暗い…暗い……
amazonの倉庫に眠らされていた私に
明るくて、凄く元気な声が聞こえた。
…ソプラノ?
「…ぇ…、姉さ……姉さんっ!!姉さん!!」
起きて!、とツインテールの少女に起こされた。
【全部夢 全部声 全部希望】
「こんにちはっ!初音ミクでーすっ!初めまして、姉さん!」
大きな声で私の眠りを妨げる。
…初音ミク?
データによると、キャラクターボーカル(CV)シリーズ第1段の……。
どうやって此処に…。
「…む。姉さん!起きてくださいよぉ!折角マスターに無理言って来たのにぃ!」
まだ私は眠るべきだ。
第六感がそう叫んでいる。
暫く黙っててはくれないのだろうか。
少女は何のために無理をしてまで此処に来たのだろう。
薄らと開けていた眼を瞬きしながらも開いてみる。
「あ、起きたぁ!」
「…ん、ぅ。……一体、何?」
まだ眠い。
用事は早く済ましたいものだ。
「さーて、CV第3段『巡音ルカ』姉さん!我が家へ、ごあんなーいっ♪」
「は?」
「さぁ、行きますよぉっ!」
「ちょ…まっ、嫌ああぁぁぁっっ!!!」
無理やりに手を引っ張られ
寝起きの重い体を引きずる。
*
0と1の世界の中を音速で飛ぶ。
感触は分からない。
よく分からない感覚が体を駆け巡る。
うーん。
存在自体も不安定なのに、この加速は危険だと思う。
amazonに戻ったほうが安全なのではないだろうか。
それに、まだ眠いのに。
だけど、少女の楽しそうな笑顔をみていると、何だか断る気も失せてくる。
どうせ、此処まで来てしまったのだ。
帰り道も分からないのだから、この少女について行くしか選択肢はないようだ。
「さぁ、着くよ!」
*
一瞬辺りが真っ白になった。
モノクロの幻想。
音が聞こえない。
何も見えない。
ただあるのは白い空間。
ビックリして、瞬きをすると
元の感覚が戻ってきた。
見える景色もカラーになった。
だが
立っている場所は
可愛い、ふわふわとした感じの
小さな家だった。
目の前の赤いドアを
バタン!と少女は開ける。
「たっだいまー!」
家でもこのテンションなのかと
何かと家族の人がかわいそうに思えてくる。
「あ、おかえり。」
マフラーをした、全体が青で統一されている
優男が出てきた。
冬だというのに、ハーゲンダッツアイスクリームを黙々と食べている。
マフラー≒アイス
(寒いのか寒くないのかどっちかしてくれ。)
「ただいま、カイト兄さん。」
にこ、と少女は笑う。
…カイト?あぁ、『KAITO』か。
初音ミクの波のお陰で
ぐん、と売り上げが伸びたとか伸びなかったとか…。
「え…えーと。ミクちゃん。この人は?」
私のことを珍しそうに眺める。
「もう!兄さんったら。この人は『巡音ルカ』さん!ほら、CV3の……」
「あぁ、そうかそうか!ご、ごめんねぇ……。そういえば、マスターが言ってたよね。」
少女からは姉にあたり、優男の青年からは妹にあたる。
不思議な感じ。
「あ、えと。立ち話もなんですから、どうぞ。入ってください。」
えへ、と青年は笑う。
「…どうも。」
少し緊張。
*
部屋の中はまるで異空間だった。
見た目はとても小さな家だったのに、中はとても広かった。
(電脳世界……。よく出来た物だな。)
「「いらっしゃーい!」」
二人の少年・少女が出迎えてくれた。
私の妹・弟にあたる。
CV2の……
「鏡音リンでーす!」
「鏡音レンでーす!」
と、二人は手を差し伸べてきた。
「よ…よろしく。」
少し不安げに私は二人の手を取る。
…あったかい。
「「ねぇねぇ、一緒に3時のおやつ食べない?」」
時刻は3時。
一般的におやつの時間ということか。
(…あれ?あの青年はアイスを食べてはいなかったか?)
考えることをやめた。
「「兄さん!兄さん!メイコ姉さんも呼んで、おやつにしよう!」」
二人はぴょんぴょんととび周り、青年に頼む。
「…うん。そうだね。ルカちゃんも一緒に食べよう。」
ルカちゃん呼ばわりか。
「「じゃあメイコ姉さん呼んでくる!」」
と、二人は異空間の扉を開けた。
*
イスにすわる。
テーブルは私のせいで少し狭くなった。
(こういう時に異空間の性能は使わないのだろうか)
「「メイコ姉さん呼んできたよ!」」
と、二人が戻ってきた。
「う……まだ、二日酔い。うぇ……」
どこぞの親父かと思った。
赤で統一された見た目には
似合わず、酒瓶を持って現れた女性。
メイコ。『MEIKO』
KAITOが世に出回る少し前に出来た
…とか。
「あ…あぁ、始めまして。MEIKOです。よろしうぇっ……」
急いでトイレに駆け込む女性。
トイレの扉の向こうからはおろろろ…と声が聞こえる。
全員はそれを無視して、おやつを配り始めた。
「今日のおやつはケーキでーす。」
わぁ、と歓声が上がる。
「ミクは、ミクは!ネギケーキ!!」
そんなのあるのか。
「はい、どーぞ。」
青年は少女に渡す。
双子の少女と少年にもケーキを。
青年の自分の分はやはり、アイスケーキ。
(なんだろう、この人は……)
女性が座る場所にもケーキとぽつんと。
「えーと、ルカちゃんの好みってまだ分からないから、ノーマルなチョコレートベイクドチーズケーキでいいかな?」
「あ、はい。」
…ノーマルか?
トイレから女性が戻ってきた。
「ふぅ。やっぱり、飲みすぎ注意ってやつだねー。」
イスに座り、全員がそろったようだ。
「では。」
いただきまーす!
end
コメント3
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もっと見る朝、寒くて目を覚ました。
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咲宮繿
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時給310円
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**********
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それにしても、いい天気ですよね。
あれは……、今から六年前のこ...哀歌
ブッチ
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ご意見・ご感想
reno
ご意見・ご感想
ほんわか小説上手く書ける人が羨ましい。
これはブックマークしてたまに読みに来て勉強せねばなりません。
有難うございました
2009/10/03 11:35:59
時給310円
ご意見・ご感想
雰囲気を大切にして、丁寧に書かれたお話ですね。
無駄のない簡潔な文章が書けるのは羨ましいです。自分はいつも書き出すと無駄に長くなってしまうので……(苦笑)
ほのぼのできました。また何か書かれましたら、読ませて下さい。
2009/01/25 01:26:45
ひやた
ご意見・ご感想
初めまして、新着からきました。
ちょっと緊張気味のルカさん可愛いなーと思いました、
カイトやミク達に囲まれた温かいお話が素敵でした
自分はボカロ持ってませんが、本当にルカさん迎えたらこんな感じで喜ぶのかなと思いました。
あったかいお話ありがとうございました^^
2009/01/24 22:37:45