一方、こちらは沢口の病室。沢口の部屋は変わっていなかったが、沢口の腕には様々な液体が入った袋からのびたチューブが何本も刺さっており、さらに身体の状況を常時モニターできるように機器が接続されている。さらに、沢口の口にも人工呼吸器が装着されている。
(もう…、私も長くないな)
そんなことを考える沢口。数日前、意識をしっかりと保ったまま、ここまで長い期間意識を保ったままなのは奇跡だ、と主治医にもいわれている。そんな状況なら、恐らくもう少しすれば沢口自身は意識を失ってICUに入ることになるだろう。
(…私はどうすべきかな)
そう考えて、真っ先に雅彦の顔が頭に思い浮かんだ。恐らく、長年生きてきた中で、もっとも自分が素直になって接することができた存在だろう。雅彦と色々と話せたことは、沢口にとって貴重な財産である。雅彦に対して、恐らく自分は何か遺さねばならないだろう。そうして考えていると、次にミクの顔が浮かんだ。ミクもやはり自分が素直になって接することができた存在である。雅彦と一緒にいる姿は、微笑ましかったし、二人と一緒にいることで癒されもした。本当にあの二人には、どれだけ感謝してもしきれないだろう。
(私は、あの二人に伝えねばなるまい)
そんなことを考えながら外を見る沢口。外は相変わらずの景色だったが、この景色もあと数日で見ることができなくなるだろう。そう考え、沢口はその景色をしっかりと目に焼き付けた。そうやっていると、ノックの音が聞こえた。
「失礼します」
「どうぞ」
部屋に看護士が入ってきた。見回りの看護師である。その看護師は身体をモニターする機器の前に立って、携帯端末に何事か入力している。看護師に関しても、沢口に対する見回りの頻度は増えている。
「あの、すいません」
看護士が携帯端末にデータを入力し終えたあとで、沢口は看護士に声をかけた。
「はい、何ですか?」
「ちょっと連絡をとりたいところがあるんですが」
「どちらにですか?」
「安田雅彦さんの所です」
「安田教授の所ですか?分かりました。それは急ぎますか?」
「いや、そこまで急いでいないです。今日中であればいいです。ですから、見回りが終わったあとで良いですよ」
「分かりました。それでは、他の患者さんの見回りを終えてから、またこちらに来ます」
「すいません」
そうして、看護士は出て行った。看護士が出て行くと、沢口は再び景色を目に焼き付ける作業に戻った。
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