「ただいま…」
8月30日の23時近く、一人の"初音ミク"が自分の家に帰ってきた。彼女はワンオフの初音ミクである。間近に控えた初音ミクのバースデーライブの公演の練習のため、連日遅い時間まで練習であり、それはこの日も例外ではない。
「ミク、お帰りなさい」
そのミクを、ミクよりやや年上に見える男性が笑顔で出迎える。彼の名は安田雅彦。ワンオフのミクの恋人である。他の5人はワンオフのミクのバースデーライブに出演予定で、翌日の練習に備えて既に寝ており、バースデーライブに直接関係のない彼がワンオフのミクの帰りを起きて待っていたのだ。
「夕食は用意してあるから」
「雅彦さん、ありがとうございます。先にお風呂に入ってきます」
「分かった。ミクがお風呂から出たらすぐに食事できるようにしておくよ」

そして、8月30日23時55分、ワンオフのミクは8月31日0時になった瞬間に投稿されるであろうバースデーソングを待っていた。既に夕食や風呂を済ませ、パジャマに着替えて、曲を聴き終わった後にすぐに眠れる状態である。バースデーソングを待つ表情は、自らへのバースデープレゼントを楽しみに待つ、どこにでもいそうな一人の16歳の女性だった。
そして、8月31日になった瞬間、ホワイアンスPのバースデーソングはアップされた。すぐに動画にアクセスして、その曲を聴くワンオフのミク。バースデーソングはミクを祝福する内容であり、彼女の過去、現在、そして未来を歌った内容だった。

『『初音ミクさん、誕生日おめでとうございます』』
曲が終わった後、曲を歌っていた全てのミクから、祝福の言葉が発せられる。
「皆さん、ありがとうございます」
その動画に対して一礼するワンオフのミク。そしてもう一度動画を最初から見る。そして二度目を聴いた後、動画を閉じて静かに自らのベッドに向かう。今年は類似の企画が歌以外も含めて多数存在しているのはワンオフのミクも知っており、彼女の恋人である雅彦が情報を公開されている範囲で追っていて、雅彦がまとめた情報はワンオフのミクも共有しているので、現時点で閲覧可能な作品を全て鑑賞することは可能であるが、間近に迫ったバースデーライブへの影響を考えると、このタイミングで全て見ると睡眠時間が著しく損なわれ、彼女自身のパフォーマンス、ひいては直近に迫ったバースデーライブへの悪影響は免れない。妥協点として、このタイミングではバースデーライブに出演するホワイアンスPの曲のみを聴いて、他の作品は後日鑑賞すると彼女自身が決めていたのだった。眠りについた彼女の表情はとても幸せそうな表情だった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

初音ミクとバースデーソング 11節

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投稿日:2017/08/31 00:01:23

文字数:1,088文字

カテゴリ:小説

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