引き裂かれ掻き毟り猫のように
もとに戻らなくなるまで喚いては逃げた
そうしてなにかが出来上がるわけじゃないのにね
あなたは黙ってそれを見ていた
謝らないにべもない
許したように見えるけど知らない
静かに片付けを始めている
部屋を出ていくときに頭を撫でていく
約束は守るのに約束で縛らない
不思議そうに見つめていると一言
「すでに時間が私を縛っているから」
少し笑いながら小さく呟いたんだ
か細い声の糸が私を縛っても
あなたはもうそれを知ることはない
張り詰めて悪あがき犬のように
枷が外れなくなるまで吠え声を上げた
そうして誰かに出会えるわけじゃないのにね
あなたは静かにそれを見ていた
からかわない悔いもない
根ざしたように見えるけど知れない
わずかに呼吸を弾ませてる
部屋に入るときに耳元なぞってく
感情は慕うのに感情で動かない
おかしそうに見つめていると一言
「いまも心配であなたを祈っているから」
少しかしげながら小さくぼやいたんだ
か弱い音の夢を私が纏っても
あなたはもうそれを見ることはない
だからってあんな言い方ないよ
気になってしょうがなかったんだ
抑えきれないまま口にしてしまう
一度だけ正確に叱ってくれたよね
心を丸ごと抉るようにしてさ
知らなくてもいい一番星のこと
覚えなくてもいい花言葉のこと
口にしなくてもいい魔法陣のこと
いてくれたらいい我儘なこと
記念日をカレンダーごと燃やした
だってどうだっていいんだから
約束は守るのに約束で縛らない
不思議そうに見つめていると一言
「すでに時間が私を縛っているから」
少し笑いながら小さく呟いたんだ
「切れ端は拾ってね」聞こえないふりをした
ほどいてほしかったのを見捨てたんだ
巻き戻せない時間は切り裂こう
そのためにここに来たんだから
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