流れだした曲はワルツ。
昔、婚約者と踊った曲。
父親に『あの国が滅びた』ときいた。きっと、婚約者の姫も死んでしまったのだろう。
「お手をどうぞ。お姫様。」
「か、からかわないでください!」
ワルツは何回も練習した。
まぁ、舞踏会なんて出ても踊る気なんてまったく無かったんだけどさ。
「曲、終わっちゃいましたね…。踊ってくれてありがとう。」
そういって、彼女は嬉しそうに笑った。
・・・。どうやら、僕は彼女に恋をしてしまったらしい。
人を好きにならないって決めてたんだけどなぁ……。
「じゃ、じゃあ、そろそろ父が呼んでいるので………。」
「あっ、待って!」
「えっ?なんでしょうか?」
「後で、テラスに来てくれる?」
「………。後でって言われても…。時計とか無いですし…。」
「あっ、そっか………。じゃあ、5曲ぐらい終わる頃でどう?」
「はいっ!それでは、また後で!」
彼女は一人の男の元へ走っていった。
たしか、あの男は王に不満を抱いていたはず…。なぜあの男がここへ…………?
「王子、王様がお呼びですよ?」
「ああ、ありがとう。」
大臣に礼をいい王の元へと向かった。
「失礼いたします。」
「おお、レンか。入りなさい。」
はっきり言って、父と話すのはあまり好きじゃない。
「レン、さっき踊っていた少女は誰だ?」
「知りませんよ。向こうから誘ってきたんですから。」
「好きになったか?もしよかったら婚約者になるように説得してきてやろうか?」
「まったく、口を開けばそればかり。だいたい、なんでそんなに婚約者にこだわるんですか?」
「婚約者の国が滅びてからずっと落ち込んでるからな。そんなに相手のこと好きだったか?」
「ああ、好きだったよ。次は失いたくない。だから、人を好きにならないって決めたんだ。」
「そうか…。まぁ、急ぐこともないだろう。でもそのうち、結婚はしてもらうぞ。跡取りに困るからな。」
そういって、父は大声で笑った。
「あ…。」
「どうした?レン?」
「あの国が滅びた理由って分かりますか?」
「それは・・・。よく分かっていないんだ。」
「そう……です………か………。何か分かったら教えてくれませんか?」
「ああ。約束しよう。それじゃ、会場に戻ってなさい。」
「はい。それでは、失礼しました。」
会場に戻りテラスの方をみると彼女が待っていた。
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