無色透明の液体が入った壜を目の前にかざし、カイトはそれを見つめた。
まるでシロップかなにかのようなそれは毒だった。
蓋を開け、テーブルに用意しておいたグラスに毒を数滴入れた。
致死量に満たない量の毒を、ワインに入れた。これならば、彼女は死なない。だけど、これをミクに与えれば、カイトがミクを殺そうとした事実が作れる。
自分を殺そうとした男を当然、ミクは嫌うだろう。ミクは、カイトから離れてゆくだろう。
囚われている鎖から逃れなくてはいけない。
話があると、ミクを呼ぶと、程なくして彼女は部屋に姿を現した。その表情は微かに強張っており、否応なくカイトに昨夜の事を思い出させる。
「昨日の夜は、すまなかった。」
そうカイトが謝罪すると、ミクは首を大きく横に振った。
「いいの。怒ってないわ。ちょっと動揺しただけよ。」
ふと表情を和らげて表情でミクはそう言う。そのまま、ミクを椅子に座らせてカイトはワインの用意をした。
ワインの封を切り、毒を仕込んでおいたグラスに注ぐ。
「ねえカイト。ハツネって誰?」
不意に、ミクがそう尋ねてきた。驚き、カイトが手を止めると、ミクはどこか思いつめた表情でカイトを見つめてきた。
ミクにハツネの事は話していなかった。代わりにしている。という後ろめたさから、話すことが出来なかったのだ。何故知っている?とカイトが問うと、召使達から聞いた。と言った。
「今はもう亡くなっている、私に良く似た女性だった。って聞いたわ。ハツネは、カイトにとって何だったの?」
「好きな人だったよ。」
必死な様子のミクに、カイトは思わず微笑を浮かべて答えた。
「ずっと傍にいて、守りたかった人だ。」
そう言ってミクにワインを差し出す。それを受取ったミクはしかし、口をつけず、じゃあ。と悲痛な声を上げた。
「私は、ハツネの身代わりなの?カイトは、私の事が好きではない?」
今にも泣き出しそうなミクのその様子に、カイトはしかし、喜びを感じてしまっていた。
ミクは、本当に自分の事がすきなのだ。と言う喜び。
「ミクの事が好きだよ。」
そうカイトは静かに告げた。
「ハツネの代わりではなく、私を?」
「ああ。全てを手に入れてしまいたいほど、ミクの事が好きだ。愛している。」
そうカイトが告げると、ミクは不安げな表情から一変して笑顔になった。本当に嬉しそうに、まるで花開くような、美しい笑顔だった。
もうこれでいい。とカイトは思った。この後、彼女に嫌われてしまい、この手に触れることさえ叶わなくなっても、これでもう充分だ。
ミクは嬉しそうに微笑んで、手にしていたワインを飲んだ。カイトにハツネの事を聞くので、ひどく緊張していたのだろう。ミクは一息にワインを飲み干した。
びくり、とミクの細い身体が一度痙攣をする。そして、カイトの目の前で、そのまま崩れ落ちるようにミクは昏倒した。
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