」
「それはいいわね。マスターに連絡しておきましょう。うちでいい?」
「うん、めーちゃんお酒飲みたいでしょ」
すっかり慣れた遣り取りで、ふたりで決めて、笑い合う。
「ねぇ、めーちゃん。今年も、よろしくね」
「えぇ、KAITO、よろしくね」
赤い苺のケーキをカゴへ入れながら、ほんの少し改まって、今更ながらに新年の挨拶をした。
今年も、良い年になるといい。
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