―――――初音ミク=ボーカロイドの代名詞、という認識。


それは、ヴォカロ町の世界でも変わらない。


ヴォカロ町の世界ではボーカロイド自体がかなり廃れた存在ではあるが、その存在を聞きかじったものが知るボーカロイドの名前は、大半が『初音ミク』だ。


『MEIKO』や『KAITO』が好きなものもいないわけではない。事実、かなりあ荘にはヴォカロ町のカイトの気配を敏感に察知する人とか、ヴォカロ町のメイコの無双時代を懐かしむ人がいてくれる。



だがそんな人はあくまで、ボーカロイドの世界にどっぷり浸かった人に多いのであって、ボーカロイドの『未来』を切り開き、ボーカロイドを知らなかった人に聞いたことのない『初めての音』を届けたのは、『初音ミク』の力であり、それゆえに彼女の名前はボーカロイドの代名詞として世界に知れ渡っているのだ。





そして―――――今なお彼女は『未来』を切り開き、『初めての音』を届けている。





例えばボカロにどっぷり浸かったボカロ廃にも――――――――――。





「Turndogさ~~~~~んっ!!!」

「げぼぁ!!」


突然時空転移用PCから飛び出てきたでっかいツインテールをなびかす少女に、俺はいきなりフライングクロスチョップを喰らった。……ミクだ。


「ミ~~~~~ク~~~~~!!」

「あれ? なんか問題あった?」

「大アリだっ!! もしも今の一撃で襖や畳ぶち抜かれてたらどうすんだっ!! 俺またしるるさんに弁償しなきゃならんじゃないか!! こないだだってロシアンのせいで天井ぶち抜いて弁償したのに、これ以上弁償したら俺の懐に木枯らしが吹くわっ!!」


大声で怒鳴りつけた途端、ミクの顔が一気に泣きそうな顔になる。


「ううううううううう……あたしだって、あたしだってTurndogさんと遊びたかっただけなのにいぃぃぃぃ……わああああああああああああああ……!!」


ヤヴァイ。これはいろんな人が吹っ飛んできてしまう。


「ご、ごめんな? ミクごめんな? 俺が悪かったよ、だ、だから泣き止んでくれ、な?」


まるで幼稚園児に対するようなあやし方をすると、ころりと泣き止んで笑うミク。


「ホント!? 私も今度から気を付けるよ!! こっちこそごめんね?」


俺から離れて、きゃぴきゃぴと笑いながら、部屋のあちこちを覗き込む。


ミクは自身の音波術『Append』のおかげで、若干多重人格の気がある。基本は明るく笑う子なのだが、急に泣き虫になったり急に不動明王の如く怒り出したり、喜怒哀楽が激しいとかそのレベルじゃない性格変動を起こす。

もちろんそれで過剰に困っているとかそういうわけじゃないが、これのおかげでミクの掌の上で踊らされるかの如くからかわれる。

もう少し落ち着けっての。


「あ! どっぐちゃんはっけ-ん!!」

「のわあ!!? ミク!?」


部屋の中をうろうろしているうちに、目ざとくどっぐちゃんを見つける。どっぐちゃんは未来が若干苦手なのだ。

ミクの言葉は相手の心に真っ直ぐ打ち込まれる弓矢のよう。何にも邪魔されず真っ直ぐ届く言葉は、素直になるのが苦手などっぐちゃんには強すぎるのだ。


―――――その割には、実に仲が好さそうなんだけど。


(まったく、元気な奴等だ……)


ぼんやりとそんなことを考えていると。


「Turndogさん!」

「ん? どーしたミク?」


「ちょっと、ヴォカロ町まで来てくれない?」


「……はいぃ?」


なんとまあ珍しい。


「今ね、メイコ姐とカイト兄さん出かけてて、ルカ姉は仕事で、リンとレンしか遊ぶ人いなくて……。要するに暇なの!!」

「いや、だからって俺と遊びたいと……?」

「どっぐちゃんも一緒にいこ?」

「はぁ!? なんであたしまで一緒にいかなky」

「こないだルカ姉が隣町から良質の鰹節買ってきてくれたんだけど食べたくない?」

「っっっ!!!! と……特別に行ってあげてもいいわよ……!!」


簡単に買収されやがったぜこの子。俺もいつもやってるけどさ。


「ねぇ、来てくれない?」

「……はぁ、しょうがねえなぁ。いいだろう、行くぜ!」

「よーし!! ほら、早くいこーよっ!!」


ミクが手招きして急かす。少し落ち着けよ、ホント。


「どっぐちゃん!!」

「はい……よっと!!」


どっぐちゃんの手が時空転移用PCに触れた途端。


俺たちの体は、光の粒子となって画面に取り込まれた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

dogとどっぐとヴォカロ町! Part3-1~ミクとTurndog~

続いてミクさん参上!
こんにちはTurndogです。

ボカロ=ミクさんってイメージはいろんな人に通じますよね。
あとボカロで最初に聴く可能性が高いのもミクさん。
今でこそルカさんなうな私ですが初めて聴いたボカロはミクさんに『旅立ちの日に』を歌わせたやつでした。
あのころは歌に飢えてたから、『機械音でも何でもいいや、とにかく歌が、音楽が聴きたい!!』とか考えてたらいつの間にか気にならなくなっておりましたwww

閲覧数:183

投稿日:2013/06/30 20:01:04

文字数:1,887文字

カテゴリ:小説

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  • しるる

    しるる

    その他

    ミクちゃんは最初に比べると幼くなったのかな?
    リンレンがこんな感じだったような……

    え?鰹節好きなの?わんちゃんなのに?

    デジ○ンワールドに旅立ったね

    2013/07/01 00:56:23

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      というよりそもそも最初のころのミクは『すべてのものに自分だけのミクが存在する』を体現させるために性格がかなりブレブレだった気がするwww
      リンレンは昔から近所のガキンチョ(おい

      うちの愛犬がモデルなんですがそれが鰹節大好きなんですw

      ああ、イメージ近いな……w

      2013/07/01 02:24:33

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