暗い…暗い……
amazonの倉庫に眠らされていた私に
明るくて、凄く元気な声が聞こえた。



…ソプラノ?





「…ぇ…、姉さ……姉さんっ!!姉さん!!」
起きて!、とツインテールの少女に起こされた。



【全部夢 全部声 全部希望】




「こんにちはっ!初音ミクでーすっ!初めまして、姉さん!」
大きな声で私の眠りを妨げる。

…初音ミク?
データによると、キャラクターボーカル(CV)シリーズ第1段の……。
どうやって此処に…。

「…む。姉さん!起きてくださいよぉ!折角マスターに無理言って来たのにぃ!」

まだ私は眠るべきだ。
第六感がそう叫んでいる。
暫く黙っててはくれないのだろうか。

少女は何のために無理をしてまで此処に来たのだろう。
薄らと開けていた眼を瞬きしながらも開いてみる。

「あ、起きたぁ!」

「…ん、ぅ。……一体、何?」
まだ眠い。
用事は早く済ましたいものだ。

「さーて、CV第3段『巡音ルカ』姉さん!我が家へ、ごあんなーいっ♪」

「は?」

「さぁ、行きますよぉっ!」

「ちょ…まっ、嫌ああぁぁぁっっ!!!」

無理やりに手を引っ張られ
寝起きの重い体を引きずる。







0と1の世界の中を音速で飛ぶ。
感触は分からない。
よく分からない感覚が体を駆け巡る。

うーん。
存在自体も不安定なのに、この加速は危険だと思う。
amazonに戻ったほうが安全なのではないだろうか。
それに、まだ眠いのに。
だけど、少女の楽しそうな笑顔をみていると、何だか断る気も失せてくる。

どうせ、此処まで来てしまったのだ。
帰り道も分からないのだから、この少女について行くしか選択肢はないようだ。

「さぁ、着くよ!」






一瞬辺りが真っ白になった。
モノクロの幻想。
音が聞こえない。
何も見えない。
ただあるのは白い空間。

ビックリして、瞬きをすると
元の感覚が戻ってきた。
見える景色もカラーになった。



だが
立っている場所は
可愛い、ふわふわとした感じの
小さな家だった。

目の前の赤いドアを
バタン!と少女は開ける。

「たっだいまー!」
家でもこのテンションなのかと
何かと家族の人がかわいそうに思えてくる。

「あ、おかえり。」
マフラーをした、全体が青で統一されている
優男が出てきた。

冬だというのに、ハーゲンダッツアイスクリームを黙々と食べている。

マフラー≒アイス

(寒いのか寒くないのかどっちかしてくれ。)




「ただいま、カイト兄さん。」
にこ、と少女は笑う。

…カイト?あぁ、『KAITO』か。
初音ミクの波のお陰で
ぐん、と売り上げが伸びたとか伸びなかったとか…。



「え…えーと。ミクちゃん。この人は?」
私のことを珍しそうに眺める。

「もう!兄さんったら。この人は『巡音ルカ』さん!ほら、CV3の……」

「あぁ、そうかそうか!ご、ごめんねぇ……。そういえば、マスターが言ってたよね。」

少女からは姉にあたり、優男の青年からは妹にあたる。
不思議な感じ。

「あ、えと。立ち話もなんですから、どうぞ。入ってください。」
えへ、と青年は笑う。

「…どうも。」
少し緊張。





部屋の中はまるで異空間だった。
見た目はとても小さな家だったのに、中はとても広かった。

(電脳世界……。よく出来た物だな。)


「「いらっしゃーい!」」
二人の少年・少女が出迎えてくれた。

私の妹・弟にあたる。
CV2の……

「鏡音リンでーす!」
「鏡音レンでーす!」
と、二人は手を差し伸べてきた。

「よ…よろしく。」
少し不安げに私は二人の手を取る。

…あったかい。



「「ねぇねぇ、一緒に3時のおやつ食べない?」」


時刻は3時。
一般的におやつの時間ということか。

(…あれ?あの青年はアイスを食べてはいなかったか?)
考えることをやめた。


「「兄さん!兄さん!メイコ姉さんも呼んで、おやつにしよう!」」
二人はぴょんぴょんととび周り、青年に頼む。

「…うん。そうだね。ルカちゃんも一緒に食べよう。」
ルカちゃん呼ばわりか。

「「じゃあメイコ姉さん呼んでくる!」」
と、二人は異空間の扉を開けた。





イスにすわる。
テーブルは私のせいで少し狭くなった。

(こういう時に異空間の性能は使わないのだろうか)


「「メイコ姉さん呼んできたよ!」」
と、二人が戻ってきた。


「う……まだ、二日酔い。うぇ……」
どこぞの親父かと思った。


赤で統一された見た目には
似合わず、酒瓶を持って現れた女性。

メイコ。『MEIKO』
KAITOが世に出回る少し前に出来た
…とか。

「あ…あぁ、始めまして。MEIKOです。よろしうぇっ……」
急いでトイレに駆け込む女性。

トイレの扉の向こうからはおろろろ…と声が聞こえる。
全員はそれを無視して、おやつを配り始めた。

「今日のおやつはケーキでーす。」
わぁ、と歓声が上がる。

「ミクは、ミクは!ネギケーキ!!」
そんなのあるのか。

「はい、どーぞ。」
青年は少女に渡す。

双子の少女と少年にもケーキを。

青年の自分の分はやはり、アイスケーキ。
(なんだろう、この人は……)

女性が座る場所にもケーキとぽつんと。


「えーと、ルカちゃんの好みってまだ分からないから、ノーマルなチョコレートベイクドチーズケーキでいいかな?」

「あ、はい。」
…ノーマルか?


トイレから女性が戻ってきた。
「ふぅ。やっぱり、飲みすぎ注意ってやつだねー。」
イスに座り、全員がそろったようだ。


「では。」



いただきまーす!






end


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

全部夢 全部声 全部希望

巡音ルカとヴォーカロイドファミリーの出会い。
まったりほんわか小説。
感想良かったらお願いします^^

閲覧数:637

投稿日:2009/01/24 12:06:59

文字数:2,380文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

  • 関連動画0

  • reno

    reno

    ご意見・ご感想

    ほんわか小説上手く書ける人が羨ましい。
    これはブックマークしてたまに読みに来て勉強せねばなりません。
    有難うございました

    2009/10/03 11:35:59

  • 時給310円

    時給310円

    ご意見・ご感想

    雰囲気を大切にして、丁寧に書かれたお話ですね。
    無駄のない簡潔な文章が書けるのは羨ましいです。自分はいつも書き出すと無駄に長くなってしまうので……(苦笑)
    ほのぼのできました。また何か書かれましたら、読ませて下さい。

    2009/01/25 01:26:45

  • ひやた

    ひやた

    ご意見・ご感想

    初めまして、新着からきました。

    ちょっと緊張気味のルカさん可愛いなーと思いました、
    カイトやミク達に囲まれた温かいお話が素敵でした
    自分はボカロ持ってませんが、本当にルカさん迎えたらこんな感じで喜ぶのかなと思いました。
    あったかいお話ありがとうございました^^

    2009/01/24 22:37:45

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