※諸注意
何年も前に書いたテキストの続編です。
まずは前作をお読みいただくことを推奨します。
こちらhttp://piapro.jp/antiqu1927の投稿作品テキストより。
・カイト×マスター(女性)
・妄想による世界観
・オリキャラ満載
・カイトは『アプリケーションソフト・VOCALOID・KAITO』の販促用に開発されたキャンペーン・イメージロイド(?)機械的な扱い、表現を含む
・女性マスターの一人称が『オレ』
恐らくツッコミ処満載ですが、エンターテーメントとして軽く流して楽しんで頂けると幸いです
上記が許せる方は、自己責任で本編へどうぞ
☆☆☆☆☆☆☆
SIED・KAITO
「マスター、着替えてきましたよ、」
「おおー、お帰り!よかった、水着似合ってるなぁ、…気に入った?」
「ええ、ありがとうございます、」
急いで戻ってきた俺の姿を見て、マスターが目を輝かせる。淡いブルーの色合いも、幾何学的な柄も、シンプルなデザインも、とてもいいと思う。
マスターが選んでくれたんだ、間違いなんかあるはずがない。
俺は彼女の隣に座ると、戻ってくる途中で買ってきたペットボトルを渡した。マスターは紅茶ならストレート、コーヒーならカフェラテと、好みが決まっている。今日は暑いし、さっぱりした炭酸飲料がいいだろうと、サイダーを選んだ。
「あの、これ…どうぞ、」
「あ、気が利くなー、ありがとう、」
どうやらこの選択は正解だったらしい。嬉しそうに飲むマスターに目を細めていると、唇の端から細い筋が流れた。
「んっ!…ちょっと零しちゃった、」
…一瞬、その滴を舐め取りたいと思った俺は、どこか異常なのだろうか。
「あ、そだそだ、」
「どうしたんですか?」
ふと思い出したように、マスターが傍らのバッグを漁りだした。彼女が何か動きを見せると、ついつい気になってしまう俺は、その手元をのぞき込む。
「日焼け止め塗らなくちゃ。オレ、日焼けすると真っ赤になって痛くなるからさー、」
…これは何かのフラグですか?
「ごめん、ちょっと遅くなって……って、な、何してんの(汗)」
「おー、お帰り。いや、どうしてもカイトがヤリたいって言うからさ…、」
俺はマスターの短パンから延びる柔らかい太腿から手を離すことなく、戻ってきた正隆さんに顔を向けた。マスターの繊細な肌を有害な紫外線から守るのも、大事な俺の役目なのだから。
「お帰りなさい、」
「…もしかして僕、帰ってこないほうが良かった?」
はい、そうですね。…と、思ってもさすがに声には出さないが。
「何言ってるんだよー、それより折角来たんだし、二人ともちょっと泳いできたら?」
「そうだね、こんな機会そうそうないし、行ってこようかな、…カイトはどうする?」
「俺はマスターの傍にいます、」
これ以上に有意義で有効な時間の使い方はないだろう。いや、むしろこれ以外の選択肢はない。
「あー…愚問だったか、徹底してるね。じゃ、30分くらいしたら戻るから、」
「ん、いってらー、」
正隆さんにひらひらと手を振るマスターの手を捕まえて、俺はその二の腕にも日焼け止めを塗り広げていった。
☆☆☆☆☆☆
「マスターは、海に入らないのですか?」
再び二人きりになれた喜びが顔に出てたのか、俺を見てマスターが笑う。ああ、やっぱりこの笑顔が大好きだ。
「あー…あのね、ここだけの話、本当はオレ…泳げないんだよね、」
内緒にしといてと、少し恥ずかしそうにはにかむと、上目遣いで指を唇に当てる。…あなたは俺にエラー起こさせたいんですか?
「でも、海好きなんですよね?」
「うん。海と空、視界いっぱいに広がる青を、何にも考えないでぼーっと眺めるのが好きなんだ、」
膝を抱えるように座り直したマスターの視線を追って、前方を埋め尽くす青に目を向ける。
でも好きだという割には、彼女の声に寂しさのような響きが滲んでいるのが気になって、すぐにまた視線を戻す。
「そうなんですか…、」
「あとね、音が好き、」
「音…?」
小さく呟かれた言葉に、思わず聞き返した。
「繰り返す波の音を聞いていると、凄く落ち着くんだよね…。不安も焦燥感も悩みも、頭の中ぐるぐるするものが全部溶け出していくような、」
「マスター?」
いつの間にか表情を無くし、吐き出される独り言には何の感情も感じられない。
ごくたまに垣間見せる、遠くはない過去の傷跡。そこからじわりと這い出す褐色の闇。
でも、それもほんの一瞬で、すぐにまたいつもの笑顔になる。
隠そうとしているわけでも、無理をしているわけでもない。
素早く切り替わる回路は、彼女自身が壊れてしまわないようにと、無意識に作った安全装置だ。
多分、マスター本人も気づいてはいないだろうけれど。
だから。
「オレの意識と波の音が混ざり合って、流されて消えていけるような感覚、…気持ちいいんだ、」
空を仰いで大きく息を吸い込むマスターに。
「…駄目ですよ、」
俺はわざと耳元に唇を寄せ、拗ねた声色を震わせ囁き、甘える。
「ん、…カイト?」
身をよじり、反射的に逃げそうになる彼女の身体を抱きしめて肩口に頬を擦り付けた。
「駄目です、マスターの奥深くまで入り込んで、その意識を蕩かしていいのは…俺の声だけです、」
世界に溢れるどんな音よりも、あなたの全てを満たしたい。抱えた闇も丸ごと全部、あなたが愛しいから。
「何だよー、海にやきもちか?」
「ええ、あなたを魅了するものは、全部俺の敵です、」
…あと、さっきからこっちを伺っている正隆さん、あなたもですよ(睨)。
「あー、えっと…浮き輪取りに戻って来たんだけど…ごめん、」
本当にいつもタイミングが悪い人ですね…。
その③へ続く
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